車いすで現代アートを描く岩手・雫石町の松嶺貴幸さんは、今、世界で急速に注目が高まっているデジタルアートの作品を発表した。
新型コロナウイルスによる閉塞感を芸術で突き破る、その挑戦を取材した。

飛び込んだアートの世界 「自由と怖さが表裏一体」

「芸術は爆発だ」という、日本を代表する芸術家が残した誰もが知る名言。

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無数の爆竹を使って描かれた作品は、キャンバスの上に幾重にも色鮮やかな絵の具が跳ね、重なり、混じり、1つの作品として輝く。

爆竹により生まれた躍動感

作者の松嶺貴幸さん(35)は、岩手・雫石町出身だ。
松嶺さんは、スキーの練習中の事故で脊髄を損傷し、車いすの現代アート作家として活動している。

松嶺貴幸さん:
アートの世界に飛び込むという意味は、自分の表現が良いと言われることもあるし、これは違うと言われることもあるけれど、自由と怖さが表裏一体な世界観が自分に合っていると思った

生と死を「爆竹」で表現…3000発使うことも

松嶺さんに作品の制作過程を見せてもらった。
作っているのは、「爆竹絵画」の新作だ。キャンバスに垂らした絵の具に爆竹を挟んで点火、破裂させる。

松嶺貴幸さん:
(爆竹を)置く向きがある。置く向きで、飛ぶ方向と飛び方が違う

今回見せてもらった作品の場合、200発ほどが使われる。大きいものでは3,000発もの爆竹を使い、1枚の作品が完成する。

松嶺貴幸さん:
どこからインスピレーションを得たかというと、星が爆発する。爆発して死んで、また生まれ変わる。その生と死の感じが好きで、何でできるかと思ったら爆竹ではないかと。そこから始まった

松嶺さんの作品は絵画だけではなく、立体作品など、その表現の幅は実にさまざまだ。

松嶺さんの作品

これまでに県内や東京での個展や、企業とのアートプロジェクトにも関わってきた。

困難を芸術で乗り越え…“新たな挑戦”

表現を追求する中で、先日また新たな挑戦がスタート。「NFT」と呼ばれる認証技術を使ったデジタルアートの発表を行った。

実物が存在しないデジタルデータは、誰でも簡単に複製することができる。
しかし近年、データそのものに証明を持たせられるようになり、資産としての価値が生まれた。
2021年3月には、あるアーティストの作品に75億円の値が付くなど、世界中で注目されている。

松嶺貴幸さん:
8秒の動画だけれど、NFTのテーマの中の第1号の作品です

松嶺さんが発表した作品は、オリジナルのキャラクターと有名な浮世絵を組み合わせた。

オリジナルのキャラクターと浮世絵を組み合わせた作品

松嶺貴幸さん:
コロナもあり、世の中がふさがっている感じがしているけれど、デジタル、オンラインを使って世界中に発信できる。世界中のアーティストにとって新しい試みなので、そこに参加するモチベーションはある

松嶺さんは、世界中で猛威を振るう新型コロナウイルスや、根が深い人種差別の問題といった社会課題に表現者として向き合ってきた。
そして今、世界へと続く新たな道を見据える。

松嶺貴幸さん:
岩手から発信して浸透させて、いろんな人がチャンスを得たり、僕自身も世界進出へのチャンスを得たり、そのきっかけになればよい

現代アート作家・松嶺貴幸さんは、困難を芸術で乗り越え、前に進む。

(岩手めんこいテレビ)