長引くコロナ禍で、あなたはお口の健康に不安を感じていないだろうか?
ライオン株式会社は9日、コロナ禍におけるオーラルケアの実態を調査したところ、将来の口内トラブルの発生リスクが高くなる懸念があるという調査内容を公表した。
(16歳~79歳の男女2,084人にインターネット調査 期間:3月11日~3月15日)
自宅以外での歯磨きに6割以上が感染リスクを感じている
まず、昼食後にオフィスや学校など自宅以外で歯みがきをする人の意識を調べたところ、6割以上が飛まつ感染のリスクを感じていることが分かった。
リスクを感じながらも「歯みがきしたい」人は全体の約45%で、「できるだけ歯みがきをしたくない」人の約21%より倍以上多い。
自宅以外でも昼食後に歯みがきを行う習慣がある人は、不安を抱えながらも、これまで通りの歯みがき習慣を守ろうしていることが読み取れる。
次に、間食と歯みがきの関係について調べたところ、コロナ禍で在宅勤務中心になった人の24%は「自宅での間食する頻度が増えた」と回答。
しかし「歯みがき頻度が増えた」と答えた人は10%、さらに「間食後の歯みがきを追加した」と答えた人はほとんどいなかった。
また歯科医への通院について調べると、「通院をやめた」人が「通院を増やした」人よりも多く、年齢別でみると65才以上の2割が通院をやめたと回答。
この傾向は、在宅勤務かそうでないかに関わらず同様で、ライオンは「歯科医に通っていた人がコロナ禍で通院を控えた可能性がある」としている。
これらの結果を受けてライオンは「間食後の歯みがきが行われていないことや、歯科医院への通院の中止など、口内環境を悪化させる可能性のある行動が増えていることから、将来の口内リスクが高まることが懸念されます。」とまとめている。
確かに感染予防で手洗い・うがいの頻度は増えたと思うが、一方で感染リスクを考えて自宅以外の歯磨きは躊躇するなどオーラルケアに対する意識は疎かになりがちだったかもしれない。
こういった口内リスクの上昇を予測していたのか?まずは、ライオンの担当者に調査した理由を聞いた。
口内環境の悪化の可能性は、ある程度予測はしていました
――なぜコロナ禍の歯磨きを調べたの?
調査の背景は以下の通りです。
・当社がコロナ禍の2020年に行った調査で、うがいや手洗いの頻度は大きく増えていたにもかかわらず、同じ衛生行動である歯みがきの頻度はそれほど増えていませんでした。
・一方で、オーラルケアに関しては、コロナ禍で下記の情報が発信されていました。
1,歯科専門家の情報発信:感染症と関連し、歯みがきの重要性を訴える情報
2,職場等での歯みがきを行う際、飛沫から感染する可能性についての情報
・当社では従前より、お口の衛生を守るために毎食後の歯みがきの重要性を訴えており、「昼歯みがき」を普及する活動も行っていました。
上記の2つの情報の中で、オーラルケアについての人々の意識や行動はどのように変化しているのか、あるいは変化していないのかを把握したいと考えました。
――コロナ禍で口内環境が悪化するリスクが高くなっていると予測していた?
口内環境が悪化している可能性があるのではないか、ということについては、下記の情報から、ある程度、予測はしていました。
1,歯科医院の通院頻度の減少については、日本歯科医師会の調査結果や歯科診療報酬のデータから把握。
2,ステイホームや在宅勤務により、自宅で過ごす時間が増えているので、間食が増えているであろうと推察。
ウィズコロナ時代の歯のみがき方とは
では、口内トラブルのリスクを減らすためにどうすればいいのか?
そんな疑問にズバリ答える「ウィズコロナ時代の歯のみがき方」という約5分ほどの動画を、日本歯科医師会が5月に公開している。
(動画はこちら https://www.jda.or.jp/tv/99.html)
動画ではまず、特殊なカメラで歯磨きのときにどのぐらい飛まつが飛ぶかを検証しており、普通の歯磨きの仕方ではたくさんの飛まつが飛んでいることが分かった。
口から飛び出る大きな白い粒は唾液の飛まつ、小さな粒はエアロゾルで、特に上前歯の裏側を磨くときは大量の飛まつが飛んでしまう。
そこで日本歯科医師会がすすめているのは、口を閉じたまま歯を磨くこと。
こうすると、ほとんど飛まつは飛ばず、電動歯ブラシでもほぼ同じ結果になるという。
また口を閉じて歯磨きしやすくするため、小さめの歯ブラシを選ぶことと、磨き忘れがないように歯を磨く順番を決めておくことが大切だと指摘。
口をゆすぐときは、下を向いた方が水が口全体にいきわたるので効果的で、少量の水を頬を膨らませて口に含み、勢いよく約30秒間のすすぎを1~2回行えば十分だという。
最後に、水を出すときは下を向いて静かに吐き出すと飛まつの飛散が少なくなる。
また、学校や職場など集団で歯を磨くときは、歯磨きの時間をずらすなどして人との距離を保ち、会話をしないことも大切だとしている。
その他、口を閉じて歯を磨くときの注意点はないのか?これからのコロナ禍で何に気を付けたらいいのか?
日本歯科医師会の担当者にも聞いてみた。
口を閉じれば歯磨きが乱暴な人でも上手に磨けるかも?
――動画を公開した狙いは?
新型コロナウイルス感染症が流行の第3波の頃、職場等での集団感染に関して、いくつかある可能性のひとつとして例示された歯磨き時の「飛沫」や「唾液がついた蛇口」が、あたかも感染原因であるかのような報道がありました。
こういったミスリードにより、食後の歯磨きなどを中止する学校や企業が増えたことから、食後歯磨きの重要性を啓発するべく制作することにしました。
また、歯磨きで口腔内の衛生状態を保つことは、むし歯や歯周病を予防するだけでなく、ウイルス感染症を予防することにつながるため、歯磨きはとても重要です。
――口を閉じても開けても、歯磨きの効果は同じ?
ていねいに歯磨きをする人は、普段から歯の凹凸に合わせて歯ブラシを歯に押し当てて細かく振動させて磨いています。
そのような磨き方をする人は、口を開けても口を閉じても、同じように歯垢(プラーク)を除去できます。
一方、口を開けて歯ブラシを大きく動かして乱暴に磨いている人は、口を閉じた場合には歯ブラシを大きく動かすことができません。
結果的に、歯ブラシを小さく動かすようになり、歯垢除去効果が高まると考えられます。(ただし、歯磨き指導が必要です)
汚れをきちんと取り除くために、ポイントを押さえて歯を磨くことが重要です。奥歯の外側は口を閉じた方が歯ブラシが届きやすいでしょう。
前歯の裏は、歯ブラシのかかと(※編集部注:俗にブラシの先端の端を「つま先」、柄側の端を「かかと」という)を利用して磨くこともできます。
また、口を閉じた状態で歯は磨くことは、口唇機能訓練(お口ぽかんの防止など)にもなります。
――口を閉じて磨くときの注意点は?
口を開いて磨いても毛先がどこにあたっているか分かりづらいです。特に奥歯は。
汚れをきちんと取り除くことが重要ですので、磨き残しが無いように磨く順番を決めておきましょう。
また、歯の大きさや形は、1本ずつ違うため、飛沫が飛び散らないように注意しながら、歯の凸凹に合わせて歯ブラシを細かく、小刻みに、1本ずつ磨くつもりで動かすことが大切です。毛先があたっている感覚がつかめるとよいです。
口の開け閉めにかかわらず歯垢は白いので、磨いた後に落ちているか確認することが重要です。
――コロナ禍で虫歯は増えている?
本会が昨年7月~8月に国民1万人を対象に行った調査で、定期健診を延期したり、治療を中断している人が多いことが分かりました。
むし歯や歯周病など、歯科で扱う疾患の大半は自然に治ることはありませんし、悪くなることはあってもよくなることはありません。
また、口の中に起きる“痛みを伴う急性疾患”は放置すれば重症化に繋がります。義歯(入れ歯など)がなくて噛むことができなくなれば生活の質は低下しますし、それが長期化すれば免疫力を含む全身の健康を損なう危険があります。
――長引くコロナ禍で、お口の健康のため何に気を付ければいい?
マスクを日常的に着けると、口呼吸になりやすくなり、口の中が乾燥して唾液が少なくなると、口の中の細菌が増えてむし歯や歯周病の原因につながります。
しっかり歯を磨いて、口を乾燥させないようにしましょう。
長期化する自粛生活で、口腔を通じて全身の健康に何らかの問題が出ている危険性もあるため、かかりつけの歯科医師にぜひ相談してください。
外出先で歯を磨くとき飛まつ感染を気にしている人は、このような「口を閉じた歯磨き」を是非実践していただきたい。
さらに、間食やマスクなど生活スタイルの変化に対応することも必要で、こまめな歯磨きでお口の健康にも気を付けてほしい。
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