住宅街の駅近くに新店舗

新型コロナウイルスの感染拡大で消えたインバウンド需要など、逆風の中でも成長を続ける外食チェーンの新戦略に迫った。

この記事の画像(13枚)

4月30日、東京・豊島区の駅近くに開店した、中華料理の大手、大阪王将の東長崎店。
一見、普通の店開きに見えるが、そこには全国展開する大手中華チェーンの新たな狙いがあった。

大阪王将・植月剛社長:
半径500メートルから800メートルぐらいのお客さまが週に何回も通っていただけるような店づくりです。

大阪王将・植月剛社長

新店舗の目の前の東長崎駅は、池袋から2駅目だが、1日の乗降客が多いときでも2万人ほど。

どんな街かを住民に聞くと、「見た通り住宅が8割くらい」、「仕事に行って帰って来るという街、住んでる人たちの感覚では」などと話す。

インバウンドから「町中華」に

ギョーザ専門店から始まり、フランチャイズ形式によって今や国内で350以上の店舗を展開する大阪王将。

新型コロナ以前には、インバウンド需要の波にも乗り、外国人観光客が集まる繁華街やターミナル駅に大型店を展開し、業績を伸ばしてきた。

ところが、新型コロナウイルスの感染拡大により、インバウンド需要がなくなり、新たな戦略が求められたのだ。

大阪王将・植月剛社長:
「お客さまが住んでいる駅の近く」へと、出店戦略を変更しました。

新たな戦略は、ターミナル駅から離れた住宅街の駅で住民の生活の一部として繰り返し使ってもらう、いわば「町中華」として定着する戦略。

そのため、出店する街によって、さまざまな工夫がされている。

大阪王将 直営営業部・文野幸司マネージャー:
現地を見ると、20歳から40歳の単身世帯が非常に多いと思った。そういった方々に、的確な値段でガッツリ食べていただく。

例えば、東長崎店では、仕事帰りの夕食需要を掘り起こすため、ボリュームを強調した店独自の「馬力飯」シリーズを投入した。

さまざまなバージョンを組み合わせた馬力飯は9種類。選択肢の多さで、週に複数回の来店を促す狙い。

また、既存のメニューでも、味付けや内容を変更。

ラーメンでは、これまでのメンマの代わりにチャーシューを1枚から3枚に増量。

さらに、現在の売り上げの大きな要素のテイクアウト需要を高めるため、店外からも注文しやすい窓口のレイアウトを採用するなど、あらゆる要素を地元型にシフトした。

半径500メートルの地元に愛される町中華への今回の戦略。

大阪王将・植月社長:
いわゆるターミナル駅から数駅離れた人々が住んでいるところにどんどん出店していこう。その街に根ざした店づくりをしていこうというのが、今のわれわれの戦略です。

出店戦略に加え"収益構造"が強さの秘密

三田友梨佳キャスター:
企業経営に詳しい経済アナリストの馬渕磨理子さんに聞きます。
今飲食チェーンが軒並み苦戦する中、新戦略で攻めの経営をとる大阪王将ですが、どうご覧になりますか?

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
感染拡大が続く中でも成長を維持できる「勝利の方程式」に基づいた新規出店を進めています。
具体的には3つです。

仕事から帰ってくる帰着駅であり、そこには2万人~3万人規模の乗降客がいます。さらにスーパーなどでの買い物ついでに立ち寄れる場所です。こうした3つの視点を踏まえた新規の店舗は売り上げを伸ばしています。

三田キャスター:
その結果、地元で愛される町中華として定着を図って、これがまた成長の原動力になっているようですね?

馬渕磨理子さん:
例えば感染拡大が続く中で、東京・世田谷区に新規出店した店舗では、4月の売り上げは前月比で140%以上も伸びました。このうちお持ち帰りが売り上げの約7割を占めています。

こうした新規出店した店舗の成長に目を奪われがちですが、大阪王将の真の強さは事業ポートフォリオの構成にあります。

三田キャスター:
事業ポートフォリオの構成というのは具体的にどういうことですか?

馬渕磨理子さん:
大阪王将を手がけるイートアンドホールディングスの事業別の売り上げ構成を見ると外食事業は40%、冷凍食品の羽根つき餃子を含む食品事業は売り上げの60%を占めています。
今、家庭で食事をする機会が増え、冷凍食品に追い風が吹いているんです。

視界不良が続く飲食業界にあって店舗の売り上げに頼らない収益構造を持っていると金融機関の融資などもスムーズに進みますし、他社の買収などアフターコロナを見据えた攻めの経営もできます。

三田キャスター:
外食産業である一方で、冷凍食品事業も手がけて、狙いを絞った出店戦略で成長を続けるという大阪王将には味だけではない強さの秘密があるようです。

(「Live News α」5月11日放送分)