新型コロナウイルスに感染し、死亡した患者の遺族が、カメラの前で辛い胸の内を明かした。
ホテル療養を終えた2日後に死亡した男性。
遺族は、納得のいかない対応があったと話している。

テレビ新広島が入手した1枚の「死亡診断書」。
死亡原因の欄には「COVID19」。新型コロナウイルス感染症で死亡したと記されている。

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5月下旬、ホテル療養を終えた半日後に救急搬送され、その翌日に息を引き取った広島市の77歳の男性。
しかし遺族は、この”死の裏側”に”納得のいかない対応”があったとカメラの前で明かした。

「迎えに来て」…震えているのに退所

亡くなった77歳男性の遺族:
保健所の方に「誰かと間違えているんじゃないですか?」という確認は一応したんですけど、「間違えてない」ということだったんです。まさかホテル療養で出てくるとも思わないし、重症だと思って(基礎)疾患もあるし、入院療養になると思ったが、結局は出されてこういう結果になった。だからある程度の説明、納得できれば一番いいが

遺族によると、5月11日 発熱した男性はかかりつけ医を受診。その時は風邪の症状と診断されたが、後日再び訪れた病院でPCR検査を受診すると「陽性」と判定された。
そして一日自宅で待機したのち、保健所の指示を受けて広島市内のホテルでの療養生活が始まった。

亡くなった77歳男性の遺族:
2日が過ぎ、保健所のほうから電話が来た。退所できるから迎えにきてくれという電話が来た

ホテルに入って「2日」で退所することが決定。

亡くなった77歳男性の遺族:
基礎疾患があって危ないのに、なんで入院をさせずに、2日でホテル療養が終わるのかという疑問が出てくるじゃないですか

そこで、男性の息子が保健所に対して、もう一回ホテルなどに確認をしたうえで改めて説明の連絡をするよう求めたというが、保健所は男性の孫にこのような連絡をしてきたという。

亡くなった77歳男性の遺族:
保健所の方が私に言うには、「(最初に連絡した男性の子どもが)用事があって迎えに来れないので、すぐに迎えに来てくれ」と言われたんですけど、そこでもう話があってないじゃないですか。おかしいと思って自分もまた保健所に電話して、ホテル先の人にも電話をしたが、コロナの期間が終わっとるの一点張り、それと(77歳男性が)「元気よくホテルの中を歩き回っている」と言われた

そのため、”もう大丈夫”との言葉を信じホテルまで迎えに行った孫。すると。

亡くなった77歳男性の遺族:
迎えに行った時に、本人の様子がおかしいんですよ。一人で歩けない状態で、手も震えていて

事前の電話で聞いていた状況とは大きく異なり、手の震えや一人で歩ける状態ではなかったという男性。
それでもホテルで対応した看護師とみられる人物は、「ホテルにいる医師が判断している」と話したという。

なぜホテルから出したのか

亡くなった77歳男性の遺族:
とりあえず家に連れて帰ったが、震えがもっとひどくなって発熱もして、すぐに保健所に連絡した。それでもやっぱりコロナの期間が終わっているの一点張りであって、思い当たるところ何カ所か電話したが、全部対応はできないという答えだった

そして、その間も男性の体調は悪化の一途をたどり…

亡くなった77歳男性の遺族:
水(いる?)って言っても「うん」というが、結局は水も飲まないし、なんか本当、意識があるのかないのかわからないような寝たっきり。そのまま朝方、体調が悪化して呼吸も荒くなって、見た目に苦しそうだったので

親族の119番で病院に救急搬送された。
その翌日、新型コロナが原因の「敗血症性ショック」で亡くなった男性。

亡くなった77歳男性の遺族:
もう肺が真っ白になっていて、検査したら「陽性」だった。(病院の)先生が言うには、病院に運ばれたときにはもう合併症になっていたらしく。先生もなんでホテルから出したかわからないという

死亡診断書にも、発病から2日で死亡とかかれている。

亡くなった77歳男性の遺族:
実感がないです、どういったらいいんですかね、急すぎて、頭が追いついていない。現実とは思えない

そしていまも納得できぬまま、様々なことが頭をよぎっているという。

亡くなった77歳男性の遺族:
保健所にもずっと対応はどうなのかというのは言ったが、保健所と家族の情報(共有)がもうちょっとあれば、今回もまた違った結果になったかもわからないので、そこら辺を考えてもらいたいし。これ以上、こういう犠牲者を増やさないでほしいというのが一番の思いではあります

今回の件について広島市の担当者は、テレビ新広島の取材にこのように答えた。

広島市の担当者:
個別の案件についてお答えは差し控えさせていただいています。保健所は患者となった方の積極的疫学調査を行った後に県と調整し、患者に入院又はホテルで宿泊療養していただくことにしています。ホテルにおける健康観察や療養の解除については県の所管となるため、本事案について内容を把握していません

また、広島県の担当者は…

県の担当者:
退所や退院は、これまでの療養期間中の症状の変遷や日数の経過、直近の状態などをドクターの判断のもと決めている。これまで退所や退院後にホテルに戻る、もしくは入院になったケースがあるかどうか、そういった運用をしているかどうかはわからない

「人工的に酸素を吸わなくていい患者は軽症に」

広島県内での現状について、重症患者を受け入れている病院の医師は次のように話している。

重症患者を受け入れている病院の医師:
軽症・中等症・重症はすべて呼吸困難の程度で決まっている。どんなに熱が出ていて、どんなに咳をしていても(人工的に)酸素を吸わなくていい方は、全部軽症になっている。そうしないと病院が回らない。とても広島県のベッド数ではまかないきれないという現状。
一日の患者数が30人とか40人まで減れば、ちょっとぐったりしていてしんどい人が、酸素がいらなくても入院できるようになると思う

やはり、現状の医療体制のひっ迫が大きな課題となっている。

(テレビ新広島)

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