新型コロナの感染拡大が始まって1年以上が経過したものの、医療や福祉の現場では過酷な状況が続いている。当初は全国的にエッセンシャルワーカーに対する感謝や応援の動きがあったが、いまではあまり聞かなくなってしまった。中でも忘れられがちなのがケアワーカーと呼ばれる介護・福祉従事者だ。介護現場の声と支援の動きを取材した。

ケアワーカーの8割以上がストレスを

「1年以上前から⾃粛⽣活が続いており、家と職場とスーパーなどしか出かけておらず、感染のリスクを考えると軽はずみな⾏動もできないためストレスの解消が難しい。職場内で不要不急の外出や会⾷をしたという話を⽿にしてしまうと、僻みや妬みの感情が⽣まれてしまいさらにストレスを感じます」 (30代⼥性 介護職)

「施設で利⽤者10⼈、職員4⼈が感染し、⾃分も陽性となってしまいました。約半数の利⽤者が⼊院できない中、職員の疲労も溜まり、さらに感染者が増加するのではないかと危惧しています」 (40代⼥性 介護職)

ケアワーカーに対する意識調査によると(※)、8割以上が「コロナの感染拡大前よりも仕事に対して心理的ストレスを感じている」と回答している。その理由として挙げられるのが「プライベートの制限」や「自分が感染拡大させたり、感染しないか」という不安だ。また身体的にも、増え続ける業務などが原因で6割以上がコロナ前より疲労を感じている。

「care for careworkerプロジェクト実⾏委員会」による調査
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(※)「介護・福祉従事者の新型コロナウイルスに関する意識調査」全国20歳以上の介護・福祉従事者 224名を対象に2021年2⽉15⽇から2⽉18⽇までインターネットによる調査を行った。

政府に経済・人的な追加支援を求める声

さらにこうした声もある

「どんなに対策しても認知症の⽅が⼤半を占める⾼齢者施設では、マスクの着⽤やゾーン分けがほぼ無意味になります。ただでさえストレスの溜まっている⾼齢者に、日々抑制の声かけをしなくてはいけない現実。他の業種に比べて意識していると思うのに、ご家族はそれを理解していない⼈もいます」(30代男性 介護職リーダー)

経済面も深刻だ。7割以上が私生活の出費が増加したと答えており、その主な理由が感染対策商品やハンドケア商品の出費だ。政府からの追加支援してほしいとの回答は85%に達し、特別給付金など金銭的な支援や人材不足を解決するための支援を求める声が大きい。

「旅⾏や外⾷などリフレッシュする機会がとれない。⼀般の⽅は外⾷できているだろうが、有事の際の利⽤者への影響を考えると自粛せざる得ない。⾃粛に対する⾦銭的サポートはありません」(30代 ⼥性 相談⽀援専⾨員)

高齢者を感染させないことに細心の注意

このアンケート調査を行った「care for careworkerプロジェクト実⾏委員会」の発起人・秋本可愛さんは、株式会社Blanket(ブランケット)という介護福祉事業者の採用や人材育成支援などを行う会社を経営している。秋本さんはこの調査結果についてこう語る。

秋本可愛さん「ケアワーカーをサポートしていかないと」

「コロナの感染拡大以降の心理的・身体的負担が大きくなっていて、あらためて危機感を持ちました。80代以上の高齢者は死亡率が14%(※)で、介護施設では感染させないことにケアワーカーは細心の注意を払っています。しかし少なくともあと1年程度はこの状況が続くと思われ、中長期的にケアワーカーをサポートしていかなければいけないと感じています」

(※)厚労省「新型コロナウイルス感染症の国内発生動向」(4月14日時点)

厚労省「新型コロナウイルス感染症の国内発生動向」(4月14日時点)より

ケアワーカーを支援するプロジェクト

care for careworkerプロジェクト実行委員会では、約200万人(※)の介護職員などケアワーカーを支援するプロジェクト「#ケアワーカーをケアしよう」を開始した。

(※)厚労省調べ

介護職員数の推移(厚生労働省HPより)

プロジェクトに賛同する企業から集まった支援物資やケアワーカー限定のサービス、資金面での支援をクラウドファンディングで呼びかけている。

ケアワーカーは支援を必要としている

協賛企業には株式会社コーセーや株式会社ベアーズらが名を連ね、コーセーは支援物資として化粧品セットを提供するほか、ベアーズは家事代行サービスを提供する。ベアーズの高橋ゆき取締役副社長は協賛した理由をこう語る。

「先が見えないこのご時世で、愛と勇気をもって日本社会を支えてくださっていることに感謝をこめて、私たちベアーズは家事代行サービスを通じケアワーカーの皆さまとご家族の皆さまの暮らしのチカラになれたら本望です」

努力があるから守られている命がある

実は秋本さん自身も昨年末医療従事者の夫がコロナに感染し、そして自らも感染した。2人とも一般の人以上に感染対策には気を遣っていたのにもかかわらずであった。

秋本さんは後遺症でいまも味覚障害が続いており、コロナ感染の恐ろしさを身にしみてわかっている。

秋本さんは語る。

「どれだけ気を付けていたとしても感染する可能性があります。そんな状況の中で、自身がウイルスを持ち込んでしまわないようにと1年以上自身の生活を制限しながら過ごしているケアワーカーの努力があるからこそ、守られている命や暮らしがあることを知っていただけたらと思っています」

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ケアワーカーへ感謝と支援を続ける

秋本さんは「ケアワーカーはいつも誰かのために頑張って、自分のケアを後回しにしがちです」と語る。

「介護・福祉職の方々は、感染予防のためにご家族との面会制限や行動範囲が憚られる中、少しでも暮らしに彩りを守りたいと創意工夫を重ねてきました。ご利用者のために、ご家族のために、仲間のためにと、いつも目の前の人のために頑張ってしまう『ケアワーカー自身のケア』が今必要だと感じています。

いつもは高齢者や障がい者のケアをするケアワーカーが、今回のプロジェクトを通じて、ささやかながらかもしれませんが、たくさんの人の想いが詰まったケアが届く。そんなケアの循環を今回のプロジェクトをきっかけに生んでいけたらと思っています」(秋本さん)

「コロナ疲れ」や「コロナ慣れ」は誰にでも起こる。しかし医療現場、高齢者や障がい者の暮らしを支えるケアワーカーへの感謝と支援は続けたい。

高齢者や障がい者の暮らしを支えるケアワーカーへ感謝を

【執筆:フジテレビ 解説委員 鈴木款】