中国政府の政策 首都・北京市には直接入れず

成田空港から中国・青島新国際空港へ
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2021年8月18日、私は中国・北京に赴任するため成田空港から中国・青島新国際空港へと向かった。中国政府は現在も海外からの入国者を首都・北京に直接入れない政策を取っている。このため北京を目指す場合は、一度周辺都市の空港に到着し指定されたホテルで3週間の隔離生活を余儀なくされる。そして、ホテル内で数回のPCR検査を経て健康状態に問題ないと判断された人物が北京に入れる仕組みになっている。

成田空港からおよそ2時間半のフライトを終え、青島新国際空港に到着した。しかし、すぐに降りることはできず、客室乗務員から「座席で待っていて下さい」と指示を受ける。その後、「席ごとにまとまって10人ずつ降りてから順番に入国に必要な検査を受けます。」という説明があった。

飛行機を降りると防護服をまとったスタッフの姿が

到着から30分ほど経ち、客室乗務員から「飛行機を降りてください」という指示を受けボーディングブリッジを通り抜けると、ここから空港を出るまでに多くの検査や書類のチェックなどが行われた。到着した青島新国際空港は、8月12日に同じ山東省の青島市にあった別の空港から移転したばかりの新しく洗練された空港だ。しかし、広い空港内で印象に残っているのは、至る所で目にした防護服を着たスタッフの多さだった。

 
通路で消毒作業を行うスタッフ
壁には大きな絵画なども設置され、空港全体から洗練された印象を受けた

空港内にいる全てのスタッフは防護服を身にまとい、それぞれの作業を行っている。

入国審査は基本的には全て流れ作業のようになっており、中国語ができなくとも道なりに進んでいけば何とかなるシステムが構築されている。時折、どうしても意思の疎通ができず作業が止まってしまっても、日本語ができるスタッフがすぐに呼ばれ通訳をしてくれる。このため、空港内での健康チェックやPCR検査が滞ることはなかった。

体温センサーによって健康状態を確認するスタッフ
個室に通され口腔内と鼻腔内の同時に2カ所からPCR検査

空港内に設置された個室ブースでPCR検査

乗客は中国に出発前する直前にPCR検査と抗体検査を受けており、「陰性証明」を持っているが、例外なくこの空港で再びPCR検査を受けることになる。空港内で受けたPCR検査は、部屋番号が書かれた個室ブースの中で行われた。防護服を着たスタッフによって名前が確認されたあと、口と鼻からPCR検査を受けた。2日前に日本で検査を受け、出発前に中国側に陰性証明を提示していても再び検査を受けさせるところに、中国が厳戒体制で水際対策にあたっているのを感じた。

受け取った荷物は消毒液でぬれていた

PCR検査やいくつかの書類チェックなどを終えると、最後に入国審査のブースを通過し、成田空港で預けたスーツケースを受け取る。しかし、スーツケースの表面は湿っており、目印用に貼っていたシールは一部剥がれていた。これは消毒液を念入りにかけたことによるものであった。

空港から隔離生活を行うホテルへ

空港から隔離生活を送るホテルに向かうバス

空港を出る前、最後のブースでパスポートチェックをされ、日本人であることが確認されると日本人専用の隔離先のホテルに向かうバス乗り場に案内される。ここでも防護服を着たスタッフが待機しており、流れ作業で荷物をバスに積んでいった。

バスの車内は椅子などがビニールで包まれていた

バスの車内は椅子などが全てビニールに包まれ、こちらも感染対策を徹底している。空港から1時間ほどバスに乗りホテルに到着すると、ホテル側の担当者が車内に乗り込み乗客一人一人にゴム手袋、靴カバー、そしてマスクを渡す。マスクは自分たちがしているマスクの上から二重でするように指示が出された。そして、最後に手に消毒をされる。

バスを降りる前にビニールの手袋、靴カバー、マスクが配布され消毒をする

ホテルでも繰り返し行われる消毒

ホテル側のスタッフから、「宿泊の手続きを順番にする為、車内で待機するよう」指示されている間、窓から作業を見ていた。驚いたのは空港であれだけ消毒したスーツケースに再び念入りに消毒液を掛けていたことだ。バスから降ろした荷物を一カ所に集め、担当者が念入りに消毒液を掛けていた。ここまでの徹底した消毒作業は日本では経験したことのないものだった。

ホテルの入り口前 ここでも再び荷物に消毒

中国人にとっての「権利と義務」とは

仮に日本であれだけスーツケースに消毒液を掛け続けたら、コロナ対策と分かっていても批判の声が出るかもしれない。しかし、中国の徹底した対応は有無を言わせず、消毒をこれでもかと繰り返す様子からは「感染の再拡大を徹底的に押さえ込む」という強い意志を否応なしに感じさせられた。そして、この体制だからこそ中国が感染の拡大を最小限に封じ込めているというのを実感した。

実際に8月22日の中国国内における市中感染者は約1カ月ぶりに0人となった。海外からの入国者による輸入型の感染は続いているが、その後も国内での発生は一桁台に抑え込んでいる。現在、第5波と呼ばれ感染拡大が広がっている日本とは対照的だ。

新型コロナウイルスの感染拡大防止を前にして、それぞれの国のリーダーがどのような対応をとるのか、このような国家を揺るがす危機に関しては、政治指導者の資質と同時に、国民一人一人の意識改革も必要と考える。

個人の自由や権利を制限しても徹底的に感染を抑え込み、多くの国民がそれを支持している中国。国の感染対策にNOとは言えず、事実上国民の義務と化している。日本とは違う中国人にとっての「権利と義務」に対する捉え方や考え方を、中国に到着してから“繰り返し行われる消毒”によって図らずも感じることになった。

【執筆:FNN北京支局 河村忠徳】