福島第一原発事故で、ふるさと・富岡町から三春町に避難した男性。
毎日悲観する中、心をほぐしてくれたのは「ひょっとこ踊り」だった。陽気な踊りに魅了され、愛好会を結成。新たな交流が生まれた。
「ひょっとこ踊り」に魅了され…
三春町の復興公営住宅。この日集まった色鮮やかな衣装を来た“ひょっとこ”たちは、「富岡ひょっとこ連 気晴らし舞道愛好会」のメンバー。

6年前に愛好会を立ち上げたのが、復興公営住宅に暮らす91歳の斎藤泰助さん。
斎藤泰助さん:
毎日悲観してな。余計なこと考えるから、夜眠れないんだわ

原発事故で、ふるさと・富岡町からの避難を余儀なくされた斎藤さん。
先の見えない避難生活に笑顔を忘れかけていた時、心をほぐしてくれたのが、郡山市のデコ屋敷で見た「ひょっとこ踊り」だった。

斎藤泰助さん:
見た瞬間ね、今までのそういう心の痛みっていうのは、なくなったわけですよ
陽気な踊りに魅了され、愛好会を結成。

ほかの住民も加わり、新たな交流が生まれた。
2年ぶり開催の「桜まつり」…常に笑い声が
東日本大震災から11年目の春。この日、斎藤さんが仲間とともに向かったのは、ふるさと富岡町・夜の森の桜並木で行われた「富岡桜まつり」だった。

斎藤泰助さん:
特別だなあ。(桜は)人いなくても咲くからな。コロナでもこうやって咲く。自然ってのは強いな。ことし足悪いから、なかなか踊れないんだよな。やってる方が楽しいんだよ。やってる方が楽しいから、見てる方も楽しいんじゃないかと思うんだよな
故郷の桜の下で。自分が踊ることはできなくても、三春で出会った仲間たちが笑顔を届けてくれる。

メンバー:
きょうは、富岡でやるから参加してくださいと言うから、喜んで来たところ!
メンバー:
心がワクワクしてます!
新型コロナウイルスの影響で、2年ぶりの開催となった「桜まつり」。感染対策としてメンバーの数を少なくしたが、常に笑い声が響いた。

斎藤泰助さん:
じゃあ元気でやりましょうね、元気でね、ウイルス負けないように元気でやりますよ
沿道にも笑顔がこぼれた。
(Q.どうだった、ひょっとこ?)
観客:
楽しかった
観客:
表情も良かったし、動作も良かったですね。
(Q.笑顔になれますか?)
はい、なれます!
斎藤泰助さん:
いやー良かった、みんな喜んでくれて良かった。それでだいぶ知ってる人にも会えた、しばらくぶりにね。10年ぶりに会った人いたよ。恩返しだよな、人生の恩返し。90年生きてきた恩返しなんだよ。生きてるうちはやりたいな

避難生活は「人生の最高の収穫」
祭りのあと、斎藤さんが訪ねたのは、富岡町のハウス。甥の山本育男さんが、4カ月前からバラの栽培を始めている。

斎藤さんは、三春町で出会った仲間に“復興に向かう富岡町”の姿を伝えたいと考えていた。
甥・山本育男さん:
故郷に帰ってくる町民の皆さんが来たときにね、そういったお土産みたいなのができればいいのかなと思って取り組んでいます

これまでの感謝を込めて、バラを手渡した。
三春町のメンバー:
久しぶりに花などいただいて、うれしいです
三春町のメンバー:
桜とバラとセットで、今度またお邪魔したいと思います
斎藤泰助さん:
ほんとに親切にやってもらえるから、その恩返しだな。(避難生活は)プラスマイナス考えると、プラス面がものすごく多いよ。人生の最高の収穫だ!

避難生活の中で生まれた、かけがえのない絆。
「人を笑顔にすることが自分の活力の源」と話す斎藤さんは、これからも笑顔の花を咲かせる。
(福島テレビ)