漁獲がほぼゼロ…資源回復が望まれる二枚貝「アゲマキ」

20年以上前に生息数が激減し、ほとんど漁ができない状況が続く有明海の二枚貝「アゲマキ」。
漁の回復を目指し、佐賀大学の研究グループが、ある研究成果を公表。資源回復への新たな一手にもなり得る“発見”だという。

有明海の二枚貝「アゲマキ」
有明海の二枚貝「アゲマキ」
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佐賀大学農学部・折田亮助教:
驚きですね。不思議!という、その好奇心を駆り立てるような。“2集団存在したんだ!”という

佐賀大学農学部の折田亮助教(33)は、海洋生態学を専門とし、中でも海の底で生きる底生生物を研究している。

佐賀大学農学部・折田亮助教:
かつて佐賀県沿岸でたくさん獲れていた貝。いま資源回復が望まれている二枚貝の1つでもあるので、このアゲマキガイに注目しました

佐賀大学農学部の折田亮助教授
佐賀大学農学部の折田亮助教授

有明海特有の二枚貝、アゲマキ。

1980年代までは、年間400トンから500トンの漁獲があり、塩焼きやバター焼きなどにして、県内の食卓にならんでいた。

有明海特有の二枚貝「アゲマキ」
有明海特有の二枚貝「アゲマキ」

「鹿島ガタリンピック」では、来場者にアゲマキの味噌汁がふるまわれていたことも。

県有明水産振興センター・佃政則さん:
アゲマキが獲れなくなって20年以上経ってきていますので、「昔は食べていたけどね」という方が多くて、いまの若い人たちは、食べたことがないという方がやはり多いですね

アゲマキなど、主に二枚貝の資源回復に取り組む、県有明水産振興センターの佃政則さん。

県有明水産振興センター・佃政則さん:
こちらが2021年1月に放流して、調査で採集してきたアゲマキになります

20年以上ぶり漁が解禁も…再び禁漁に

1990年代に、漁獲がほぼゼロになったアゲマキ。

県はその後、幼い貝・稚貝を人工的に生産し放流することで、卵を産む親貝を増やそうという取り組みを続けている。

記者:
アゲマキの漁は海岸線からすぐの干潟で、漁師が潟スキーを使って行います。1つ1つ手作業で、漁をしている様子がうかがえます

取り組みの成果もあり、2018年には漁業者や期間を限定する“管理操業”という形で漁が解禁に。20年以上ぶりのことだった。

しかしその後、豪雨や食害により再び大量に死んでしまい、2019年以降 漁が行われることはなく、2021年の禁漁もすでに決まっている。

県有明水産振興センター・佃政則さん:
上手くいかないときは、もう非常に残念というか、もうガックリくるんですけど…なんとかその稚貝を残せないかということを次(の目標)にというところで、いま考えて取り組んでいるところです

そんな中、なかなか思うように進まない資源回復への道を照らす佐賀大学の発見とは…

遺伝的に異なる2つの集団…抽出したDNAから発見

佐賀大学農学部・折田亮助教:
有明海の佐賀県沿岸に生息するアゲマキガイに、遺伝的差異がある集団というのが、2つ存在することが初めて明らかになったことが、今回の発見になります

つまり、有明海のアゲマキは種類は同じでも、遺伝子レベルでは大きく2つに分けられるという。

佐賀大学農学部・折田亮助教:
サンプルは生きた状態でいただいて、生きているうちにもう開いてしまって、各部位ごとに分けて保管しています

研究に使ったのは、県有明水産振興センターから提供を受けたサンプル。
そこから、DNAを抽出する。

佐賀大学農学部・折田亮助教:
たんぱく質と脂質を取り除くための工程になります

佐賀大学農学部・折田亮助教:
(Q.これを入れたら取り除ける?)
そうですね。
(Q.ちなみになんという薬品?)
フェノール、クロロホルム、イソアミルアルコールというものの混合液になっています(笑)

要するに、複数の薬品を混ぜるなどして、DNA以外の物質を取り除いていくということ。

佐賀大学農学部・折田亮助教:
ここに白いものがもやもやと…。このひらひらしているのが、DNAになります

このようにして抽出したDNAから、遺伝子情報を文字列で視覚化し、解析を進めた結果が、遺伝的に異なる2つの集団がいるという発見だった。
長年、アゲマキに携わっている佃さんは、驚きを口にする一方で予感もあったという。

県有明水産振興センター・佃政則さん:
その結果を聞いて、思い当たる節はちょこちょことはあって。例えば放流しても生き残るときと、生き残らないときがあったり、(親貝を採取した)地先によって、明らかにその産卵の時期がずれていたりとかもしていましたので

県有明水産振興センター・佃政則さん
県有明水産振興センター・佃政則さん

生態学的な特性生かし、資源回復へ

ところで、そもそも有明海のアゲマキが2つの集団に分けられたとして、どのように資源回復につながるのか。

佐賀大学農学部・折田亮助教:
まだあくまで可能性の1つではありますが、有明海というのは水温の変化であったり、塩分の変化という環境変化が大きくて、こういう環境要因に対する適応というものが異なっているかもしれない

県有明水産振興センター・佃政則さん:
(有明海は)北から南まで広い塩分勾配があります。なので、低塩分に強いものであれば、低塩分海域に放流したり、塩分に強い集団であれば、南の方の高塩分になりやすい海域に放流するとか

一般的に、集団が異なれば、それぞれに生態学的な特性があることがほとんどで、それを上手く生かせば、より効果的に資源回復に取り組めるようになるかもしれない。
今後はまず、2つの集団を簡易的に判別できる検査方法を開発したうえで、それぞれの集団が持つ特性を検証していく方針。

佐賀大学農学部・折田亮助教:
おいしい貝なので、たくさん増えて、有明海で二枚貝アゲマキガイがたくさん獲れるというような時代がまた来たらいいなという。その一助になればと思っています

(サガテレビ)

サガテレビ
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