「誹謗中傷ホットライン」開設1年で相談件数は2630件

たびたび問題となっているインターネット上での誹謗・中傷。

この誹謗中傷の相談を受け付けているのが、一般社団法人セーファーインターネット協会だ。協会では昨年の6月29日に「誹謗中傷ホットライン」を開設。

原則無料で相談ができ、協会が内容を確認した後、誹謗中傷情報が掲載されたSNSやサイト掲示板の運営者などに削除の措置依頼を行うというものだ。

編集部でも開設時に取材し、「投稿削除を要請する『基準』」などを紹介した。

(参考記事:ネットでの“誹謗中傷”に被害相談窓口を開設…投稿削除を要請する「基準」を聞いた

そして7月13日、協会が「誹謗中傷ホットライン」開設から1年間の活動報告を公開。ホットラインへの相談件数は2630件に上り、1436件の投稿が削除されたことがわかったという。

1年間の活動報告を詳しく見てみると、開設1年で寄せられた相談件数は2630件。相談者の数は1375人で、内訳は94%が本人からで、保護者が4.9%、学校関係者は1.1%だった。

連絡件数(資料提供:一般社団法人セーファーインターネット協会)
連絡件数(資料提供:一般社団法人セーファーインターネット協会)
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特定誹謗中傷情報に該当すると判定した情報は、2630件のうち26.4%の695 件。該当しない1934件の主な理由としては、ハンドルネーム等で「実在の個人が特定できない」が33.4%で最多だった。なお保留が1件ある。

該当性判断(資料提供:一般社団法人セーファーインターネット協会)
該当性判断(資料提供:一般社団法人セーファーインターネット協会)

誹謗中傷情報として該当した695 件について、削除等の対応を促す通知を実施したURL数としては1813URL で、削除件数は1436URL、削除率は79.2%だった。また、誹謗中傷情報が掲載されていたサイトは「匿名掲示板」やそのミラーサイトが多数を占めたという。

通知結果(資料提供:一般社団法人セーファーインターネット協会)
通知結果(資料提供:一般社団法人セーファーインターネット協会)

相談のうち、特定誹謗中傷情報に該当すると判定した情報は26.4%にとどまったが、この誹謗中傷情報として該当したURLの約8割を削除できたということは、ある程度の成果があったということだろう。

こうした結果が明らかになったわけだが、セーファーインターネット協会はどう捉えているのか? そして、さらに今後、誹謗中傷を減らすためにはどのような対策を取るべきか?

セーファーインターネット協会の担当者に詳しく話を聞いた。

削除できた投稿「自分の顔が分かる画像を投稿し容姿を侮辱」

――1年間の相談件数「2630件」をどう見ている?

1年を通じ、2630件と多くのご連絡を寄せていただき、改めてインターネット上の誹謗中傷問題が深刻であると痛感しています。誹謗中傷にお悩みの方は、まだ沢山いらっしゃると思いますので、今後も多くの方にご相談いただけるよう、認知度を向上させる取り組みにも注力していきたいと考えております。


――削除された投稿数「1436件」はどう?

削除された投稿数の補足説明をさせていただきます。誹謗中傷ホットラインのガイドラインの要件を満たし通知対象となった案件は695件ですが、案件1件につき複数の投稿があることから、プロバイダ等に通知を行った投稿が1813件でございました。

この内の1436件の投稿が削除されたため、削除率は79.2%となっています。法的拘束力のない通知であるにもかかわらず、高い削除率を達成できたと考えております。引き続き削除等の対応をしてもらえるよう、通知方法など工夫していきたいと考えております。


――具体的に削除された投稿にはどんなものがあった?

被害者個人の特定に繋がる恐れがあるので、詳細な内容のご紹介は差し控えさせていただきますが、事例といたしましては「匿名掲示板で過去の人間関係のトラブルを暴露され、侮辱的な言葉を書かれた」や「SNSで自分の顔が分かる画像を勝手に投稿され、容姿を侮辱された」などがありました。

※画像はイメージ
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多いのは人間関係のトラブルに起因するもの

――特にどんな投稿が多かった?

割合として多いものは、実生活やネット上での活動など、自分の属するコミュニティでの人間関係トラブルに起因して誹謗中傷されてしまったものです。


――この1年で見えてきた問題を教えて

一部のサイトでは、被害者ご本人や弁護士からの申告でないと受け付けられないような場合がみられました。また、海外のサイトの場合、英語での申請が必要なため、個人での削除要請のハードルが高い場合があります。


――これを改善するにはどんなことが必要?

そのようなサイトに誹謗中傷が掲載されていた場合は、ご本人がより対応されやすい形で削除要請を行えるよう書式を提供するなどサポートして行きたいと考えております。

また、英語での申請が必要な場合でも、誹謗中傷ホットラインのガイドラインの要件を満たし通知対象となったものは私共から英語で通知を行いますが、そうでないものについても、英語の書式を被害者の方に提供しており、今後も継続したいと考えております。

面と向かって、同じ言葉を投げかけられるのか?

――今回、削除できなかったものも中にはあった?

誹謗中傷ホットラインでは、ガイドライン記載の一定の要件を満たす投稿のみを通知の対象としているため、8割近くのサービスにおいて、削除対応をしていただけております。

削除されない理由については、サイト開設者への連絡が管理者に届いていないなどの原因が考えられます。サイト開設者が既に見なくなったアドレスをサイト上に記載していたり、そもそも頻繁に外部からの連絡を確認していないようなこともあると思います。


――誹謗中傷の投稿を減らすには、どんな対策が必要?

安易な気持ちで深く考えず投稿してしまう人もまだまだ多いと考えられますので、自分の投稿が、不特定多数のユーザーに見られること、そして時には他人を傷つけ違法行為となる可能性があることを、周知啓発することが重要と考えております。

面と向かって、その人に対して同じ言葉を投げかけられるのか、そうでないならネット上でも言うべきではないということ、ネット上でも現実社会と同じく思いやりをもって他人と接するべきであることをネットを利用する皆様にご認識いただく必要があると考えております。また、確信犯的に行われている事例に関しては捜査機関による摘発も必要でしょう。


――関係省庁との連携も進んでいる?

直近では、法務省様が公開されている、「インターネット上の誹謗中傷に関する相談窓口」の相談先のフローチャートに掲載していただきました。また、総務省「プラットフォームサービスに関する研究会」にて本活動のご報告をさせていただいたほか、関係省庁の方とご意見交換の機会をいただいております。


セーファーインターネット協会によると、安易な気持ちで投稿してしまう人がまだまだ多いと言う誹謗・中傷。私たちもSNSなどに投稿する際、「他人を傷つける行為にならないか?」をしっかり考えた上で投稿する必要がある。

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プライムオンライン編集部
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