自然と最先端が楽しめる

見て、触って、食べて体感するSDGs。
自然に親しみ、食を楽しむ今の時代ならではのテーマパークとは。

一面に広がる野菜畑。

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その片隅にあるのは虫のお家。

さらに、隣の建物の中で行われていたのは、

担当者:
上に向けていただくと天井がみえます。
そして下に向けると床がみえまして

最新のVR技術を使ったバーチャル工場見学。

自然と最先端が楽しめるちょっと変わったテーマパーク。

そこには、地域の課題を解決し、持続可能な社会を目指すある思いがあった。

八ヶ岳連峰をはじめとする雄大な山々に囲まれた長野・富士見町。

そこに2年前オープンしたのが、野菜のテーマパーク「カゴメ野菜生活ファーム富士見」。

もともと、ここにはカゴメの主力工場があったが、周辺は農家の高齢化や後継者不足などで遊休地問題が深刻化。

そんな中、地域と企業がタッグを組み、農業と工業、そして観光が一体となったこの施設が誕生した。

このテーマパークが目指すものの1つが「循環」。

野菜ジュースを作る工場から出されたCO2や不要になった温水は、パイプで隣の農業用ハウスへ。

これらを再利用することで、年間500トンものトマトの生産に役立てている。

ハウスや畑で楽しめる収穫体験。

また、施設内のレストランでは、収穫された野菜を存分に使ったメニューを提供し、地産地消による循環を実現している。

そして、観光の要となるファーム内には、訪れた人たちが野菜や自然に親しんでもらえるコンテンツが盛りだくさん。

ハウスの中にあるのは、真っ赤な実をたくさんつけた巨大なトマトの木。

実はこれ、たった1粒の種から育った1本の木で、およそ1万個のトマトが収穫できるという。

まさにテーマパーク丸ごとSDGs

そして、畑の周辺には、竹筒で作ったマンションや、

石づみの家など、農業に役立つ生き物を呼び込み、生物の多様性を理解するためのさまざまな仕掛けが。

さらに、工場見学はタブレットを使ってバーチャルでも体験できる。

担当者:
この映像、360度VRになっていまして、まるで自分が製造ラインの中に入ったような視線で現場をのぞくことができるんです

ほかにも、ファーム内ではカゴメ唯一の直営ショップを運営し、商品開発やマーケティングに活用するなど、まさにテーマパーク丸ごとSDGsを体現しているこの施設。

そこには地域に根差す企業としてのこんな思いが。

カゴメ野菜生活ファーム・河津佳子社長:
カゴメの掲げている“ありたい姿”が食を通じて社会課題の解決に取り組み、持続的に成長する。
健康増進ということに加えて、観光面でも、富士見町だけでなく近県の施設の皆さまとも、お互いにお客さまが行き来するような連携ができたらと思っています

図や言葉だけでなく体感を

内田嶺衣奈キャスター:
このニュースについて、コミュニティデザイナーでstudio-L代表の山崎亮さんに伺います。
大手企業のカゴメによるこうした取り組みですが、山崎さんはご覧になっていますか。

コミュニティデザイナー・山崎亮氏:
大きな企業がやるということで裾野が広がっていきますし、循環型社会というのを体感できる場になっているというのがとてもいいなと思いました。

SDGsとかサーキュラーエコノミーというのは、図とか言葉で説明されても今ひとつ理解しにくい概念なんですよね。
実際の空間で体感できると腑に落ちることっていうのがたくさんあるんじゃないかなと思いましたね。

内田嶺衣奈キャスター:
確かにその場にいて身体で感じると理解も深まりますし記憶にも残りやすいですよね。

コミュニティデザイナー・山崎亮氏:
循環型社会のテーマパークとして有名なのは、40年以上前にイギリスでオープンされた「CAT」という場所があるんですね。
ここには例えば再生可能エネルギーで動くような乗り物があったりとか、それから土と木材といった天然素材だけで作った建物があったりと、持続可能な社会を実現するためにさまざまな技術を体感できるようになっているんですね。
あとイギリス国内の多くの学校が修学旅行先としても選んでいたり、この場所を卒業したスタッフがエコロジカルな会社を設立したりしています。
「CAT」に関わってますよって企業が言うと、この評価が高まるぐらいの認知度になってきてます。

実は40周年。
僕も現場へ行かせていただいて、今着てるTシャツはその時に購入したものです。
日本にはまだちょっとこういうところがなかったので、今回のカゴメさんの取り組みが先鞭をつけることになると嬉しいなと思っています。

内田嶺衣奈キャスター:
こうした素敵な取り組みを根付かせたりより広めていくためには、どんなことが今後必要なのでしょうか。

コミュニティデザイナー・山崎亮氏:
大切なのは「正しさ」と「楽しさ」のバランス。
「正しさ」っていうのは、例えばその施設を訪れれば正しくてより深い知識が得られるという信頼のようなものを得ていくことは大事だと思います。

コミュニティデザイナー・山崎亮氏:
ただ一方であんまり専門的になりすぎて、行きたいと思われなくなるのでは意味がない。
体験したり食べたり面白おかしく説明してくれたりという、「楽しさ」をいかにバランスよく加えて間口を広げていけるか。
ここが重要だと思います。

内田嶺衣奈キャスター:
カゴメのテーマパークでは地元の小学生が学びの一環として訪れるなど地域とのつながりというのも大切にしているそうです。
未来を担う子供たちが小さい頃から楽しみながら食や環境について学び、その価値観を育てる。
こうした取り組みがもっともっと広がるといいですね。

(「Live News α」 7月2日放送分)