2年ぶりの国会での党首討論 コロナと五輪が最大の議題に

6月9日午後4時から、国会の国家基本政策委員会における党首討論が2年ぶりに開催される。この討論では菅首相と、立憲民主党の枝野代表・日本維新の会の片山共同代表・国民民主党の玉木代表・共産党の志位委員長の野党4党首が計約45分間にわたり議論を交わし、新型コロナウイルス対策に加え、東京オリンピック・パラリンピック開催の是非が最大の論点になるとみられる。特に菅首相と枝野代表にとっては、10月までに行われる衆院総選挙に向けた天王山になる可能性があり、国民からの支持を得る機会にもなりうる一方、離反を招く落とし穴になる恐れも秘めている。

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「歴史的意味を終えた」絶望の討論から3年

この党首討論、なぜ今回まで2年間開催されて来なかったのか。そのきっかけの1つが、2018年5月30日に行われある種の絶望感の広がった党首討論だ。この党首討論自体も約1年半ぶりの開催で、当時の安倍首相と、今回と同じ野党4党首が討論を行った。

しかし野党第1党の枝野代表の持ち時間が19分あった中、安倍首相との質疑はわずか3往復しか展開されず、枝野氏の質問が6分34秒だったのに対し、安倍首相は倍近い11分46秒を答弁に費やし、議論が深まらないまま終わった。枝野氏の質問のテーマが、当時大きな問題となっていた森友・加計問題だったため、安倍首相が背景からの説明を「丁寧に」、野党から見れば「質問に直接答えない説明を延々と」繰り返したことによるものだった。

質問後、枝野氏は「意味のないことをだらだら話す総理を相手に今の党首討論の制度はほとんど歴史的意味を終えたことがはっきりした。こんな卑怯な総理でいいのか」と党首討論の意義さえ否定する言葉を発した。

対する自民党内からは、「森友、加計なんて予算委員会でさんざんやっている話をしてどうするのか。全然意味なかった」「質問が同じだから同じ答えを行うのは当然のことだ」などと、党首討論の意味がなく、問題は枝野代表の質問にあるとの指摘が相次いだ。

この酷評された討論の呪縛のもとで、その後党首討論は1回しか開催されず、党首同士の議論は予算委員会の集中審議の場に移った。予算委員会の方が枝野氏1人で1時間質問できるなど、長い時間を確保できるため、野党側が党首討論よりも予算委員会を優先した形だ。

党首討論と予算委の違いは「一騎打ち」と反論権

とはいえ、「腐っても党首討論」という面もある。予算委員会との大きな違いは2つだ。予算委員会では、質問者が首相に答弁を求めても、委員長が許せば他の閣僚が代わりに答弁することが認められる。しかし党首討論は首相しか政府与党側の発言者はおらず、首相に逃げ場はないのだ。野党の党首にとっては、時間は限られているが、首相とどう議論を交わし、追い詰めるなり失言を引き出すかなどが見せ場となる。

一方、首相側にも武器がある。それが反論権だ。予算委員会などの質疑では基本的には政府側は一方的に答弁する立場で、逆質問などは原則として行われない。しかし党首討論は文字通り討論なので、菅首相から野党党首への逆質問も可能だ。先手は野党の党首だから、その質問に答えつつ、逆質問で攻勢をかけ主導権を握ることも戦略としてはありうる。ただし、逆に野党に政策をアピールする機会を与えることになるほか、十分答弁しないまま逆質問すれば質問から逃げたととられる恐れもある諸刃の剣だが。

枝野氏の訴えは、五輪開催懸念とゼロコロナ戦略、支え合いの日本か

では、今回の党首討論で枝野代表は、菅首相に対してどんな攻め方をするだろうか。まずは、コロナ禍での東京五輪の開催について、国民から見て納得のいく説明を強く求めると見られる。五輪開催による感染の拡大に不安を覚える世論を背に、感染拡大のリスクをどう評価しているのか迫り、開催によって感染が拡大した際の菅首相の責任の取り方まで踏み込む可能性もあるかもしれない。

枝野代表は一方で、どの程度まで中止論に踏み込むかは難しい判断が迫られる。現在は中止論が根強い世論だが、いざ開催して各国選手のスポーツを通じた頑張りが、コロナという人類共通の敵に立ち向かう日本を含めた世界各国に勇気と感動を与え、かつ感染拡大を最小限に抑えれば、「五輪を開催して良かった、反対論に根拠はなかった」などと世論が一変する可能性もある。その時には自らが厳しい立場に追い込まれるリスクも背負っている。

また、枝野代表は討論を通じて、立憲民主党が掲げる、強力な対策によって感染を一度徹底的に抑える「ゼロコロナ戦略」や、自身の近著で掲げた「国民に自助を強いない、支え合う日本」をアピールしたいと見られるが、菅首相との限られた討論時間の中で、どのように織り込むかは難しい判断となりそうだ。

その上で枝野代表は、この党首討論の内容によって、16日の国会会期末に向けて菅内閣不信任決議案を提出するかどうか判断する姿勢だ。討論の中で菅首相に対し、このコロナ禍を考慮して会期末で国会を閉会せず会期を延長すべきだと迫る可能性もあり、それに対する菅首相の答弁と合わせ、国会最終盤の与野党攻防も左右することになりそうだ。

菅首相は五輪意義をアピールする場に 枝野代表への逆質問出るか

一方、菅首相にとって、コロナ禍で東京オリンピック・パラリンピックを開催する理由・大義について質問を受けるのは、逆に言えばその理由を国民にアピールするまたとない機会となる。口下手と言われる菅首相だが、ここで開催の意義と、前提となる感染対策について熱弁し、国民からの納得を勝ちとれば、開催への逆風を追い風に変えることも可能だ。ただ、国民の不安感を受け止めぬままに五輪開催だけを強調すれば、国民の一層の不安を招くリスクもあり、枝野氏からの質問に答えつつ、どのように大会開催にかける思いを語るかが問われそうだ。

また、党首討論での武器である反論権を駆使するなら、大会を中止する場合には各国選手や国際社会からの期待を裏切ることになるという負の側面や、経済的損失について、枝野代表の見解を問うことも可能だ。さらに枝野代表の訴えるゼロコロナ戦略の具体策・実効性や副作用を逆質問するのも一手かもしれない。

「党首討論は必要だ」と言わせる議論に期待

国会内での両者の直接対決は少なくとも秋の総選挙までの間では最後とみられるし、選挙の結果を受けていずれかが党首を降りるようなことがあれば、今回が未来永劫、最後の直接対決になる可能性もある。また、維新の片山共同代表、国民民主党の玉木代表、共産党の志位委員長にとっても、時間は極めて短いが、党の姿勢をアピールする格好の場となる。

各党首には、短い時間ではあるが政治の本質が凝縮された骨太の議論を期待すると共に、討論後に「やはり党首討論は日本の政治には必要だ」と言わせて欲しいと願う。

(フジテレビ政治部 高田圭太)