開幕予定日まで2カ月を切った東京オリンピック。世論調査では中止を求める声が半数を超えている。一方、国際オリンピック委員会IOCのコーツ調整委員長は、緊急事態宣言が出ている状況でも大会を開催できるとの考えを示した。
今回の放送では、東京オリンピック・パラリンピックの開催について徹底議論した。

世論調査では半数以上が「中止すべき」

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新美有加キャスター:
東京オリンピック開催まで2カ月を切りました。FNNの世論調査では、中止すべきとの回答が半数を超えています。受け止めは。

馳浩 自民党政調会長代理 東京2020組織委員会理事:
組織委員会理事として、安心安全な大会とする対策の広報が行き渡っておらず申し訳ない。プレーブック(規則集)がありアップデートもしているが、きちんと伝えきれていない。

泉健太 立憲民主党政調会長:
オリンピックの良し悪しではなく、この時期にこんな感染状況であることに世論が反応している。菅政権が招いてしまった。変異株のせいだとはならない。開催できる段階ではない。開催までの期間に開催できる状況にするのは相当大変。

スポーツライター 小林信也氏:
世論調査の数字はやむを得ないが、組織委員会や対策会議の計画がほとんど伝わらないうちに皆さんが結論を決めているように思う。中止した場合の日本のスポーツの損失、国民生活への不利益についてはもう少し皆さんと一緒に検討したい。

国に中止の決定権限がない

早川吉尚 立教大学法学部教授 弁護士
早川吉尚 立教大学法学部教授 弁護士

反町理キャスター:
法律家の立場から、開催問題はどう見えますか。

早川吉尚 立教大学法学部教授 弁護士:
世論調査を見ても、オリンピックとは何か、また東京都・国・組織委員会の法的位置づけについて確認されず議論がなされており、非常に歯がゆい。

反町理キャスター:
開催可否を決めるのは誰かがはっきりわからず、議論だけ沸騰している?

早川吉尚 立教大学法学部教授 弁護士:
そう。前提への誤解があまりに多い。まずオリンピックとは、IOCという法人が開催する4年に1回のスポーツイベント。それ以上でもそれ以下でもない。これに対して東京都が開催都市契約を結んだ、つまり会場貸しを約束した。契約内容はオンラインで公開されています。
つまり開催するか否かの決定権限は国にはない。そして当事者である東京都が決定権限を持つのは開催可否ではなく、会場を貸すかどうか。今迫られている選択は、約束通りに貸すか、違反してでも貸さないか。

泉健太 立憲民主党政調会長:
IOCの行事だからといって、東京都や組織委員会が決定について影響力を及ぼさないことはないというのが国民の理解では。日本の国論、懸念を伝えているのか。戦っている姿が見えない

馳浩 自民党政調会長代理 東京2020組織委員会理事
馳浩 自民党政調会長代理 東京2020組織委員会理事

馳浩 自民党政調会長代理 東京2020組織委員会理事:
組織委員会として、リスクマネジメントを踏まえ交渉するのが、橋本聖子会長や武藤事務総長ら事務方の役割。森会長のときから、やりとりは徹底的に積み重ねてきている。

早川吉尚 立教大学法学部教授 弁護士:
法的な話と別に、IOCに対して政治的にプレッシャーをかけ日本の事情を理解してもらうのは重要。また東京都が場所を貸さなければ債務不履行となり、損害賠償が請求される莫大な金額に上り、東京都だけで抱え切れずに国の財政出動にも。その限りにおいて国会で法的にも議論することは非常に重要。

中止なら開催都市契約違反で賠償金1兆円の可能性も

新美有加キャスター:
経済的リスクについて。アメリカのワシントン・ポスト紙が、IOCのバッハ会長を「ぼったくり男爵」と呼び、IOCは収益のほとんどを自分たちのものにし、費用はすべて開催国に押し付けていると非難。日本に対しては中止を決断し損失を最小限にすべきだと主張しています。その場合の賠償金は。

早川吉尚 立教大学法学部教授 弁護士:
契約上、日本は開催都市契約の違反で賠償することになる。これは私以外のどの弁護士に聞いても同じ結論が出る。放映権料、スポンサーへの返金を合わせると、各報道に基づけばだいたい6400億円以上、場合によっては1兆円にも

スポーツライター 小林信也氏:
IOCは開催地募集に苦慮している。巨額の賠償を東京に求めれば今後ますます手を挙げる都市が減る懸念はある。それほどの賠償はないという楽観的な声も。

スポーツライター 小林信也氏
スポーツライター 小林信也氏

早川吉尚 立教大学法学部教授 弁護士:
IOCは資金的に回らなければ困る。そんなに甘くないのでは。また開催地についても、国を挙げてオリンピックを開催できる国家資本主義的な国々もあり、簡単に手を挙げられる。

反町理キャスター:
泉さん、兆のお金が請求されるリスクをとってでも中止すべき?

泉健太 立憲民主党政調会長:
IOCも状況認識はしていると思う。真摯に協議をすれば、満額請求は考えられない。折半となるか、ある程度免責になるかということが現実的では。

選手以外の関係者の入国が高リスクとなる

新美有加キャスター:
国民の不安・不満を払拭し安全安心なオリンピックを開催するための対策について。
橋本聖子会長が掲げるのは、来日人数の削減、選手や大会関係者の行動管理・健康管理、医療体制の見直しの徹底という「3徹」。中でも来日した人の行動管理が一番難しいとされています。大会期間中の行動ルールをまとめた選手や関係者向けのプレーブックは厳しい内容ですが、行動管理はできるのでしょうか。

スポーツライター 小林信也氏:
選手たちは出場のために決まりを守らざるを得ない。リスクがあるのはメディア関係者、オリンピックファミリー、スポンサーゲストら選手と違って管理が難しい人たち。この4万人ほどをゼロに近づければ不安は解消されるのでは。例えばメディアがリモート取材できるような情報を組織委員会から送るとか。

馳浩 自民党政調会長代理 東京2020組織委員会理事:
SNSの使い方を緩和し、選手がメディアを通じずにSNSやツイッターなど情報を出すことを容認できるか。今までのように規制一辺倒だけでは通用しない。

泉健太 立憲民主党政調会長:
来日予定人数はまだ減らせる。中国など3000人の報道関係者を訪日させ全力報道をして北京オリンピックにつなげると言っている。またJOCやIOCがどこまで行動管理できるか。プレーブックの内容は頑張っているが、現実的なコントロールは難しい。

馳浩 自民党政調会長代理 東京2020組織委員会理事:
プレーブックを理解いただき、それに基づいた行動を求めるしかない。GPSで四六時中監視管理することはできない。

泉健太 立憲民主党政調会長:
建前はそう。しかし、行動計画を出せば入国可として何千人も入国させたところ、うち1割ほどの連絡が取れなくなることがすでに起きてしまった。国民は不安に感じている。管理をどれだけ厳格にできるか。

馳浩 自民党政調会長代理 東京2020組織委員会理事:
選手以外の入国をどこまで絞るかという議論はある。

国内観客による人流増加も懸念される

新美有加キャスター:
6月が決定の期限とされる観客問題。観客数に上限を設け制限するのか、無観客で開催するのか。

馳浩 自民党政調会長代理 東京2020組織委員会理事:
開催1ヶ月前の感染状況を踏まえて。5000人、半分、無観客といった選択肢を残しておくことが必要。

泉健太 立憲民主党政調会長:
選択肢は無観客か中止かしかない。海外からの観客がなくても、国内の観客により人流が10パーセント増えれば、パラリンピック閉会後の月末には感染再拡大で再度緊急事態宣言となるという試算も。野村総研の試算では最も経済損失の大きいシナリオ

スポーツライター 小林信也氏:
人流増加での感染拡大は当然考えなければ。一方、全国で開催されているプロ野球やJリーグで観客のクラスターがないという実績にも注目する必要がある。また、テレビ観戦者が会場の観客の反応に共感する効果という点で、観客にこだわる意味もある。

オリンピックが総選挙に与える影響は

新美有加キャスター:
政治に与える影響について。東京オリンピックは7月23日から8月4日、パラリンピックは24日から9月5日。任期満了のため9月には自民党総裁選。そして10月21日の衆院議員の任期満了までに総選挙。

泉健太 立憲民主党政調会長:
オリンピック期間中に総選挙は普通あり得ない。そして国民のリスクが少ないタイミングを考えると、高齢者のワクチン接種が終わっており、現役世代も打ち始めている9月ごろ、というシナリオになるのでは。

泉健太 立憲民主党政調会長
泉健太 立憲民主党政調会長

反町理キャスター:
総選挙を考えたとき、オリンピックの開催は立憲民主党にとって逆風か順風か。はっきり言えば、オリンピックにより国内感染が爆発することが政治状況として望ましいのか。

泉健太 立憲民主党政調会長:
そういうことは考えてはいけない。オリンピックが争点なのではなく、コロナ対策が争点。去年と今年のコロナ対策が果たして本当に正しかったのかということが問われる選挙。

反町理キャスター:
オリンピックと総選挙の関係について、馳さんは。

馳浩 自民党政調会長代理 東京2020組織委員会理事:
スポーツと政治を絡めてはいけない。どうすれば開催できるのかという一点に絞ってしっかりバックアップしたい。政局の話はしません。

BSフジLIVE「プライムニュース」5月26日放送