東日本大震災で全壊した岩手・陸前高田市の市役所が再建され、5月から業務が始まった。
高台の仮設庁舎から市の中心部に移設されるまでの10年を取材した。

震災から10年 新しい庁舎で開庁式

5月6日の陸前高田市。震災から10年、ようやく新しい庁舎で開庁式を迎えた。
早速、窓口には多くの市民が訪れ、真新しい市役所で手続きなどをしていた。

岩手・陸前高田市の新市役所
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新庁舎は鉄筋コンクリート造の7階建てで、最上階のロビーからは街の景色が一望できる。

訪れた市民:
びっくりしましたね、あまりにも格好良すぎて。ホテルやデパートに入ってきた感じですよね。気軽に来れますよね

市の方針で、市民の生活再建を優先し、最後となっていた庁舎の建設。
その完成までには、場所の選定など、熟慮に熟慮を重ねた議論が交わされてきた。

利便性か安全か…熟慮を重ねた場所の選定

当時の市役所は、約13メートルの津波に襲われ全壊し、市職員と市民の尊い命が犠牲になった。

津波で被災した市役所 2011年

市は、2016年に示した3つの候補地について、市民から意見を募り、2017年の市議会で、中心市街地からほど近く、利便性に優れた高田小学校への移設を提案した。

しかし…

陸前高田市 鵜浦昌也市議:
新たな市役所を建設するには、浸水区域ではないところの方が宜しいのではないかと思っております

震災では、校舎の1階部分まで津波が押し寄せた浸水区域だったため、市民からも強い反対意見が出た。

東日本大震災では1階部分まで津波が…

2017年1月に開かれた「市長と語る会」では…

参加した市民:
私の娘も職員で、(津波で)犠牲になってるんですよ。絶対に大丈夫だっていうところにつくらないと

このため、高田小学校案は市議会で一度否決。

これを受け市は、最大5メートルかさ上げし、土地を海抜17メートルの高さにする計画案を再提案し、可決された。

免震構造・自家発電も 市民生活を支える拠点に

この議論から4年の歳月を経て、完成した新庁舎。

工事の模様
ようやく完成

そして5月はじめ、大型連休中に仮設庁舎から新庁舎への引っ越し作業が行われた。

引っ越し作業をする市職員:
やっぱり名残惜しい感じはありますね

震災の2カ月後に業務を開始し、約10年にわたって使われてきたプレハブの仮設庁舎は、その役目を終えた。

東日本大震災を教訓に、新庁舎は免震構造になっていて、屋上には自家発電設備もあり、災害時には行政の機能を維持できるようになっている。
真新しい庁舎を訪れた市民の思いもさまざま。

親戚(市職員)を亡くした市民:
(震災から)いま10年だから、皆わかってるから、それぞれ逃げると思うけど、また100年後に来るかもしれない。それを伝えてもらいたいね、職員さんに。自分の身も守ると

訪れた市民:
(新庁舎の)工事が始まる前までは、反対の意見もずいぶんあったみたいだけど、今になってみれば、良い場所に役所ができたんじゃないかと思って

利用する市民にとって、手狭な仮設庁舎から、広く足が運びやすい場所へと行政サービスの拠点が移った。

陸前高田市 戸羽太市長:
まだまだ、心のケアも含めて必要な復興はたくさんありますので。新しい拠点はできましたけれども、これで終わりではなく、引き続き市民のニーズにしっかり応えていきたいと思います

議論の末、安全を確保し、中心市街地に再建された新しい庁舎。
復興へと歩み続ける市民の生活を、ここから支える。

(岩手めんこいテレビ)