新型コロナウイルスの感染者の急増に伴って、自宅療養者も増加している。中には体調が悪化しても医療体制の逼迫で受け入れ先が見つからない患者もいて、都市部を中心に入院が必要な患者を一時的に受け入れる「入院待機ステーション」を作り、常駐する医師らが対応する動きもある。

こうした中、埼玉県戸田市は独自の入院待機ステーションを17日から運用し始めた。

出典:戸田市
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戸田市は、埼玉県の南東部で東京都と隣接している、人口約14万人、面積約18㎢の都市。
今回立ち上げた入院待機ステーションは、市のほぼ中央に位置する消防本部の駐車場に作られた大小のテント2張りが使われている。
 

出典:戸田市

大きなテントの内部は段ボールのパーティションで仕切られ、ベッド2台と酸素投与設備や空調と患者監視モニターを設置。小さなテントには2基の専用トイレがあるという。

そして、この入院待機ステーションの特徴は、医師ではなく救急救命士などが対応し、経過観察や酸素吸入などの応急処置を行うという。
 

なぜ戸田市は、独自の入院待機ステーションを作ることにしたのか?また、2床だと少ないということはないのか?
戸田市消防本部の担当者に聞いた。
 

戸田市の場合は管轄する範囲が狭い

――なぜ戸田市独自の入院待機ステーションを用意した?

戸田市ではまだレアケースですが、新型コロナの入院先が見つからず、救急車でずっと待つ事案が8月に入って2件ほど発生しました。
そこで入院待機ステーションを発案するに至りました。

現状では、受け入れ先が決まるまで救急車内で何時間も酸素投与をして待っているんですが、酸素の量にも限界があります。
戸田市の場合は管轄する範囲が狭いこともあり、在宅で療養している人の家から5~6分程度で消防署に戻ってこられるんですね。それなら在宅の方の家のそばより、戻ってくれば予備の酸素もあるので多少長く時間を稼ぐことができると考えました。

そこで次に、戸田市で災害用に保有している資材や機材を、各部署にお願いをしてうまく寄せ集めました。
例えば避難所用のベッドや段ボール製の間仕切り、10年以上前にインフルエンザ対策で用意した陰圧テントなどで、酸素を投与する機械は消防・救急の予備品です。
これらを2つのベッドと共に準備して、救急車で戻ってくれば酸素の投与が継続できる形を作りました。
 

――規模が小さい入院待機ステーションのメリットは?

規模が小さいと、パッと動ける機動力があることです。
実際には、お盆休みの14日に救急車の中で4時間ぐらい待ち続け、酸素ボンベがギリギリになったという案件がありました。
そこから入院待機ステーションを考えて資機材を集め、17日の夕方に出来上がってすぐ運用を始めました。
 

本当なら「使うものではない」のです

――お医者さんはいない?診察・治療はしない?

医師はいません。
入院待機ステーションは今すぐ必要なので、「これからお医者さんと契約して…」みたいな余裕はなかったんです。
ですからここで行えるのは酸素投与など、今まで救急車内でやっていた行為だけです。
 

――ベッドが2床だと少ないのでは?

この入院待機ステーションは本来なら「使うものではない」のです。
苦し紛れの手法と言いますか、こういう状況でスペースがあったのでベッド2つ分用意しましたが、本当は使いたくありません。
 

――運用開始して実際に役立った?

おとといに立ち上がって、きのうの夕方にお1人使う事がありました。この方は1時間程度で病院が決まったので、すぐ搬送することができました。
 

――この入院待機ステーション設置は、他の自治体の参考になるのでは?

参考になるかは、地域性や距離感も関係があるでしょう。
入院待機ステーションがある戸田市消防本部は、市内のだいたい真ん中あたりなので、救急車で5~6分走れば、待機している人の元に駆けつけることができます。これが例えば、10km以上あったら移動時間が長くて効率が良くないなどと、今回のような発想は出なかったと思います。

管轄が小さいからよかった部分もあり、逆に広いとうまくいかない可能性もあります。
ですので戸田市と同じような環境の自治体なら、参考になる部分があるかもしれません。
 

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お話を伺った担当者は「使いたくない」というだけではなく、「作りたくなかった」とも話していた。
地域性や距離感もあるということだが、全国的に感染者が増加する中、こうした取り組みを参考にできる自治体があるかもしれない。