中国政府の政策 最低2週間の隔離生活

日本人には「青島ビール」で有名な中国山東省の青島市。海に面している青島市はヨーロッパ風の景観と中国の景観が混じり合う都市で、中国でも有数の観光地だ。そんな観光地にあるホテルで、中国に入国した日本人や外国人が隔離生活を送っている。現在、海外から中国に入国する場合例外なく全員が政府の指定するホテルに滞在し、最低2週間の隔離生活を経た後でなければ目的地に向かうことができない。

隔離生活をしている中国・青島市のホテルから見える景色
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そこでは厳密な管理の下での生活と同時に、予想以上のきめ細かなサービスを受けることができる。まさに“飴と鞭”による隔離生活が存在しているのだ。前回、日本の成田空港を出発してから中国の青島新国際空港に到着してからの徹底した消毒作業をリポートしたが、今回は、その後のホテルについてからの隔離生活の実態を伝えたいと思う。

(関連記事:“市中感染者ゼロ”の中国 消毒、消毒、また消毒…有無を言わさぬ水際対策に見る国のリーダーシップと国民の「権利と義務」

隔離中のホテルの部屋
10センチ程度しか開かない窓

「今日は何曜日だっけ・・・」

8月18日から始まったホテルでの隔離生活。9月に入ってようやく2週間が経過し、残り1週間となった。「いよいよラスト1週間だ」と隔離明けに向けたカウントダウンを意識する一方で、部屋から一歩も出られず外部との接触がなくなる状態が長くなり、ふとした時に「今日は何曜日だっけ?」と考えてしまう事もあった。

ホテルでは毎日決まった時間に1日3回、お弁当が提供される。午前8時の朝食、正午の昼食、午後6時が夕食で、この時間になると部屋のドアがノックされ、開けると部屋の前にお弁当が置いてある。

食事の内容は色々なバリエーションがあり、例えばスペインのパエリア風のお弁当もあれば、イギリスのフィッシュ&チップ風のお弁当もある。全体的に肉料理が多いが、健康バランスにも配慮されていてサラダも付いてくる。ドレッシングも胡麻ダレや醤油風の2種類があり、できる限り日本人の味覚に合わせようとしてくれているのを感じる。

しかし、これを言うのはぜいたくと分かっているが、同じホテルで作るお弁当を食べ続けると、どうしても“飽き”が来てしまう。

そのような中で、“救世主”は2つあった。1つは有料になるが日本食の注文。そして、もう1つは3日に1回やってくる3時のおやつだった。

救世主1:我慢ができなくなった時の日本食

日本食のメニュー表
カレーライス
サンマのお弁当
巻き寿司

隔離生活が始まった当初は、ホテルが用意してくれるどのお弁当もおいしく食べられるのだが、さすがに1週間が過ぎると飽きがきてしまう。そんな時には別料金で有料になるが、日本食を注文することができる。メニュー表から選んでお願いすれば、すぐに部屋に届けられる。味付けも日本人の口に合うものとなっていて、この日本食には非常に助けられた。

救世主2:3日に1回の3時のおやつ

以前は毎日提供されていたという話だが、今は3日に1回になっている。提供されるおやつはスポンジケーキとアイス、そしてタピオカが入ったココナッツミルクになる。これも毎日同じお弁当を食べている中で、生気を取り戻すことができる非常に嬉しいものだ。同時にこのおやつが来ることで、「あぁ、もう3日が経ったんだ・・・」と気づかされる。

3日に1回配られる3時のおやつ

隔離生活3週間の中でひたすら繰り返される検査

隔離生活をする期間は目的地にもよるがホテルで最低2週間は必要になる。首都・北京が目的地の場合、現在の政策では3週間の隔離生活に加え6回のPCR検査と血液を採取する2回の抗体検査がある。しかも日によってはPCR検査を実施した翌日に再びPCR検査をやる日があり、さらにダブル検査と言って左右の鼻に綿棒を入れる。

鼻の奥まで綿棒を入れられるPCR検査
血液を採取する抗体検査 ホテルで隔離生活3週間のうち2回行われる

正直、心の中では「昨日やったのに今日もやる意味はあるのか・・・」と思っていたが、同時に「ここまで徹底して検査を繰り返し、陽性者のあぶり出しをやっているからこそコロナを封じ込められるのだ。」と身を持って感じた。

またトイレに関しても徹底した対策がとられていた。トイレで用を足すたびに消毒薬を一緒に流さなければいけないのだ。ボトルには大きめの白い錠剤が入っているのだが、ふたを開けた瞬間部屋全体に消毒特有のにおいが一気に広がる。一度ふたを開けると窓を開けて換気しなければ苦しくなってしまい、それだけ強い消毒なのだろうと実感するが、これも中国のコロナ対策なのだと納得した。

トイレ用の消毒

きめ細かなサービス 

一方で、隔離生活を行うホテルではきめ細かな対応がされている。まず宿泊者はスマホで中国のラインと言われるWeChatのグループメンバーに招待される。

このグループ内にはホテル側が用意した日本語のできる通訳がいて、この通訳を通して部屋で困ったことや必要な事のお願いをすると、すぐに返信が来て対応をしてくれる。

私は日本食の注文のほか、水やティッシュなど日用品の追加をお願いしたが、すぐに返信が来て部屋に届けられた。

通訳の担当者とのやりとり 必要なものを伝えるとすぐに対応してくれる

サプライズで誕生日のプレゼントも

また、隔離生活を送っていて驚いたことがある。通常の食事の時間ではない時に部屋のドアがノックされ開けると防護服を着た2人のスタッフから突然、大きな箱とバラの花束を渡された。事前に何も知らされず中国語も理解できなかったため、何が起きているのか分からなかったが、スタッフの1人が「ハッピーバースデー」と言った。

誕生日に届けられたホールケーキ
届けられたバラの花束

その瞬間、これがホテルからの誕生日プレゼントだという事を理解した。ホテルに宿泊する際の受付でパスポートを提出している事から、宿泊者の生年月日を把握しているのだろうが、実際ホテルに宿泊している隔離生活者が何百人もいる事を考えるとこのサプライズは非常に驚いた。

ホテルの受付では健康状態の記入のほかパスポートの提出も

多数の利益を守るために個人の利益を犠牲に

ホテルで隔離生活を送っていると、中国の1つ1つの対応に「感染の再拡大を徹底的に押さえ込む」という強い意志を否応なしに感じさせられる。

新型コロナという目に見えないウイルスとの戦いだからこそ、中国は感染対策の基本を徹底している。感染防御はそこにウイルスが存在する前提で「除去する」、「防御する」行動が必要になる。中国が行っている入国者に対する指定ホテルでの隔離生活や、繰り返し行う消毒作業、そして複数回のPCR検査など、そこには「さっき消毒したから大丈夫だろう」、「昨日検査をやったから大丈夫だろう」といった緩みは一切感じられない。

もちろん、隔離体制に不備が生じて感染が拡大するようなことになれば、中国側の関係者は厳しく責任を問われることになる。誰もがその怖さを知っているからこそ、緩みのない厳戒体制を取り続けられるのだろう。

個人の立場では、ホテルの部屋から一歩も出られない3週間の隔離生活は正直つらいが、そこまで徹底しているからこそ感染が広がりにくいのも事実だということだ。

多数の利益を守るために、個人の利益を犠牲にする中国。しかし、同時に可能な範囲できめ細かなサービスも提供する、そんな中国の現実に驚かされた。

【執筆:FNN北京支局 河村忠徳】