5月7日金曜日、菅総理は4都府県に発令されていた緊急事態宣言を5月末まで延長し、愛知県と福岡県も対象地域に加えることを表明した。今回の放送では赤澤内閣府副大臣とエコノミスト2人を迎え、宣言の延長が日本経済に与える損失を予測し、対応策を議論した。

ワクチン接種の遅れで経済の回復が遅い

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新美有加キャスター:
20日間の緊急事態宣言延長による日本経済へのダメージ。ゲストのお二人、第一生命経済研究所の長濱さんは延長20日間でマイナス4739億円程度、また大和総研の神田さんはマイナス0.5兆円程度とそれぞれ予測されています。

永濱利廣 第一生命経済研究所首席エコノミスト:
年率ではGDPを3%近く押し下げる。来週出る1〜3月期のGDPは確実にマイナス成長だが、4〜6月期まで2四半期連続でマイナス成長となる可能性がある。一方、アメリカの1〜3月期は年率6%以上プラス。4〜6月期では10%以上という予測もある。通常アメリカと日本のGDPの連動性は非常に高いのに、このように真逆で動くことは相当深刻

反町理キャスター:
日本の経済の回復が遅い? 

永濱利廣 第一生命経済研究所主席エコノミスト
永濱利廣 第一生命経済研究所主席エコノミスト

永濱利廣 第一生命経済研究所首席エコノミスト:
遅いどころか悪化している。ワクチン接種の進み方や、日本はそこまで消極的ではないが経済対策への積極性によって、国ごとに大きな差が出ているのでは。

反町理キャスター:
日本経済は明らかに下降曲線で、中国・アメリカなど立ち直りが早い国はすでに成長軌道に入っていると。

赤澤亮正 内閣府副大臣:
私は異なる見方。1月の政府による経済見通しでは今年度中に、4月のIMFによる見通しでも2021年中にコロナ前の水準に回復する形。変異株など予断を許さないが、そこまで悲観的なものではないと思っている。

永濱利廣 第一生命経済研究所首席エコノミスト:
ESPフォーキャスト調査という民間エコノミストの予想平均では、2023年1〜3月期時点でも回復しない予測。つまり政府の見方との間に乖離がある。

神田慶司 大和総研シニアエコノミスト:
私は永濱さんの考えに近い。飲食・外食・宿泊といったサービス消費が落ち込んでいる。これを取り戻すためには、やはりワクチンがしっかり普及するまで待たなければ。

反町理キャスター:
つまり、アメリカや中国に比べて日本経済の立ち直りが悪いのはワクチンの接種が遅いから? 

永濱利廣 第一生命経済研究所首席エコノミスト:
ワクチンの接種率と主要先進国の経済成長率の見通しをグラフに描くと、きれいに関係が出る。海外を見ても、厳しいロックダウンを行った国もあるが、結局はワクチンの接種でしか解決していない

赤澤亮正 内閣府副大臣:
家庭の実収入や貯蓄は増加している。生活が苦しい家庭の支援はきちっとやらなければならないが、全体としては良好な状況で失業率も抑えられている。コロナ収束後に一気に消費が増えることは見込める。ワクチン供給が安定すれば好転は見込める。

宣言解除の基準は「病床逼迫」の度合い

新美有加キャスター:
東京大学大学院の仲田泰祐准教授らのグループによる、東京都の感染者数と経済損失のシミュレーション。
週平均の感染者数が600人になり宣言を解除した場合、8月第2週に緊急事態宣言が再発令される可能性があり、経済損失は3兆162億円。400人で解除した場合はワクチン接種が進んでいるため再発令されない可能性があり、経済損失は2兆108億円。200人になるまで我慢した場合、経済損失は2兆7648億円との試算。

永濱利廣 第一生命経済研究所首席エコノミスト:
まず、政府はワクチン接種を1日100万回と言っているが、これは50万回で計算されている。また、医療提供体制がもうちょっと改善すればワクチン接種が早まり、損失も変わるのでは。

神田慶司 大和総研シニアエコノミスト:
私たちも簡易な推計でシミュレーションをしたが、近い結果。ただ、おそらくこの経済損失は去年のGDPの動きと人出の関係から出されている。しかし去年は消費だけではなく外需が落ち込み、設備投資も落ちていた。今の状況はまったく違うため、予測の数字に差が出る。いずれにしても結果を左右するのは、ワクチンが普及するまでの時間稼ぎをどうするのかということ。

神田慶司 大和総研シニアエコノミスト
神田慶司 大和総研シニアエコノミスト

赤澤亮正 内閣府副大臣:
二律背反。1日あたり100人を切るところまで感染者数を減らしていけば経済損失は拡大していき、自殺者も増える。経済損失を少なくすれば感染死や病床逼迫が続く。そう簡単にはいかない。

反町理キャスター:
そのバランスをどこで取るのか。例えば尾身茂会長が言うのは、ステージ3から2に向かうところ、つまり1日当たりの新規感染者数が300人を切るところ。

赤澤亮正 内閣府副大臣:
答えは病床逼迫。これが起きない限りは経済を回せばいい。尾身先生がおっしゃるのは、ステージ3になるだけではなく2まで到達する、あるいは3で安定していなければならないということ。その判断指標が入院率、つまり感染した人のうち何%が入院できるか。そして病床の使用率。だから大阪の現状については、大変重く受け止めている。

「広義の失業率」が深刻な数値に

新美有加キャスター:
長引く経済的な苦境を乗り切るため求められる変化について。国は事業再構築補助金という制度で中小企業の事業転換を促しています。企業としては業態転換を進めるチャンスでしょうか。

永濱利廣 第一生命経済研究所首席エコノミスト:
チャンスというよりやらざるを得ない状況。非常に懸念しているのが、女性の雇用比率が非常に高い、飲食や宿泊といったサービス業。全体の失業率は3%を切っておりよく見えるが、特に女性の就業環境が非常に悪化している。
しかし、求職活動をしていなければ失業者としてカウントされない。感染の恐怖や諦めなどから求職活動をしていない人もいる。本当はもっと長時間の労働や違う仕事をしたいができないという人も。これらを含めて「広義の失業者」と言ってもよいが、厚労省がこの「広義の失業率」を出している。男性は5%以上、女性は8%を超えている

赤澤亮正 内閣府副大臣
赤澤亮正 内閣府副大臣

赤澤亮正 内閣府副大臣:
事実関係はおっしゃる通り。ただ雇用調整助成金による対策の効果は出ている。諸外国と比べても悪くなく、失業者は23万人減った計算になる。しかし一方、非労働力化して失業率の計算から除外される人が24万人であり、横ばいと言っていい状況。
女性を中心とした非正規雇用に大きな影響があるのもご指摘の通り。これに対して、マッチング再就職支援や、子育て中の女性などのニーズに合った専用窓口などにも予算をつけている。しっかりやっていきたい。

飲食店感染防止のために「第三者認証制度」

新美有加キャスター:
緊急事態宣言の解除に向けた政府の取り組み例として、飲食店の感染防止強化について。政府は第三者認証制度の導入を県知事に通知しています。具体的にはアクリル板等の設置、手指消毒の徹底、食事中以外のマスク着用の推奨、換気の徹底。自治体の職員や委託を受けた民間業者が実際に確認し認証を付与するものです。狙いは。

赤澤亮正 内閣府副大臣:
多くの都道府県の現状は、自主申告による認証制度。しかし要件を守っていないところが多くあり、認証店に支援を集めることができない。真面目に対策している方たちからは、守っていないところと一緒に時短・休業要請をされるのは我慢できないとの要望。そこできちっと第三者認証をやる。ひとつの店舗に1時間ほどかけ、30〜40項目ほどのチェックシートできちんとチェックする。

反町理キャスター:
認証後のチェックも当然必要ですよね。抜き打ちのようなチェックもやらなくては。これについては。

赤澤亮正 内閣府副大臣(左)、新美有加キャスター(中)、反町理キャスター
赤澤亮正 内閣府副大臣(左)、新美有加キャスター(中)、反町理キャスター

赤澤亮正 内閣府副大臣:
例えば認証店が安全対策を怠っていた場合、客として訪れた方が写真を撮って通報してくれるようなウェブサイトを作る余地はあると私自身は思っています。

反町理キャスター:
相互監視社会につながるのでは。

赤澤亮正 内閣府副大臣:
相互監視というより、みんなで安全な飲食店を作り上げていく。第三者認証に信憑性があれば客が来る。これは飲食店のため。飲食店の方たちやグルメサイトの運営側と意見交換しても、信用性向上は大事なことと思う。

反町理キャスター:
グルメサイトは協力してくれそうですか。

赤澤亮正 内閣府副大臣:
そこはまだ申し上げる段階にないが、いろんなことを考えている。

BSフジLIVE「プライムニュース」5月11日放送