東京メトロ株売却へ 懸案の延伸構想も決着

首都東京の大動脈の一つ、そして都民の移動に欠かせない地下鉄・東京メトロに対して、先月、今後に影響する大きな見通しが示された。東京メトロは、2004年の設立当初から、いずれ完全民営化されることは決まっていて、株の売却も法律で明確化されていた。
メトロ株は、国が53.4%を、東京都が46.6%をそれぞれ保有。
今回、有識者からなる交通政策審議会が、東京メトロの株売却・上場への“道筋”について答申した。
答申では、長年懸案となっていた2つの点について、大きな方針が打ち出された。
一つは、国と都、それぞれが保有株式の半分を売却すること。双方が共同で手続きを進め、同時・同率で売却。上場に向けて前進すれば、完全民営化への促進にもつながる。
もう一つは、延伸構想。
有楽町線を豊洲から住吉まで延伸することと、都心部・品川地下鉄構想として、南北線を現在の白金高輪から品川まで延伸することについて、早急に事業化を図ることが盛り込まれた。加えて、都心部・臨海地域の地下鉄構想の新設として、銀座から臨海部への延伸や東京から秋葉原の常磐新線との一帯整備については、事業化に向けて関係者による検討を深めるべきとされている。

有楽町線の延伸構想(国交省資料より)
有楽町線の延伸構想(国交省資料より)
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延伸費用2300億円 国と東京都支援へ

これらの延伸で、路線ネットワークが拡充され利便性は大きく期待できる。一方で、豊洲から住吉への延伸にはおよそ1560億円、品川地下鉄構想にはおよそ800億円を要するとされている。この合わせて2300億円の事業費用をめぐっては、国と東京都の支援が約束されている。

東京メトロをめぐって小池知事と赤羽国交相がオンライン会談(7月15日)
東京メトロをめぐって小池知事と赤羽国交相がオンライン会談(7月15日)

2019年度、東京メトロの1年間の輸送人員は27億人。JR東日本のおよそ65億人に次いで2番目の規模。JRを除く大手私鉄16社の中では、最も輸送人員が多く、2番目の東急電鉄の2倍超にのぼる。
これから、コロナ禍に終息が見えた時、再び、インバウンド需要の高まりに期待を寄せる関係者も多い。地下鉄の整備には、最低10年かかるとも言われているが完全民営化の先には、利便性の向上がなければならない。首都東京の今後のポテンシャルに、地下鉄がどこまでに貢献できるのか。まずは、メトロ上場が順調に進むかどうかにかかっている。

フジテレビ社会部・国土交通省担当 滝澤教子

滝澤教子
滝澤教子

フジテレビ社会部 国土交通省担当 元厚生労働省担当