電子書籍やネット通販の台頭により厳しい街の書店。全国に2万店以上あった書店は、この20年で1万店あまりに減少し、現在、1日で1軒の書店が消えている。

そんな時代の流れに抗い、個性的な本屋さんをオープンさせる人たちがいる。街の個性的な本屋さんが私たちの未来を作る。

紙の本ならではの楽しみ方を…まるでテーマパークのような古本店

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2021年4月に北名古屋市にできた、「リサイクル絵本のおみせ こども古本店」。

約1万冊の絵本の古本が、トラックの形の本棚や家の形の本棚などに並んでいる。お馴染みの絵本や懐かしい絵本、ロングセラーのシリーズものや、赤ちゃんから楽しめる絵本もある。

一般の古本店で子供向けの本が扱われていない事に疑問を感じていた39歳の男性が開いた、絵本専門の古本店だ。

店長の中島英昭さん(39)は、「ここは街を探検しているかのように絵本を楽しめる“絵本の街”」と話す。

女性客A:
テーマパークみたいで、大人の私でも楽しくなるので、子供からしたらすごく魅力的な場所だと思います

女性客B:
安くなっているので、だいぶ買いやすくて。ついつい買いすぎちゃうんですけど

「ほんとのおおきさ図鑑」は、動物や昆虫を実物大の写真で見せる図鑑で、デジタルでは表現できない紙ならではのダイナミック感溢れる絵本。

絵本「しあわせならてをたたこう」は、つまみを引くと動物たちが手をたたいたり踊ったりする。読み聞かせをしながら、親子で歌ったり踊ったりできる楽しい絵本だ。

こども古本店は、紙の本だからこそのダイナミックさや表現を大切にしている。

中島さん:
本って内容だけが思い出に残るわけじゃない。開いたときの音、空間、風の音、そういったものが一冊の本に思い出として残してくれるんですね

一般の古本店ではあまり扱われない絵本…絵本専門店を開店した理由

店長の中島さんは、三重県の古本店などで働いていた。一般の古本店では、子供向けの本をあまり扱わないことを知り、絵本専門の古本店を始めることにした。

買い取りなどで仕入れる本は年間10万冊。スタッフが1冊ずつ手入れする。仕上げに光を当てて全てのページを消毒する。

中島さん:
よく手紙が入っているんですよ。「読まなくなった絵本をお願いします」とか、絵本に対しての親子の思いだとか

<挟まれていた手紙の内容>
「息子と読んで来た愛しい絵本の幸せな行き先を探していて…」

絵本を子供たちにつなぎたい…。中島さんは軽トラックで全国を回り、絵本の読み聞かせをしてきた。

中島さん:
新しい発見があるのは、やっぱり本屋さん。目的の本にいく途中に、「あれ読んでみたいな、これ読んでみたいな」って出会えるのは本屋さんでしかないから

「知識の広がりを体験できる本屋さんをこれからも作っていきたい」と中島さんは未来を夢見ている。

生活の中の句読点になりたい…築50年の商店街の物件を改装して開いた書店

名古屋市の金山総合駅から歩いて10分の沢上商店街。2021年に、一軒の書店がオープンした。小さなお店はいつも賑わっている。

出版社と書店を繋ぐ取次の仕事をしていた時に、新刊の4割が売れ残り返品される現実に疑問をもった29歳の女性が、商店街に開いたユニークな本のセレクトショップだ。

店主の古賀詩穂子さん(29)は、クラウドファンディングで約400万円を集め、築50年の物件を改装した。生活の中の句読点になりたい…。お店の名前は、「TOUTEN BOOKSTORE」(トウテンブックストア)。

古賀詩穂子さん:
30年以上前、時計屋さんがあって、6年くらい前に大家さんが変わって…。天井もはがされた状態だったんですけど、雰囲気あるのでそのままにしたり…

食にまつわるエッセイ、大好きな猫の本、社会問題や、外国の児童文学…。

愛知県産の杉を使った特注の本棚には、古賀さんのセンスで選んだ本が並ぶ。

新刊の4割が返品される現実…取次時代の経験をきっかけに書店を開店

古賀さんは、以前は出版社と書店を繋ぐ取次の仕事をしていた。日本では1日あたり200冊の新刊が出ているが、4割ほどが売れ残り出版社に返品されるという現実を見てきた。

古賀さん:
無駄なものはなるべく入れなかったりとか、ロスを出さないような仕組み、サステナブルなお店の経営をしていくにはどういう方法がいいかっていうのは今も模索をしている

お客さんに教えてもらったという雑誌「IWAKAN」。生きていく中でのちょっとした違和感にフォーカスしている雑誌だ。名古屋ではこの店にしかないこだわりのセレクトだ。

古賀さん:
問題意識だったり、共感しあえる人とかもいらっしゃるので、売れるだろうなと思って

街の書店の在り方を模索…本屋に行きたくなるフリーペーパーを発行

本屋さんに行きたくなる本「読点マガジン」は、古賀さんが作ったフリーペーパーだ。

古賀さん:
いろんな本屋さんに取材をして、本屋の経営とか運営で大変なところとか、楽しいところを書店員に聞きまくるという内容です

古賀さんは、20年、30年続く書店を作りたいと、このフリーペーパーを作った。

店の中にはカフェも作った。ここは街の憩いの場だ。

古賀さん:
気分切り替えられたり、背筋伸びたり、頑張ろうって思ったりとか…。こういう場所って街に必要だよなと思っていて

古賀さんは「ふらっと来られる、生活の中の読点になりたい」と夢を語る。

(東海テレビ)

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