漫画村の閉鎖から3年…海賊版サイトが再び拡大

大量の漫画を無断で公開している「海賊版サイト」。

3年前の2018年、悪質性が際立っていた「漫画村」が閉鎖され、しばらくは落ち着いていたが、再び、事態が悪化している。

出版社や著者、通信事業者などで構成される海賊版対策の団体、一般社団法人「ABJ」の担当者によると、海賊版サイトの上位10サイトの月間アクセス数が2020年1月以降、急速な増加傾向にあるというのだ。

一時は減っていたという海賊版サイトが、2020年1月以降、なぜ増加しているのか? また、こうした状況を受け、どのような対策がとられているのか?

一般社団法人「ABJ」の担当者に話を聞いた。

2020年1月以降、急速に増加

――漫画の海賊版サイトによる被害が再び拡大。これはどのような調査で分かった?

ABJでは、海賊版サイト上位10サイトの月間アクセス数を継続的に調べておりますが、2020年1月以降、急速な増加傾向にありました。

ただ、「2021年1月→2月」で、ここ1年で初めて、減少しました。2021年1月1日の改正著作権法施行(「ダウンロード違法化の対象範囲の拡大」)と、2月中旬からスタートした、改正著作権法を周知する「STOP! 海賊版キャンペーン」の効果だと思われます。

ダウンロード型が軒並みアクセスを減らしました。しかし、上位にいる2サイトの伸びは止まらず、過去最悪の状況が続いています。
 

――3年前の「漫画村」の閉鎖後も、被害は減らなかった?

「漫画村」の閉鎖後、被害は一旦、落ち着きました。ただし、他の海賊版サイトは多数、健在であり、また、「漫画村」の後釜を狙った海賊版サイトが次々と登場しました。

ABJが把握しているだけで、後釜を狙ったサイトは、10以上出現しましたが、出版社側の対応ですぐに閉鎖に追い込みました。「漫画村」が閉鎖された2018年4月から2019年の6月までは、被害は比較的落ち着いていたといえます。

ところが、2019年の6月頃に「hoshinoromi.org」が登場したあたりから、状況は変化します。「hoshinoromi.org」は、8月に月間アクセス数が4000万に達し、「漫画村」に追いつくような存在になりかけました。通常の削除要請などでは閉鎖に追い込めず、出版社連合がアメリカで法的アクションを実施し、ようやく9月中旬、閉鎖しました。

その後、2019年秋頃から、悪質なサイトが次々と登場し、2020年1月以降、アクセスが急伸、2020年12月には上位10サイトの合計アクセス数は、月間2億を上回り、「漫画村」を超えてしまいました。(漫画村は当時、最盛期で1億7000万アクセスといわれていました)

(画像はイメージ)
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2020年にタダ読みされた金額は2114億円

――「漫画村」が閉鎖されてから現在に至るまでの被害額の推移は?

ABJが算定しているのは、「海賊版サイトでタダ読みされた金額」で、2020年の1年間の金額は算定しています。

2020年1月の月間のタダ読みされた金額は少なくとも39億円、2020年12月の月間のタダ読みされた金額は少なくとも349億円となっており、急速に伸びました。2020年の年間では、少なくとも2114億円となりました。

「漫画村」のタダ読みされた金額が3200億円(CODA調査)と推測されていますので、2021年の3月には「漫画村」に並び、そして、2021年4月以降、最悪の記録を日々、更新していくことになります。アクセス数でも、タダ読みされた金額でも、「漫画村」を超えたと認識しています。


――「漫画村に並び」に関して。 これは、「漫画村のタダ読みされた金額の累計」と「2020年以降にタダ読みされた金額」が並ぶという解釈でよい?

そのとおりです。


――背景としてはどのようなことが考えられる?

巣ごもり需要の影響や使いやすい海賊版サイトが、複数、登場したことが理由では、と推測しています。
 

現在、700ほどの海賊版サイトを把握

――海賊版サイト。ABJは今、どのぐらいの数を把握している? 

現在、700ほどの海賊版サイトを把握しています。


――その数は「漫画村」が大きな問題となった当時と比べると、どちらが多い?

どちらが多いかは一概には言えません。


――「漫画村」の閉鎖以降も、海賊版サイトは減っていない。これはなぜ?

「ネタバレサイト」や「漫画村」がニュースになり、海賊版サイトを見ると、儲かるのは運営者だけということが世の中の人に伝わりました。

また、閉鎖以降、6度に渡る「STOP! 海賊版キャンペーン」も実施し、悪質性や危険性を訴えてきました。しかしながら、これほど海賊版サイトへのアクセスが増加したことにショックを受けています。


――最近の海賊版サイトに、何か傾向のようなものはある?

サーバー、サービス、そして運営者まで、すべて海外で運営されているケースがほとんどではと推測しています。

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海賊版サイトを減らすための特効薬はない

――こうした状況を受け、何か対策はとっている?

できる限りの対策は実施しております。以下はその一部です。

1)海賊版サイト等への削除要請の送付(多い出版社では月に10万件送付)
2)海外での開示請求などの法的アクション
3)警察への捜査協力。刑事告訴
4)検索事業者と連携。海賊版サイトの検索結果表示抑制
5)ネット広告団体と連携。広告出稿停止要請
6)啓発活動


――「削除申請しても、運営者が対応しない」というようなケースはある?


悪質な海賊版サイトは、ほとんど削除要請に対応しません。また、こちらが海外で法的アクションをとり始めたことを察知すると、使っているサーバーやドメインをどんどん変更していきます。追い詰めるのは非常に困難です。

また、権利者や捜査当局の問い合わせに答えないことを売りにする、「防弾ホスティング」を使っているケースも散見されます。


――海賊版サイトを減らすため、どのような対策が必要?

残念ながら特効薬はありません。正規版サービスの充実も含め、ありとあらゆる対策を実施して、抑え込む必要があります。


「漫画村」の閉鎖後、しばらく落ち着いたものの、再び拡大している、漫画の海賊版サイト。
抑え込む対策を続けるだけでなく、ユーザーが利用をやめることも海賊版サイトを減らすことに繋がるのだろう。

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プライムオンライン編集部
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