厚生労働省によると、新型コロナウイルス感染による全国の自宅療養者数は、9月8日午前0時時点で10万3328人に上っている。

こうしたなかで日本静脈学会が9月3日、自宅やホテルで療養中の新型コロナウイルス感染者向けに「エコノミークラス症候群」の予防法をwebサイトで公表した。

「エコノミークラス症候群」は、足の静脈に血栓(血のかたまり)ができて、その血栓が肺の血管に運ばれ、急に息ができなくなってしまう病気のことだ。

「肺血栓塞栓症」や「深部静脈血栓症」のことを、このように呼び、日本静脈学会は「いわゆるエコノミークラス症候群」と表記している。

主な原因は足(下肢)にできた血栓(血のかたまり)で、長時間足(下肢)を動かさずにいたり、脱水などで起こりやすくなる

そして、足(下肢)の静脈にできた血栓が血液の流れで運ばれ、肺の血管を詰まらせると「エコノミークラス症候群」が起こる。肺の血管が詰まると、呼吸困難や胸痛などの症状があらわれ、重症になることもあるのだ。

エコノミークラス症候群では胸痛などの症状があらわれる(画像はイメージ)
エコノミークラス症候群では胸痛などの症状があらわれる(画像はイメージ)
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日本静脈学会によると、新型コロナウイルスの感染者も、この「エコノミークラス症候群」にかかりやすいと言われている。

新型コロナウイルスの感染者は「エコノミークラス症候群」の危険が高まることが海外で報告されてきたこと、感染者で宿泊療養や自宅療養している人が増加していることなどを踏まえ、「頻度は少ないものの、感染症があり、狭い場所に閉じこもることになるので、災害時と同じようにエコノミークラス症候群が増加する可能性がある」としている。

また、脱水や下肢の静脈血流が滞る時に発症することがあり、生命に危険が及ぶこともあるため、「予防がとても重要」と呼びかけている。

予防法は「足の運動」と「こまめな水分補給」

その予防法として、日本静脈学会が示しているのが、「足(下肢)の運動」と「水分補給」だ。

・足(下肢)の運動 

体のきつさに応じてですが、できたら室内で歩行しましょう。ラジオ体操も有効です。

歩くのが難しい場合は、寝ているあるいは腰掛けている状態でも、足首を曲げ伸ばしして上下に動かす運動を1日に何度も (各20回ほど)行ってください。

ふくらはぎのマッサージも有効です。 

下肢の運動(提供:日本静脈学会)
下肢の運動(提供:日本静脈学会)

・水分補給 

カフェインを含まない、麦茶や水を飲みましょう。特に発熱が続くときは、こまめな水分摂取を心がけてください。

心疾患などで水分摂取量に制限のある方は、主治医の先生とご相談ください。

さらに、元々、エコノミークラス症候群の危険の高い人は、圧の弱い「弾性ストッキング」を使用すると、予防効果は高まると思われるとし、「すでにお持ちの方はご使用ください」と助言している。

コロナの療養者で発症する頻度は少ないとのことだが、そもそも、体がどのような状態になったら、エコノミークラス症候群だと考えられるのか? また予防していても、もし、「エコノミークラス症候群」になってしまったら、どのように対処すればよいのか?

日本静脈学会の孟真・副理事長に話を聞いた。

日本では明確な事例の報告はない

――エコノミークラス症候群、どんな人がなりやすい?

以下に該当する人などが、なりやすいとされています。

・寝たままや座ったままでいる
・脱水(発熱、飲水量の低下など)
・がんの治療中
・以前に静脈血栓になったことがある
・高齢者
・肥満
・妊娠


――日本で自宅療養者がエコノミークラス症候群になった、という事例は報告されている?


明確な報告はありません。


――予防法について「足の運動を1日に何度も(各20回ほど)行ってください」としている。1日に何度ぐらい行えばよい?

エビデンスは、はっきりありません。できるだけ努めていただくのが大切です。


――体がどのような状態になったら、エコノミークラス症候群だと考えられる?

片足が急に腫れたり、息が苦しくなったり、動悸がしたり、といった状態です。


――そのような状態になってしまったら、どのように対処すればよい?

保健所か、かかりつけ医の先生に相談しましょう。


なお日本静脈学会は「宿泊療養や自宅療養者が明確なエコノミークラス症候群が多く発症したとの報告はなく、過度に心配する必要はありません」としている。宿泊療養者・自宅療養者には予防法を徹底することをお勧めしたい。
 

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プライムオンライン編集部
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