列島各地に猛威を振るう大雨。なぜ、梅雨も終わったこの時期に記録的な大雨が降り続けるのか?

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季節外れの大雨の要因は「大気の川」

気象学が専門の筑波大学・釜江氏は…

釜江陽一氏(筑波大学 生命環境系):
大気の川と呼ばれる水蒸気の流れが形成されることで、豪雨の要因になっていると言えます。

大気の川とは、大量の水蒸気が川のように帯状に流れ込む現象のこと。
釜江氏が人工衛星画像を解析した結果、今回停滞した前線で「大気の川」が発生。九州から東北南部までを覆っていることが分かったという。

釜江陽一氏(筑波大学 生命環境系):
日本の北側に、オホーツク海高気圧が平年よりも強い勢力で停滞しています。日本の南東海上には太平洋高気圧が例年に比べて、南に偏った位置に停滞しています。(2つの高気圧が)同じ所にとどまり続けたことによって、大量の水蒸気が日本列島に流れ込みました。

「線状降水帯」発生 佐賀で河川氾濫

その中で今回、各地で発生したのが線状降水帯だ。
積乱雲が生じたところへ水蒸気が流れ込み続けることで、線状に雨雲が発生。同じ場所に数時間、激しい雨をもたらす。

この線状降水帯などの影響で佐賀県を流れる六角川が氾濫。大きな被害に見舞われた。14日、「Mrサンデー」は六角川流域を取材。

ディレクター:
かなり増水しています。六角川が氾濫したという話で、こちら川の反対側、畑が広がるんですけど、湖のように冠水しています。

普段の六角川は、中央に細い穏やかな流れがあるのみだが、今回の大雨で光景が一変。どこが川かも分からないような状態に。

道路が川と化していた。

六角川流域、大町町では、大きく蛇行する川の周辺が広範囲に渡って濁流にのまれていた。国土地理院が、SNSに投稿された画像などから推定した浸水の範囲は約4平方キロメートル。これは東京ディズニーランドの約8個分に相当する広さだ。

町をのみこんだ濁流 「内水氾濫」で被害拡大も

14日午後から孤立状態が続いていたのが、周囲が水に浸かった順天堂病院。医療関係者や入院患者など約200人が取り残された。

午後6時半ごろ、自衛隊がボートで救助に向かうと、周囲の建物は1階の窓が半分隠れる高さまで浸水。消火栓の看板はほぼ隠れ、車も白い屋根がかろうじて見えるほど…。
そして病院に到着すると、開いた2階の窓に人の姿が見えた。病院によると、電源は自家発電に切り替え。病院の機能は保たれていて、全員2階以上に避難し、無事だという。

実は、この地域では、2年前にも大雨により六角川が氾濫し浸水被害にあっていた。
地元の記者によると、その経験から病院側は孤立状態になっても耐えられるように備えていたという。

しかし、なぜ六角川の流域は浸水被害が大きかったのか?
佐賀大学で水害などを研究する大串教授は…

大串浩一郎教授(佐賀大学 理工学部):
(川の)南の方は非常に(街が)開けているんですね。ですから、雨が降っても拡散して広がっていくんですが、北の方は、見てもらうとわかるように、すぐ山が迫ってるんですよ。内水氾濫というのが起きやすいんですね。

水路などの排水が雨量に追い付かず、地表にあふれ出す「内水氾濫」
六角川は大きな蛇行が続く上、北側に山があり、水の逃げ場が狭くなっている。そのため、川と山に囲まれたエリアに内水氾濫が起きやすいのだという。

天達解説①注意すべき「土砂災害の前兆」

雨がやんでも警戒が必要な土砂災害。気象予報士の天達氏は、4つの「前兆」に注意すべきだという。

天達武史氏(気象予報士):
場所によって色々な前兆現象が起こるので、とにかく異変を感じた時点で早めに逃げる、避難するというのが第一前提です。
4つにまとめてみたんですけど、例えば、小石がコロコロ落ちてくるとか、水が吹き出てくる、こういう場合は山に何らかの影響が出始めているときです。少しでもこんな状況を見たら、早めに安全な場所に行ってください。
それから、土石流の場合は、川の水が急激に濁ってくるという場合があるんです。こういうときは上流で何かが起こっています。
逆に雨が降っているのに水が減ってしまう。これはおかしいなと思うんですけど、上流の方で水がせき止められている可能性があるんです。それがダムのような状況になって、一気に崩壊する可能性があります。これも前兆だと思いますので、とにかく早めに安全な場所へ行ってください。

天達解説②「広く」て「長い」今回の大雨の特徴

天達武史氏(気象予報士):
今回の雨はとにかく範囲が広い、そして降る時間も長いというのが特徴です。
九州で雨が始まったのが、今月の11日あたりからでした。これが長野県、関東にもやってきて、今後さらに広がる可能性があるんです。この長さというのがポイントでして、これから1週間以上まだ続く可能性も少し出てきています。
さらに、この時期に雨が降るというのは九州でも異例のことなんです。通常ですと、九州ではこの時期異常な暑さが続いています。九州も7月の上旬から中旬にかけて梅雨明けをしたんですけども、まさに今2回目の梅雨がきてる、そんな状況だと思います。梅雨末期のこの大雨というのが、まだしばらく警戒が必要になってきそうです。

天達解説③木曜あたりまで雨に警戒

天達武史氏(気象予報士):
まだ雨が続きそうです。福岡と佐賀は少なくとも19日の木曜日あたりまでは、雨に警戒が必要です。そのあと見ていきますと、20日金曜日あたりから晴れマークが目立つようになって、最高気温が大雨の後、福岡では34度、佐賀も33度、熱帯夜になります。東京あたりでも、もう一度、真夏の暑さがやってくるということです。
あとちょっと心配なのが、明日までにひょっとすると台風12号が発生する可能性があります。もし台風が発生した場合、進路がまだ定まっていませんので、週末以降の天気にまた大きく影響を及ぼす可能性があります。そのあたりは、最新の情報をお気を付けください。

広い範囲に被害をもたらした大雨…しばらくは雨や地盤の状況に警戒が必要だ。

(「Mr.サンデー」8月15日放送分より)