全国に広がる放置竹林 解決に一役買うのは「国産メンマ」?
近年、竹の需要の低下や地方の高齢化などに伴い、管理の行き届かない荒れた竹林が全国的に問題となっている。
そうした問題の解決に一役買うと期待されているのが、とある国産メンマだ。
千葉県中央部に位置する長柄町(ながらまち)。
道路に面した竹林に分け入っていくと、足元には多くの枯れた竹が散乱し、人が通るのもやっとなほど荒れている。かろうじて竹が竹を支えている状況で、生い茂った竹に覆われて辺りは薄暗い。
管理された竹林と比べると、明らかに竹が密集し、薄暗くなっているのがわかる。


日本では、竹林の管理放棄が全国で深刻化している。
日本では昔から、家屋や日用品など多くのものに竹が利用されてきたが、プラスチックなどに置き換わり竹の需要が減少。また、管理する人の高齢化なども要因と考えられる。
竹は成長のスピードが速く、増殖するため、竹林面積は年々増加しているが、管理が追いつかない竹林が増えると様々な弊害があるという。
竹林整備を行う一般社団法人「もりびと」千葉美賀子さん(72):
竹が生い茂って光が入らなくなると、森の中の小さい木なんかは育たなくなり、枯れてしまう。森が、竹に潰されていってしまう。


さらに、他の弊害もある。
大雨や台風の時には、倒れた竹が流れ出て水をさえぎり、氾濫や浸水などの二次災害を招いているというのだ。
“伐採と同時に食べる” 貴重な国産メンマの浸透なるか
そんな中、千葉さんは、170年以上続く地元の老舗「小川屋味噌店」(千葉県東金市)とタッグを組んでのメンマ作りに乗り出した。
竹林整備を進めるために、大きさが“タケノコ以上、竹未満”の「幼竹(ようちく)」を伐採すると同時に、食べて消費してしまおうという一石二鳥のアイディアだ。


通常のメンマとは違い、茹でずに繰り返し蒸すことで、柔らかさを出すことに成功。
さらに、味噌を製造する際に出る「たまり液」を使って甘めに仕上げ、「メンマと言えばラーメン」のイメージを払拭し、様々な料理に使えるよう工夫したという。
去年は販売開始2ヶ月たらずで完売。今年は竹の納品を3倍以上に増やしたというが、その一方で課題もある。
課題も・・・「まずは知ってもらうことが大切」
一般社団法人「もりびと」千葉美賀子さん(72):
幼竹の重さは大体5,6kgもある。
斜面だと、伐採してから下ろすのも2-3本が精一杯な上、使える部分は3分の1にもならない。
竹林整備には本当に費用がかかる。
国や地方自治体も補助金を出すなど竹林整備を支援しているが、まずは多くの人に竹の抱える問題を知ってもらうことが大切だと、千葉さんは話す。
一般社団法人「もりびと」千葉美賀子さん(72):
メンマを食べながら竹の話を皆さんで広げてほしい。
環境問題のはじめの取っかかりとしても、みんなで考えられるきっかけになるんじゃないか。

取材後記
「箸・はし」「篭・かご」「櫛・くし」など、竹冠のつく漢字を思い浮かべると、日本の生活にどれだけ多くの竹が用いられていたのか想像に難くないだろう。
今回取材した千葉さんも「日本人の暮らしの中にいっぱい入っていた竹が、どうして厄介者になってしまったのだろう」と語っていた。
近年、プラスチックの台頭によって竹需要は低下の一途をたどっているが、時代の移り変わりとともに用途を変えても、竹が持つ可能性に光を当て、貴重な資源として使っていく、こうした取り組みこそ、真の「持続可能性」と言えるのではないだろうか。
(取材:フジテレビ 安宅晃樹アナウンサー・経済部記者)