コロナ禍で接触を避けるため、「置き配」サービスを始める業者が増える一方で、利用者が直接、受け取らなければならないのが「冷凍食品」だ。

国内の分譲マンションに冷凍用の宅配ボックスの設置例がない中、東急不動産とパナソニックは8月6日、ヤマト運輸の協力のもと、大阪・心斎橋東急ビルで、分譲マンションへの設置を見据えた「冷凍・冷蔵宅配ボックス」の実証実験を始めた。実証実験の期間は10月29日までで、東急不動産の社員、約140人が対象となる。

冷凍食品は現状、受け取る必要がある(画像はイメージ)
冷凍食品は現状、受け取る必要がある(画像はイメージ)
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今回の実証実験の背景にあるのは、コロナ禍における「EC消費の急増」と「冷凍食品の需要の高まり」だ。新型コロナウイルスの影響を受け、EC(電子商取引=インターネットを介して受発注や決済、契約などの商取引を行うこと)消費は近年、急増。

冷凍品・冷蔵品の宅配の需要も高まっており、配達員との接触を避けたいという利用者の声に応え、「置き配」サービスを始める業者も増えてきている。また、在宅勤務が増加したことに伴い、家での食事の頻度が増え、冷凍食品の需要も高まっているという。 

宅配ボックス・冷凍食品をとりまく現状(提供:東急不動産)
宅配ボックス・冷凍食品をとりまく現状(提供:東急不動産)

こうした背景を受け、実施されている今回の実証実験。冷凍用・冷蔵用のロッカーに配達員が入れ分けるとのことだが、結果を踏まえ、課題や傾向を分析し、分譲マンションでの導入に活かしていくのだという。

冷凍・冷蔵宅配ボックス(提供:東急不動産)
冷凍・冷蔵宅配ボックス(提供:東急不動産)

冷凍の宅配ボックスはとても便利そうだが、なぜこれまで国内の分譲マンションでの設置例がなかったのだろうか?  実用化に向けてどのような課題があるのか?

東急不動産の担当者に話を聞いた。

「冷凍の宅配ボックス」の設置例がない理由

――これまで「冷凍の宅配ボックス」が分譲マンションに設置されていなかったのはなぜ?

「冷凍の宅配ボックス」自体が、今年1月のパナソニックのリリースの通り、業界初だからです。

コロナ禍で、生鮮食品など冷凍品の宅配の需要が増えたことをきっかけに、もともと冷蔵庫やスーパーの冷凍品入れ(アイスボックスなど)を開発していた技術を活用して、冷凍の宅配ボックスの開発に至ったと伺っております。


――実証実験で「冷凍・冷蔵宅配ボックス」はどのように使う?

使い方は以下のようなイメージです。

(1)社員が商品をECサイトで注文
(2)ECサイト運営者が商品を発送
(3)ヤマト運輸が商品を冷凍冷蔵宅配ボックスに入れ、不在届を郵便受けに入れる
(4)社員が不在届に記載された番号を入力
(5)受取完了

冷凍・冷蔵宅配ボックス(提供:東急不動産)
冷凍・冷蔵宅配ボックス(提供:東急不動産)

――「冷凍・冷蔵宅配ボックス」で想定しているのは、主に冷凍食品の配達?

冷凍・冷蔵品どちらも利用できるので、冷凍食品や魚介類等生鮮食品、お弁当やお菓子など、様々な用途に使えると考えております。実証実験の開始時点では生鮮食品のみが対象です。

実証実験で検証する内容

――今回の実証実験ではどのようなことを検証する?

今回の実験の目的および検証内容は以下の通りです。

(1)冷凍・冷蔵宅配ボックスで保管する商品に品質上の問題が発生しないことの確認
保管された商品が一定の温度に保たれていることをクラウド管理で確認。臭気センサーを用いて、前の荷物の臭いが残っていないか、霜や水滴がつかないかなどを定期的に確認します。

(2)冷凍・冷蔵宅配ボックスの利用に伴う、運用上の課題の確認
ヤマト運輸の配達員に操作方法をレクチャー済みなのですが、実際に運用を行うことで、規定外の課題が出てこないか確認します。

(3)冷凍・冷蔵宅配ボックスの利用頻度の高い商品傾向の分析
実証実験の開始時点では、魚介類や肉、野菜などの生鮮食品が中心です。今後、お弁当やスイーツ、ご当地ものなどを増やしていきたいと考えております。具体的にどのような商品があると満足度を高めることができそうか調べます。

オフィスと家では需要も違うと思いますので、注文数を参考にするのではなく、社員に対してアンケートを実施する予定です。

実用化に向けた課題

――現時点で把握している課題は?

社員(将来的には分譲マンションの入居者)が、長期間、商品を受け取らなかった際の対応が課題であると考えています。

実証実験においては、オフィスに別途、通常利用している冷蔵庫がありますので、そちらに別の社員が移し替えます。分譲マンションにおいては、通常の宅配ボックス同様の対応として、管理会社から入居者へ荷物を引き取ってもらうよう一報をいれるなど、運用面での対応を考えております。


これまで、国内の分譲マンションに設置例がなかった「冷凍の宅配ボックス」。実用化にはまだ様々な課題があるが、置き配サービスが急増する現状を踏まえ、一日でも早く実用化されることを期待したい。

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プライムオンライン編集部
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