ブリの脂の乗りとヒラマサの食感を併せ持つ“ブリヒラ”

ブリとヒラマサを掛け合わせた“ブリヒラ”がブレイクの兆しを見せているという。

ブリヒラは、ブリのうまみとヒラマサの弾力のある食感、二つの魚の長所を併せ持つ。1970年に近畿大学が開発したもので、雌のブリと雄のヒラマサを交配したハイブリッド魚だ。

左からブリ、ブリヒラ、ヒラマサ(画像提供:近畿大学)
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ブリは冬場は脂が乗っておいしいが、夏場は身が緩んで脂の乗りが悪くなる。一方、ヒラマサは歯ごたえの良い食感で変色もしにくいが、成長するのが遅い。これを掛け合わせたブリヒラは、それぞれの長所が生かされ、ブリの脂とうまみの強さ、ヒラマサの歯ごたえの良さを併せ持つというのだ。

出荷量は2018年は1000尾ほどだったが、今年は8万尾ほどまで増え、群馬県を中心に展開するスーパーマーケット「ベイシア」の売り場にも並んでいる。ベイシアと近畿大学の関連会社が2017年に協定を締結したことで、ブリヒラの大量生産による安定供給が進んでいた。

ブリとヒラマサの“いいとこ取り”のハイブリッド魚、今ブレイクの兆しをみせているが、売り場に置いてもそこまで支持されなかった過去があるという。

どのような変化があったのか?そして気になる味や評判はどうなのか?
ブリヒラの販路拡大に取り組む近畿大学世界経済研究所の有路昌彦教授に詳しく話を聞いてみた。

右が有路昌彦教授(画像提供:近畿大学)

ブリは夏場に使いにくい、ヒラマサは成長が遅いという課題

――ブリヒラはなぜ開発されることになった?

ブリはブリ類の中で脂ものって最もおいしいのですが、肉質保持が難しく変色もはやく、夏場に使いにくいという事情があります。ヒラマサは肉質が強くて変色も遅く夏場に強いのですが、脂の乗りが悪く味もブリよりは成長が遅いという課題があります。

その中、人工種苗の育種の技術の中で「雑種強勢」というハイブリッドによって両親の良い形質が発露するということが農作物や畜産物では当たり前に行われてきましたので、養殖魚でもこの方法を取り入れてより形質の良い魚を創っていこうと研究が始まったということです。

ブリヒラ初期の飼育の様子(画像提供:近畿大学)

――ブリヒラが出回る量は、毎年どのくらい増えている?

2018年が1000尾ちょっと、2019年が15000尾、2020年が20000尾、そして今年が8万尾強、来年がその倍くらい、と増やしています。


――ブリとヒラマサはそれぞれどんな短所と長所がある?

ブリの長所:ブリ類で最も脂がのって旨味も強い。成長がブリ類で最も早い(2年目で出荷できる)。短所:血合いが大きく特に夏場は変色しやすい。肉質が柔らかく変質しやすい。

ヒラマサの長所:肉質が強く(コラーゲンが多い)、変質しにくい。血合いが小さく変色に非常に強い。短所:脂の乗りが少なく、うま味もブリほどではない。成長が遅く3年目以降にならないと出荷できない。(その分原価がかかる)

両親の長所がよく出たのが、母親ブリ、父親ヒラマサの組み合わせ

――ブリヒラはブリとヒラマサのそれぞれの長所を持ったもの?

ブリヒラは両方の長所を持って生まれていますので肉質が強く変色が遅く、脂の乗りがよく旨味が強く、夏に弱らない(冬もよい)という長所です。また成長もブリほど早くはないですが(10~15%劣ります)、ヒラマサの倍くらいの成長速度なので、2年で出荷できます。したがって製造原価もブリよりはかかりますがヒラマサほどはかからない、という魚です。

基本的には両親の長所がよく出たのは、母親ブリ、父親ヒラマサの組み合わせであるブリヒラが一番だったわけですが、父母を逆転させたヒラブリというのもあります。またカンパチとヒラマサのカンヒラ、ヒラカン、ブリとカンパチのブリカンみたいなのもこの50年の研究の中でいろいろやってみて、最終的に最も良い形質が出るのがブリヒラだったわけです。


――90年代に売り場に並んだこともあったそうだが?

こちらの方は最初の方は人気だったと聞いています。しかし当時は養殖魚そのものに抵抗感がある時代で(今では考えられませんが)、海外からのGMO(遺伝子組換え作物)トウモロコシの件がネガティブに話題になったときに、ブリヒラのような雑種強勢という普通の育種の方法をとったものとの違いが一部流通業界や生産者に理解されない状況が発生し、自主的に生産を終了したという経緯がありました。


――近年、ブリヒラが人気になった理由は?

当時の反省を糧に、今回はベイシア様と二人三脚でハイブリッドとは何か、そしてどれほど魚としてよいものなのか、安全性の根拠は、ということを丁寧にPOPなどで示してまいりました。その結果、今の時代に消費者の皆様も理解があって受け入れられていったという経緯があります。

店に並ぶブリヒラ(画像提供:近畿大学)

「握り寿司が最高!酢飯によく合います」

――ブリヒラはどんな味?

味はそのままブリなんですが、うま味の強さがありながらも強い弾力があるという不思議な感じです。ブリは強い弾力がある段階では旨味がほとんどないのですが(鮮度がよすぎて身がいかっていると、うま味のもとのイノシン酸は生成されておらず味がしません)、ブリヒラは逆に弾力がしっかりしているので旨味が出てくる段階でしっかりとした歯ごたえがあり、それゆえによりしっかり旨味を感じられるという特徴があります。


――どんな料理で食べるとおいしい?

握り寿司が最高です!刺身もとてもおいしいですが、酢飯によく合います。

ブリヒラの刺身(画像提供:近畿大学)

――飲食関係者からはどんな声を聞く?

今出荷が進みすぎて出荷調整をしています。関係者様からは寿司に最高、変色に強い、味が良い、安心できるもの、という評価を頂き多数の注文を頂いておりますが、なかなか成長が追い付いていません。ベイシア様での販売も本当に好調です。


――今後、売り場で見かける機会はさらに増える?

増えていく予定です。生産が間に合っておりませんが。回転寿司のような形態でも出していきたいと考えています。


なお価格は、サク(100g)が494円(税込)で、お造り(7切れ)と生寿司単品(5貫)が429円(同)となっている。ベイシアでは、8月7日から一時販売中止となるものの、8月末以降に2万尾を販売する予定とのことだ。

時代とともに消費者の考え方も変化し、ブレイクの兆しをみせているブリヒラはまだ一部のスーパーの販売のみではあるが、出荷量は年々増えている。今後、スーパーや寿司店で当たり前のように見かける日もそう遠くはないかもしれない。
 

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