南海トラフ地震に備えた「事前避難」…周知の遅れに課題

南海トラフ地震の事前避難について、「半割れ」と「臨時情報」という2つのキーワードがある。

南海トラフ地震が発生する場合、トラフ全体で地震が起きるケースだけでなく、トラフの半分だけで地震が起きる場合も想定されている。これが「半割れ」だ。

過去には幕末の1854年に東側で「安政東海地震」が起き、その32時間後に西側が震源の安政南海地震が発生したということもあった。

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仮に西側で先に地震が起きた場合に、残る東海地方も大きな揺れが起きる恐れがある。

こうした場合に、気象庁は南海トラフ地震の「臨時情報(巨大地震警戒)」を発表する。

「臨時情報(巨大地震警戒)」が出された場合、津波などの避難が間に合わない地域で、そのままでは命の危険がある地域の住民には1週間避難するよう求めるというガイドラインを、2年前に国が定めた。これが「事前避難」だ。

2021年7月5日、名古屋市が正式に発表したのは、市内で臨時情報が出された際、事前避難を求める地域で、市南部の5つの区の21学区、2万4千人余りが対象だ。

名古屋市の場合は、南海トラフ地震が起きてもすぐに津波に襲われることはないが、地震により堤防が沈み、発生から30分以内に30センチ以上浸水する恐れがある地域を事前避難の対象地域に指定した。

対象地域の人が事前避難を求められた場合、どうすればいいのかについて、市は対象区域の外にある知人や親戚の家などに避難するよう求めている。

頼れる人がいない場合、市は津波被害に遭わない内陸部のスポーツセンターや生涯学習センターなどを避難所として開設するとしている。ただし地震は発生していないので、水や食料などは自力で調達してほしいという。

事前避難の対象地域は、東海地方では浸水の被害の恐れがある愛知の14、三重の17、あわせて31市町村が「指定した」、或いは「する見通し」で、ホームページで公表したり住民に配布したハザードマップに盛り込むなどしている。

課題もある。すでに事前避難対象地域を指定している市町村でも、住民にほとんど周知が進んでいない。新型コロナウイルスの影響もあるとされている。

名古屋大学・福和教授:
今は「3密問題」もあり、直接住民に説明することを設けるのが極めて難しい。「臨時情報」について一気に普及させないと、万が一出た時に大混乱を生じさせかねない

(東海テレビ)

東海テレビ
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