選手が生育から収穫まで

日差しが差し込むハウスで、農作業に励む男性たち。その胸元には、「福島ユナイテッド農業部」の文字。

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現役Jリーガーが農作業に励むのには、ある理由が。
そこにはJリーグが目指す、世界のサッカーリーグでも珍しい取り組みがあった。

J3リーグ、福島ユナイテッドの公式ユーチューブチャンネルには、選手たちが、「桃の摘蕾(てきらい)」と呼ばれる、余分なつぼみを間引く作業を行っている。

実はこのチームは、クラブ内に農業部を作り、地元農家と一緒になって、選手が生育から収穫までを行っている。

それだけではなく、「ふくしマルシェ」として、ホーム、アウェーに限らず、全国の試合会場に出店。

今では公式オンラインショップも開設するなど、農業支援にとどまらない収益を生む新たなビジネスとして期待されている。

社会連携活動「シャレン!」

こうした社会連携活動をJリーグは「シャレン!」と称し、全57のクラブで展開。

5月10日に行われた「シャレン! AWARDS」では、福島ユナイテッドが多様な企業、団体と連動し、持続可能な活動となるよう取り組んでいるとして、パブリック賞を受賞。

横浜F・マリノスは、新型コロナウイルスの影響で客足が遠のく飲食店と住民を結ぶことを目的に、ファン、サポーターなどから情報を収集。ネット上に、「ホームタウン テイクアウトマップ」を作成し、「ソーシャルチャレンジャー賞」を受賞した。

ガイナーレ鳥取は、現役選手やスタッフが子どもたちと一緒に、公園遊びを実施。外で遊ぶこと、仲間と楽しく過ごすことの大切さを伝えているとして、メディア賞を受賞した。

地域が抱える課題に、各クラブが“ハブ”となり解決していく、Jリーグのもう1つの役割だ。

Jリーグ・村井満チェアマン:
ある意味、「シャレン!」 が、Jリーグにとって一番中心的な中核的な存在と思っています。
だいたい1クラブが1年間に400回ぐらい。実は365日、試合以外のところは何がしかホームタウンでクラブは地域とともに活動を共有しています。

Jリーグが持っている資産を活用することで、地域課題を解決していこうというのがJリーグ取り組み。まさに、世界にも類がない活動と思っています。

企業や地域を繋ぐ「大義ある連携」

三田友梨佳キャスター:
このニュースについては、デロイト トーマツ グループの松江 英夫さんに聞きます。Jリーグが力を入れる社会連携活動、どうご覧になりますか?

デロイト トーマツ グループCSO・松江 英夫氏:
大事なポイントは「大義ある連携」、この輪が広がっていくことだとみています。
企業にとってプロスポーツとの関わりは、従来であれば広告宣伝を目的としたスポンサーの意味合いが強かったのですが、実は広告宣伝の投資対効果をどう見るかは企業に取っても議論が続く課題でもあります。

これから企業がスポーツと一緒にやっていく上では、単にスポンサーという立場だけではなくて、こういった社会の課題を一緒に解決していくパートナーとしての大義がより求められてくると思います。

そんな中、Jリーグは「シャレン! 」ということで、地域に密着しながら人の心と体の健康に貢献するといった大義は明確にありますし、Jリーグのチーム自体もそれをやっていく意思があるので、こういった大義があるもとでは複数の企業と地域が一体になって連携していく輪がますます広がっていくことが期待できると思います。

三田キャスター:
地域に根ざしたスポーツチームだからこそできる貢献は大きいと思いますが、どんな力があるとお考えですか?

松江 英夫氏:
スポーツやアスリートが持っている力、それは人の心を直接動かして笑顔を作っていく力があると思います。

プロサッカー選手というのは、地元ではある種の憧れですから、一緒に地域社会活動をやると、子供は自然と笑顔になる、それを見ていると大人も笑顔になる、こうやってスポーツを通じて人の心を動かして笑顔を作っていくのはスポーツの強みだと思います。

人の心を揺さぶる大義ある連携、この輪がますます広がっていくことを期待したいと思います。

三田キャスター:
スポーツはみんなの心を一つにしたり、時には日々の生活に勇気を与えてくれる力もありますが、スポーツそのものに留まらず、地方創生や持続可能な社会作りに繋げる地域振興への計り知れない可能性も感じます。

(「Live News α」5月18日放送分)