ネット通販の定期購入トラブルが過去最多

今、”定期購入”によるトラブルが増えている。インターネット通販で商品を1回だけのつもりで申し込んだのに、定期購入を結ばされていたというケースが多いというのだ。

2021年版の消費者白書によると、全国の消費生活センター等に寄せられた消費生活相談の件数は、2020年は93.4万件で、前年の94.0万件とほぼ同じ水準となった。一方で、定期購入の相談の件数は、増加傾向が続いており、2020年は5万9172件と、これまでで最も多い件数となった。

商品別にみると、定期購入に関する相談のほとんどが「健康食品」と「化粧品」で占められていた。

「定期購入」に関する消費生活相談件数の推移(画像提供:消費者庁)
「定期購入」に関する消費生活相談件数の推移(画像提供:消費者庁)
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「2回目に4カ月分が届く高額な定期購入だった」など、消費者が定期購入であることを認識しないまま商品を注文しているケースがみられるという。

また、「定期購入の歯みがき粉が、未開封商品の返品可能と記載されていたのに、返品を断られた」「10日間返金保証付きのサプリメントを解約したいが、事業者の電話がつながらず、メールも返信がない」など、解約条件をめぐるトラブルや解約したくても事業者と連絡が取れないというトラブルも発生している。

自宅に居ながら、パソコンなどで簡単に注文ができる通販は、外出自粛の今、重宝している人は多いだろう。しかし、いつ自分がこのようなトラブルに巻き込まれるかもしれない。

こうした被害に遭わないために、どんな対策を取ればよいのか? 国民生活センターの担当者に話を聞いた。

お試し500円を見て購入後、さらに同じ商品が届いた

――具体的にどんなトラブルが起きている?

例えば、こんな事例があります。

「お試しだけのつもりで注文したが定期購入が条件だった」
動画投稿サイトで「ダイエット効果のあるサプリメント、お試し500円」という広告を見て注文した。最近、初回の商品と同じ商品が届き、商品代金約6500円の請求書が同梱されていた。驚いて事業者に問い合わせると、「5回の商品購入が条件の契約だ」と言われた。500円のお試しのみの購入で定期購入が条件とは思わず注文した。注文時の最終確認画面にも高額な金額の記載はなく、定期購入が条件とも記載されていなかった。こんなに高額になるなら注文しなかった。

他にも、「2回目に数カ月分の商品が一度に届いた」「いつでも解約可能の定期購入を解約しようとしたが、解約の申請期間外だと断られた」といった様々な事例があります。


――コロナ禍による外出自粛でネット通販需要が増えたことは影響している?

外出を自粛してインターネット通販に触れる機会が増えたことは関係しているかもしれません。
 

最終確認画面でも、契約内容が認識しづらいものが多い

――トラブルに遭う人に傾向はある?

女性の40代〜60代が多いです。2020年度の男女比でみると、男性は25%、女性は75%。女性の比率が高いですが、男性が安心というわけではありません。男性の場合は、筋肉増強剤や育毛剤の定期購入のトラブルのケースも見られます。


――定期購入トラブルの特徴は?

定期購入が条件であること等の契約内容が認識しづらいことです。事業者は販売サイトで、「ダイエットをサポート」「筋力がアップ」など商品の効果の他、「1回目90%OFF」「初回実質0円(送料のみ)」など通常価格より低価格で商品が購入できる点を強調して表示していますが、実際に低価格で購入するためには定期購入が条件となっています。

定期購入の条件には「4カ月以上の継続が条件」など期間・回数が定められている場合の他、定期購入が条件であるものの期間・回数が定められていない場合もあります。

相談事例をみると、販売サイトの広告で定期購入が条件であること等が強調表示の近くに表示されていないケースや表示されていても強調表示に比べて字が小さいケースの他、何度もスクロールしなければ全体が表示されないページ途中に契約内容が表示されているケースなどがあり、消費者が契約内容を認識しづらい販売サイトが多くみられます。

消費者が注文フォームに必要事項を入力すると、申込みの最終確認画面が表示されますが、相談事例をみると、初回分の商品価格のみが表示され、定期購入が条件であることや消費者が支払うことになる総額が最終確認画面に表示されていないケース、表示はされていても目立たないケースなどがみられ、最終確認画面においても消費者が契約内容を認識しづらい場合が多くみられます。

画面例(画像提供:国民生活センター)
画面例(画像提供:国民生活センター)

他にも、「契約内容の表示が不十分なSNS上の広告や動画広告をきっかけに注文に至っている」「解約条件が認識しづらい」といった特徴が見られます。

定期購入が条件になっていないか?など契約内容の確認を!

――では、私たちはどう対策すべき?

「定期購入が条件となっていないか」「支払うこととなる総額はいくらか」など契約内容をしっかり確認しましょう。商品を注文する際には、事業者の販売サイトや申込みの最終確認画面で、商品の価格や効果ばかりではなく、定期購入が条件となっていないか、定期購入が条件となっている場合、継続期間・回数が定められているか、支払うこととなる総額はいくらか等の契約内容をしっかり確認しましょう。

相談事例をみると、スマートフォンから商品を注文しているケースも多くみられます。スマートフォンはパソコン等に比べて画面が小さいため、販売サイトや申込み最終確認画面の表示内容を確認する際は、より注意が必要です。あわせて、販売サイトや申込みの最終確認画面を印刷したりスクリーンショットを撮る等、契約内容を記録しておきましょう。

「解約・返品できるかどうか」「解約・返品できる場合の条件」など解約条件をしっかり確認しましょう。インターネット通販をはじめ通信販売では、クーリング・オフ制度はなく、広告に表示された「解約・返品できるかどうか」「解約・返品できる場合の条件」等の返品特約に従うことになります。(表示がない場合は、商品が届いてから8日間以内であれば、消費者の送料負担で返品が可能です)。

相談事例をみると、事業者がいつでも解約が可能としている場合でも「次回商品発送の○日前までの申し出が必要」と解約申請期間が限られているケース等のように、解約にあたって条件が定められていることが多く、注意が必要です。

不安に思った場合やトラブルになった場合は消費生活センター等に相談しましょう。事業者からの請求に納得できない、事業者と連絡がとれず解約ができない等、トラブルが生じた場合には、最寄りの消費生活センター等に相談しましょう。消費者ホットラインは「188(いやや!)」番です。


――解約したくても購入先に電話がつながらない。こういった時はどうすればよい?

事業者に連絡した記録を残しましょう。消費者が事業者に電話をしてもつながらず、問い合わせや解約の申し出ができないケースが多くみられます。事業者によっては、電話がつながりやすい曜日や時間帯をホームページ上で案内している場合もあるので、確認しましょう。また、事業者に連絡した証拠として、電話、メール、FAX等の記録を残しておきましょう。


――こうしたトラブルは、なぜ減らない?

定期購入の販売で、いろんな新しい手口が出てきています。また、トラブル防止の有効な対策がないのが現状です。しかし、消費者アフィリエイト広告の検討会が6月10日から始まっています。また、悪質な定期購入商法の規制や契約書面の電子化などを盛り込んだ改正特定商取引法が可決、成立しました。施行されれば一定の条件下で、定期購入の取り消しができることになります。こういったところに、期待したいです。

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スマホアプリやネットを閲覧すると、しばしば見かける「1回目90%OFF」「初回実質0円」といった広告。どうしても欲しい商品であっても、「定期購入が条件となっていないか?」など契約内容をしっかり確認して購入するよう心掛けたい。また、もしもトラブルに遭った場合には、最寄りの消費生活センター等に相談してほしい。
 

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プライムオンライン編集部
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