福岡市内唯一の遊園地、福岡市東区の「かしいかえん」。
2021年12月30日での閉園が決まり、営業終了まで残り半年と迫る中、「かしいかえんの辞典」とも呼ばれるスタッフの思いを聞いた。

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勤続25年 先輩から譲り受けた工具箱

スタッフの田中俊彦さん(47)は、「かしいかえん」で働き始めて28年。
園きっての勤続年数を誇る。

現在は事務で経理を担当しているが、これまでさまざまなかたちで園を支えてきた。

「かしいかえん」収入担当マネージャー・田中俊彦さん:
あそこで約36メートルあるので、そこまで歩いて登っていた

ジェットコースターのてっぺんまで
ジェットコースターのてっぺんまで

そう言いながら指差すのは、ジェットコースターの最上部。

「かしいかえん」収入担当マネージャー・田中俊彦さん:
最初の頃は怖くて足が震えてたんですけど、「仕事なので登らないかん」と(先輩から)お尻をたたかれて登っていた

担当は遊具の点検。
20年間、毎日のように朝から一番上まで登り、客が安心して乗れるように気を配っていた。

ジェットコースターの点検の様子 田中さんが小さく見える
ジェットコースターの点検の様子 田中さんが小さく見える

先輩から譲り受けた工具箱は田中さんの宝物。
今も大切に持っている。

中を見せてもらうと…

宝物は工具箱
宝物は工具箱

「かしいかえん」収入担当マネージャー・田中俊彦さん:
全部が相棒なんですけど…。こういうふうにさびとか出てきて、時々は手入れしているが、なかなかピカピカにならない。
僕が退職したときに(後輩に)あげようと思ってたんですけど、もう(園も)無くなっちゃうから

事務仕事だけでなく、園内も清掃し、券売機の修理もこなすベテランスタッフ。
園長も田中さんを頼りにしている。

「かしいかえん」橋本典明園長:
「かしいかえん」の辞典のような人。わからないことがあれば、特に過去のこととか聞くと何でも答えてくれる

利用客減少…大規模改修も“新型コロナ”に襲われ

1956年に開園し、福岡市唯一の遊園地として歴史を重ねてきた「かしいかえん」。

ピークの1980年代には、年間約57万人が訪れたが、レジャーの多様化や少子化で利用客は年々減少。
大規模な改修で集客に努めていたところを、“新型コロナ”に襲われた。

そして…

西鉄倉富純男・社長(当時):
平成に入ってほぼ赤字という状況であった。こういった状況の中では限界だなという判断をしたわけです

突然、発表された12月末での閉園。
一夜明けた園には、それを知った家族連れなどの行列ができた。

訪れた人:
きのうの報道を見て、小さい頃からずっと来ていたので、行ってこようと思って

訪れた人:
悲しい、小さいころから来てたから

閉園まで半年を切り、その後も感謝や別れを惜しむ手紙が続々と届いている。

「かしいかえん」収入担当マネージャー・田中俊彦さん:
(園を)なくしてほしくないという言葉が、一番ズキっときましたね。閉園の発表があってからは多くなっている

別れを惜しむ手紙
別れを惜しむ手紙

新しい思い出の1ページを作ろうと、平日も訪れる人が増えている「かしいかえん」。
65年の歴史の幕を下ろす日が、刻々と近づいている。

「かしいかえん」収入担当マネージャー・田中俊彦さん:
園内にいるときには、客に声をかける、朝は「おはようございます」。昼は「こんにちは」。帰るときは「さよなら。また来てね」と。極力声をかけるように心がけてます。12月30日までは、いつもと変わらない「かしいかえん」を提供して、最後まで客の心に残る場所にしたいです

(テレビ西日本)

テレビ西日本
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