今回の放送では、憲政史上最長の在職日数を誇った安倍晋三前首相が退陣後初めてテレビに生出演。何が長期安定政権と強力なリーダーシップを可能としたのか。安倍外交が残したもの、そして宿願ともいえる憲法改正への思いについて伺った。

成果はアベノミクスと外交、憲法改正などのやり残しも

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反町理キャスター:
安倍前首相の在職日数は連続・通算ともに歴代最長。ご自身の考える一番の成果は。

安倍晋三 前首相:
ひとつはデフレ不況からの脱却。後にアベノミクスといわれたマクロ経済政策を掲げて政権を奪還し、有効求人倍率が初めて1倍になった。もうひとつは、日米同盟が危うくなり日本の国際的な地位が相当低下していた中、平和安全法制を制定し日米同盟を確固たるものにした。それを背景に日本の国際的な地位を高めることができた。

反町理キャスター:
やり残したことは?

安倍晋三 前首相:
何といっても憲法改正。同時に拉致問題の解決、そして日露平和条約。これを成し遂げられなかったことは本当に残念。 

2012年の選挙で維新があと一歩伸ていれば……

反町理キャスター:
注目すべきは安倍さんの選挙の強さ。総裁選、総選挙、参院選を合わせると9戦9勝だった。記憶に残るような際どい選挙はあったか。

安倍晋三 前首相:
やはり政権奪還の2012年、そして2017年。

反町理キャスター:
2017年の選挙は小池旋風があった。第一党を取られるかもしれないという危機感も?

反町理キャスター(左)、安倍晋三前首相

安倍晋三 前首相:
小池百合子さんが前年に自民党推薦候補を破り東京都知事になっていた。都議会議員選挙でも我々が大敗。政権を失った2009年に似ているとも言われた。第一党の地位を失うとは考えなかったが、在任中一番支持率が低下していた時期。選挙をすべき時期ではないとの意見もあったが、薄氷を踏む思いで判断した。

反町理キャスター:
「排除」という言葉が出た瞬間、小池さん・希望の党に対する求心力が明らかに落ち、自民の議席数維持につながった。どう感じたか。

安倍晋三 前首相:
排除という言葉は非常にきつい。言葉遣いとして日本では反発を受ける。ただ小池さんは国家安全保障問題担当の補佐官や防衛相も経験し、平和安全法制の重要性、現実を理解している。平和安全法制を廃止したい人たちを同じ政党に入れられないというのは、政治の指導者としてまっとうな考え方。

反町理キャスター:
もう一つの選挙が2012年、政権奪還時の総選挙。橋下徹さん率いる維新の会の獲得議席が54、民主党が57。

安倍晋三 前首相:
国会運営において野党の主役となる野党第一党がどちらになるか。たった3議席が大きな差。大阪都構想があり橋下さん自身は選挙に出なかったが、出ていれば間違いなく維新が野党第一党。

反町理キャスター:
保守二大政党への可能性もあったと。憲法論議や野党の戦術含め、その場合どういう国会になっていたか。

安倍晋三 前首相:
もっと建設的な議論になったはず。憲法においても、審査会を拒否はせず、その中で議論しようとなる。大きく違った。

「菅首相が当然続投するべき」

安倍晋三 前首相(左)、菅義偉 首相(画面)

反町理キャスター:
今年は任期の問題もあり、総選挙もあと半年以内に必ずある。安倍首相ならいつ解散を? 

安倍晋三 前首相:
菅首相が一人で判断すること。私は発言を慎まなければ。

反町理キャスター:
それは一人で考えるものですか。

安倍晋三 前首相:
基本的には一人でずっと考えます。2017年の時にはたまたま夏に河口湖で静養しており、ずっと考えていました。

反町理キャスター:
よく記者会見などで、「解散は全く考えていません」とおっしゃる。

安倍晋三 前首相:
これはもう決まり文句ですから。

反町理キャスター:
秋には総裁選。菅首相のここまでの評価は。

安倍晋三 前首相:
コロナ禍の中、私が突然病気のために辞任して大変だったと思う。本当に感謝している。そこで総裁選をしたばかりで、1年後にまた総裁を変えるのか。自民党員は常識をもって考えるべき。当然菅首相が続けられるべき。例えばその前に選挙があれば、そこで国民が菅首相を選んでいる。その後党内で変えるのはおかしい。 

安倍外交がオバマ大統領・トランプ大統領らと築いた関係性

反町理キャスター:
安倍外交の7年8カ月について。アメリカ大統領としては、ブッシュ、オバマ、トランプの各大統領と付き合った。

安倍晋三 前首相:
ブッシュ大統領は非常にフレンドリーな方。もともと弁護士のオバマ大統領は非常に実務的。トランプ大統領に従来の常識は通用しないが、ビジネスマンとして、納得すれば官僚的な手続きを飛ばしてでも大きな判断をできた人。

反町理キャスター:
仕事だから付き合っている部分もあったかと思うが、嫌な人とも仲良くする方法は。

安倍晋三 前首相:
嫌な人と思う人はいなかった。リーダー同士苦労が分かる。もちろん会議の場ではお互いに国益を守るために相当激しい議論をしますし、むかっとすることがはないわけではないが。

反町理キャスター:
2018年6月、カナダでのG7サミットの、誰も目線が合っていない有名な写真がある。むかっとしているときですか。

安倍晋三 前首相:
これは私はむかっとしていないです(笑)。

反町理キャスター:
トランプ大統領がむかっとしている?

安倍晋三 前首相:
コメントは差し控えますが(笑)。海洋プラスチックごみの問題などで相当激しいやりとりになったところ。日本というのは和を以て貴しとする国。私がある程度中和的なことを言えば、他の首脳もトランプ大統領も了解をしてくれました。

反町理キャスター:
安倍外交の柱のひとつが、安倍・トランプ関係。一緒にゴルフもされてきた。

ドナルド・トランプ米前大統領(左)、安倍晋三 前首相

安倍晋三 前首相:
そもそも日本はヨーロッパの国とは違って、アメリカが唯一の同盟国。日本の総理大臣にはアメリカの大統領と信頼関係を作る責任がある。

反町理キャスター:
今回の菅・バイデン会談の評価は。

安倍晋三 前首相:
大変高く評価している。共同声明において、対中国について世界が注目する中、台湾海峡も含めた地域の平和と安定にコミットした。菅首相自身がバイデン大統領とこの意義についてしっかり確認をした上で文書を発表したと聞く。

中国の軍事力増強、日本の危機感にようやく欧米が賛同

新美有加キャスター:
中国包囲網の意味合いも持つクワッド。2006年の時点で、安倍さんはご自身の著書「美しい国へ」において、日米印豪4カ国の首脳・外相レベルの会合で戦略的観点から協議を行い、日本がリーダーシップを発揮する必要がある旨を書かれています。

安倍晋三 前首相:
中国が歴史的なスピードで軍事力を増強する中、自由民主主義、法の支配、人権といった価値観を共有する国々と連携すること。ただ当時の段階では十分に賛同していただけず、局長級で会議を開いたのみだった。

反町理キャスター:
近年ようやく欧米が関心を持ってきたと。

安倍晋三 前首相:
インド太平洋の海は世界の公共財。自由で開かれていなければならない。中国を追い出そうということではない。その構想に、今やヨーロッパをはじめ多くの国々が賛同していただいたということ。

日本の防衛力は「打撃力を抑止力と考えるべき」

新美有加キャスター:
日本のあるべき防衛力について。辞任間際の2020年9月には敵基地攻撃能力を念頭に新たな安全保障政策の談話を発表。4月22日にも、本気で打撃力を抑止力として考えるべきだとの発言。

安倍晋三 前首相:
日本はミサイル防衛能力を持っており、アメリカと共同対処をしてミサイルを撃った基地に報復することで抑止力が成り立つ。でも果たして本当にそれでよいか。例えば反町さんが私に向かってピストルの弾を打ったら、私は私のピストルでその弾を撃ち落とす。この神業がミサイル防衛。私は決して反町さんを撃てない。
主体はもちろん米国であったとしても日本も事実上の共同対処で攻撃できるということにならなければ、抑止力は十分とは言えない

憲法改正「野党は堂々と議論に応じよ」

新美有加キャスター:
憲法改正の道筋について。自民党は憲法改正について、自衛隊の明記、緊急事態対応、合区解消・地方公共団体、教育充実の四つを提示。優先順位は。

安倍晋三 前首相:
私としてはやはり、自衛隊の明記が極めて重要と思う。

新美有加キャスター:
憲法9条に加憲する形で自衛隊の明記をする意義は。

安倍晋三 前首相:
自衛隊はもちろん合憲。国民から最も信頼されている組織と言われている。彼らの血のにじむような努力で勝ち取った信頼。しかし9条2項があるために、自衛隊は合憲であると言い切る憲法学者は3割前後と言う状態。この問題に終止符を打つのは私たち国会議員の責任。

反町理キャスター:
国会では6日、憲法審査会において国民投票法が採決されるかどうかに差し掛かっている。

安倍晋三 前首相:
常設委員会であり億を超える予算がかかっているのに、全然審議をしていない。国民の皆さんからすれば税金の無駄遣い。賛否あるのは当然だが、野党は堂々と議論に応じたらどうなのか。

反町理キャスター:
直近の各社の世論調査では、憲法改正については賛成・必要という人がだいぶ増えている。世の中の憲法に対する温度感が変わってきたと感じますか。

安倍晋三 前首相:
初めて日本人の手で憲法をどうするかということをみんなで考え、一票入れようと。そうやって新しい時代を切り開いていきたいと思います。

BSフジLIVE「プライムニュース」5月3日放送