SDGsは"絶必"

マイボトルにティーバッグと水を入れるだけ…ワンアクションの飲み方を広めて日本茶を世界の文化にしたい。Live News αでは、世界市場の開拓に挑む日本茶のスタートアップ企業を取材した。

この記事の画像(13枚)

今回、世界を目指すきっかけとなったのは…

「一坪茶園」脇 奈津子代表:
エコな観点でSDGsということを考えています。SDGs絶必(=絶対必要)だと思います

舞台は日本有数のお茶所、静岡県掛川市。

この地で生産された茶葉を独自製法でブレンドし、水出しティーバッグとして販売しているスタートアップ「一坪茶園」。

掛川を舞台にお茶ツアーを開催するなど、日本茶文化を未来につなげるSDGsな取り組みを積極的に行っている。

マイボトルが日本茶と世界をつなぐ

「一坪茶園」は現在、定額制の給水サービスを行っている「Q-SUI」と販売促進を目的にコラボ。ペットボトルゴミの削減を目指し、マイボトル事業にも力を入れている。

そしてこのSDGsなマイボトルが日本茶と世界をつなぐ架け橋となった。

「一坪茶園」脇 奈津子代表:
スノーピークというキャンプメーカーとパートナーシップを組んで、米国進出を皮切りに日本でも共同展開をしていこうと思っています

アウトドアメーカー・スノーピークの目に留まり、アメリカのポートランドにあるレストランでの販売が決まった。

「一坪茶園」脇 奈津子代表:
海外の方にインタビューすると、マイボトルはほとんどの人が持っていると。コーヒーでも水でも何でも入れている。こういう中にお茶が入ればいいなと思いました。一坪茶園としてもマイボトルを展開していきたいです

味へのこだわりとSDGsの取り組みがもたらした世界市場開拓のチャンス。

今後については…

「一坪茶園」脇 奈津子代表:
衰退の一途をたどっている日本茶のクラフトマンシップ(職人気質)が、知らないうちに消え去ってしまうので。マイボトルを持っているのが当たり前の世の中になった時に、その時の生活の一部として水出しのティーバッグを週一回でも海外の方も含めて、召し上がって頂くことがカルチャーになっていけばいいなと思っています。

「固定観念から離れること」が鍵

Live News αでは一橋大学ビジネススクール准教授の鈴木智子さんに話を聞いた。

三田友梨佳キャスター:
鈴木さんは日本食のグローバル化について、マーケティングや消費者行動の視点から研究されているとの事ですが、今回の試みはいかがですか?

一橋大学ビジネススクール准教授・鈴木智子さん:
味は本物にこだわりつつもお茶の淹れ方については柔軟に対応している。このように「変えないところ」「変えるところ」つまり、守りと攻めのバランスをうまくとることが海外市場を攻略する鍵なんです。これに対して、日本茶や日本食の海外展開の多くが思うようにいかなかった要因の一つに、本物であることへの強すぎるこだわりがあります。私はこれを「本物感のトラップ(=落とし穴)」と呼んでいます。

三田友梨佳キャスター:
「本物感のトラップ」ですか?

一橋大学ビジネススクール准教授・鈴木智子さん:
例えば、日本酒のグローバル化で考えると、日本酒は新鮮、出来たてフレッシュ感を大切にしたいという思いが強いです。しかし、ここにこだわりすぎると、需要拡大や市場価値増大のボトルネックになるといわれています。今回の一坪茶園は、お茶の品質にはこだわっていますが 「急須で入れる」、あるいは「お湯が必要」などの従来の所作を切り捨て「マイボトル」「水」という現代のライフスタイルに合う形に変えています。「こうあるべき」という固定観念から自由になると海外マーケットで受け入れられる可能性が一気に広がります。

三田友梨佳キャスター:
自由な発想により日本文化のグローバル化に成功した例は何がありますか?

一橋大学ビジネススクール准教授・鈴木智子さん:
京都・西陣織の細尾は、西陣織=着物や帯という固定観念から離れ、テキスタイルと捉え直していることでディオールシャネルなどの洋服の素材として、あるいはザ・リッツ・カールトンアマンなどのホテルにインテリアファブリックとして採用されました。

三田友梨佳キャスター:
今回の試みもその成功に続けたらいいですね?

一橋大学ビジネススクール准教授・鈴木智子さん:
緑茶市場は国内に閉じこもるのではなく、海外に目を転じればまだまだ市場のポテンシャルが大きいです。新たな発想を取り入れることで日本茶が紅茶やコーヒーのようなポピュラーな飲み物になることに期待したいです。

三田友梨佳キャスター:
日本茶を世界に根付かせることができるのか、注目されます

(「Live News α」9月2日放送分)