中国共産党創建100周年を前に統制強化

廃刊に追い込まれた香港の「リンゴ日報」の記者が、無念の思いを語った。

リンゴ日報 エンジェル・クワン記者:
『リンゴ日報』は、香港の表現の自由、言論の自由の象徴でした。(廃刊は)どうしようもなく絶望的で、言葉も出ない…

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香港で民主派を支持するリンゴ日報は、国家安全法違反の疑いで幹部らが逮捕されるなどして廃刊を余儀なくされ、6月24日に最後の新聞が販売された。

FNNの取材に対し、リンゴ日報のクワン記者は、廃刊は「香港社会やメディアにとって大きな損失だ」と語った。

これに関連して、中国外務省の報道官は、「香港は法治社会で報道の自由は免罪符にはならない」などと発言。

香港での言論の自由は急速に失われ、中国は7月1日の共産党創建100周年の記念日を前に統制をさらに強めている。

日本政府は他国と危機感の共有を

Live News αでは哲学者で津田塾大学教授の萱野稔人さんに話を聞いた。

内田嶺衣奈キャスター:
民主派支持の新聞がついに廃刊というこのニュース、萱野さんはどう受け止めていらっしゃいますか?

津田塾大学・萱野稔人教授:
これはもちろん、香港における表現の自由の問題ではあるんですが、それにとどまらず、中国の覇権の拡大という問題でもあるんです。つまり、自由と民主主義という価値に対立する価値観に基づいた中国の覇権、これが香港の社会の奥深くに達したということなんです。従って、今回のリンゴ日報の廃刊については、中国の覇権の拡大という脅威にさらされている周辺国にとっても人ごとではないんです

内田キャスター:
今回の廃刊は、国家安全維持法の施行からわずか1年という期間での出来事ですが、このあたりについてはいかがですか?

萱野稔人教授:
中国政府は、自ら核心的利益と位置づけるものに対しては、一切妥協しないんだということをあらわしていると思います。香港を中国本土と一体化させるというのは、まさに、その核心的利益の1つなんです。問題は、今回のように中国政府が核心的利益を求めて覇権を拡大させたときに、それを押し返すような手だてが他国にはなかなかないということです

萱野稔人教授:
核心的利益には、台湾尖閣諸島の問題も含まれているんです。尖閣周辺の領海侵犯を繰り返す中国に対して、日本はどう向き合うのか、そんな問題も突きつけられています。今回の廃刊に対して、わたしたちはもっと危機感を持つべきですし、日本政府は、その危機感を他国と共有するための努力をさらに続けていくべきだと思います

内田キャスター:
現地の報道によりますと、最後の発行となった新聞は、通常のおよそ10倍にあたる史上最高の100万部が発行されたということです。この部数に香港の方たちの心の声というのが現れている気がします。ただ見ているだけではなく、国際社会ができることを今、あらためて考えなければならないときだと思います

(「Live News α」6月24日放送分)