「非化石証書」を取引
温室効果ガス削減の取り組みを「証明書」で支援する。
経済産業省は、太陽光や風力などの再生可能エネルギーで発電したことを証明する「非化石証書」を取引する、新しい市場の試験運用を11月から始める。

企業の温室効果ガス削減の取り組みを支援するためで、企業は市場から証書を直接購入した分だけ、再生可能エネルギー由来の電力を利用したことになる。

再エネ由来の電力を市場で購入しやすくすることで、脱炭素の動きを後押しする狙いがある。

日本企業の競争力アップに
三田友梨佳キャスター:
環境やエネルギー政策にくわしい、国際環境経済研究所理事、首席研究員の竹内純子さんに聞きます。
「非化石証書」の購入が盛んになると再生エネルギーの拡大には繋がるのでしょうか?
国際環境経済研究所理事・竹内純子さん:
実はそうとも言い切れません。
そもそも「非化石証書」とは何かというと、既存の火力発電に比べると太陽光などの再生エネルギーはまだコストが高いのでそのままではなかなか普及しません。
そこで政府は太陽光や風力で作られた電気は電力会社が高く買い取る義務を課しています。
そのお金は我々国民が毎月払う電気代と一緒に負担している賦課金というお金が充てられます。
私たちは電気代と一緒に再エネに対する応援のお金、補助金を負担していることになります。
こうした国民の負担によって得られた環境価値、すなわちCO2を減らしたことの価値というのは、お金を払った国民のものであります。
でも、これを国民が持っていても何に使えるわけでもありません。
それに対して企業は今、再エネの利用に積極的な姿勢を見せないと評価をされない、事業に参加する機会を失うことになるので、この環境価値が欲しいわけです。
そこで国民が持っている価値を「証書」という形にして、購入できるようにしたのが「非化石証書」です。
つまり、すでにある環境価値を「証書」にして取り引きできるようにしたということなので、残念ながらこの証書が再エネを増やすことに貢献するわけではありません。

「非化石証書」を購入するメリットは?
三田キャスター:
企業が「非化石証書」を購入するメリットはどういった点にありますか?
竹内純子さん:
アップルやマイクロソフトなどは取引先企業にも再生エネルギー由来の電気を使うことを求めています。
日本企業がこうしたグローバル企業との取り引き参入のために、安く環境価値を買える制度を作るというのは日本の産業の競争力を高めることにも繋がります。
そこで「非化石証書」の値段をより安くして広めようとするのが、今回の狙いです。
ただ、この証書の値段が安くなるということは、私たちの持っている環境価値が安く買われるということになりますので、この制度で私たちの再エネ応援の負担を減らすということからは遠ざかってしまいます。
再エネ増のために企業に求められること
三田キャスター:
再生エネルギーを実質的に増やしていくためには企業には何が求められるのでしょうか?
竹内純子さん:
まずは日本の再生可能エネルギーの値段、コストを引き下げることが必要不可欠です。
企業からすれば出来るだけコスト負担を小さくしたいと思うのですが、エネルギーの構造を変えていく間というのは一定のコスト負担をしていくことが必要になります。
三田キャスター:
再生エネルギー拡大に向けて企業の本気が問われているのかもしれません。
(「Live News α」5月31日放送分)