「こんなに恐ろしいものか」西日本豪雨で被災
西日本豪雨災害から7月6日で3年を迎えた。
静岡・熱海市では、土石流で懸命の捜索活動が続けられているが、防災情報を確認して早めの行動が大切だ。
復興、その先の未来のために奮闘する被災者の姿を、広島で追った。
6月、広島・坂町小屋浦地区で始まったコミュニティハウスの建設。
この記事の画像(15枚)西日本豪雨で被災した三原市沼田西町から移設し、完成後には復興のシンボルとして新たな交流拠点になることが期待されている。
その建設現場で、カメラを手に住民の活動を撮影している1人の男性の姿があった。大迫雅俊さん(61)。
大迫さんは、坂町の未来のために奮闘している。
2018年7月、各地に大きな被害をもたらした西日本豪雨災害。
当時 上空からは、北の方から流れ込んできた土砂が街に流入し、集落全体をのみ込んでしまっている現状が確認できた。
住宅地の周りに大量の水。川の欄干には上流から流れてきた木が、詰まったような状況になっていた。
大迫さんも坂町で被災した1人だ。
大迫雅俊さん:
(避難の)3秒後くらいにゴーといって、大きな木、1メートルくらいのがどんどん10本くらい流れてきた。それも目の前で見ていて…
大迫さんが発災直後に撮影した写真。
自宅の前は倒壊した家屋で埋め尽くされ、すぐそばの山は大きく崩れていた。自宅には、その時流れてきた大きな岩も残っていた。
大迫雅俊さん:
こんなに恐ろしいものかというのは、本当に思った。本当にどうしていいか、分からないような気持ちになった
若い力に刺激され…大学院で第二の人生
2019年11月 坂町小屋浦地区で、住民が主体の避難訓練が初めて行われた。そこには、講師の話に真剣に耳を傾ける大迫さんの姿があった。
生まれ育った被災地の今後に、どう向き合っていくのか。胸に1つの決意を抱いていた。
大迫雅俊さん:
伝承にもつながってくると思うし、そういうのが文化として築けていければいいかなと感じて、勉強してみようと…
定年をきっかけに、次の春から兵庫県の大学院で第二の人生を歩む。
大迫雅俊さん:
まずは、行こうとしている大学院の学生が、今も仮設住宅で被災者に寄り添って活動している。それを見た時に、坂町の中でそういう動きがもう少しあってもいいんじゃないかと思いました。それを動かしていきたい。でも、どう動かしていいかわからない。そこを学びたい!
被災地を支える若い力に刺激され、生まれ育った坂町のために踏み出す新たな一歩だ。
大迫雅俊さん:
(いよいよですね?)
はい、始まります。久しぶりの勉強なので、大丈夫かなって思っていますけど…。コツコツコツコツ…、できるだけ少しずつやっていきたいなと思っている
2020年4月。登校日初日、緊張の面持ちで勉強道具を詰め込んだ。
大迫雅俊さん:
いってきます!
思いは1つ、復興へのノウハウを学ぶ決意だ。
“リアルな証言”をまとめ伝承誌に
6月 大迫さんは、自動車関連の会社に再雇用という形で働きながら大学院の授業を受ける、忙しい日々を送っていた。
あの日から、まもなく3年の月日が過ぎる被災地。
大迫雅俊さん:
例えば、この下の崖は整備されているし、当時「ここには絶対家は建てないぞ」と思っていた方々が、そこに戻ってきて建てたりとか、新しくアパートに建て替わったりして、災害があったことがなかったみたいな感じで復旧って進んでいる
大迫雅俊さん:
人の気持ちの中に、災害というものは、こういう景色を見ると忘れがちになってしまうのかなと思うし、私たちはそれをしっかりと伝えていかないといけないなと。3年たって、さらに思っています
新型コロナの影響で、集会所を使った被災者同士の交流などが十分にできない現実。
それでもめげず、三原市から小屋浦地区に運ばれた集会所の移設作業など、地域の活動に積極的に参加する。
そして今、被災地の未来を見据えた新たな試みを住民と協力して始めている。
大迫雅俊さん:
今、こちらの地区でアンケート調査をしていて、ここから読み取れるものをできるだけ忠実に伝承誌にまとめて、記憶を記録にまとめておく作業をしておこうということをやろうとしている
伝承するための記録誌づくり…
「総頭川があふれだし、サンスターホール1階方面、ものすごい勢いで流れていく」
「わが家前の町道、県道ものすごい濁流だ」
「気分めいってしまう」
「まさか、このような大惨事が起きるとは」
同じ災害を経験した住民からのリアルな証言をまとめる作業だ。
さらに、動画や大迫さん自らが撮影した住民のインタビュー。
大迫雅俊さん:
川のそばを通って避難しようとしているところ
2,000枚以上集まった地域住民からの写真を使い、冊子だけではなく、DVDも製作する。
大迫雅俊さん:
こういう形で残していって、年に1回、避難訓練とかするときに見ていただいて、この地区の方々には配布はするが、何かあったらすぐ逃げるという命を守る行動につながっていけばいいなと思っている
災害の教訓を未来にどうやって伝え続けていくか…被災地の奮闘は、きょうも続いている。
(テレビ新広島)