世界最大350席 日本の食材にこだわり

日本で展開している回転ずしを“そのまま”海外に持っていった回転ずし「スシロー」。オープンに合わせ、タイ・バンコクの1号店には開店前から200mほどの行列ができた。

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開店は日本らしく鏡開きで行われ、従業員は日本語のあいさつで出迎える。

店内は待ち時間短縮を考えてかなり広めに。スシローとしては世界最大となる350席を設けた。

それ以外は、まるで日本のスシロー。来店客はマグロやサーモン、ネギトロと日本でおなじみの味に舌つづみを打った。

ネタやシャリもすべて日本の食材を使うことにこだわったという。価格帯は、日本円で約140円から。

物価水準が日本の3分の1から5分の1といわれるタイでは、決して安い値段とは言えないが、評判は上々だ。

10年前からアジアでの事業を拡大

来店客A:
日本食の大ファンです。オープンしたてだし魚がとても新鮮。

来店客B:
スシローは日本へ旅行に行ったら、まず最初に行くレストランです。

来店客C:
質が高くて味も良くて値段も手頃で、とてもいいね。

運営するスシローグローバルホールディングスは、10年前から韓国・台湾・香港・シンガポールとアジアでの事業を拡大。

3年前には全売り上げの1%だった海外事業だが、今期は10%が見込まれていて期待を寄せる事業だ。

スシロータイランド・吉田司社長:
今のところ、他の海外の出店においても同じ戦略で現地の人に受け入れてもらっているので、我々としては、おいしい寿司を世界の人たちに、それぞれの国の人に楽しんでもらえるように頑張っていきたい。

「中途半端に現地ニーズに合わせない」

三田友梨佳キャスター:
このニュースについて、経営コンサルタントで経営戦略やマーケティングに詳しいStrategy Partners代表の西口一希さんに聞きます。スシローの海外進出、どうご覧になりますか?

Strategy Partners代表・西口一希氏:
スシローさんは、日本でデジタル化とコストダウンを徹底的に進められて今回、満を持しての進出と見ています。海外では、まだお寿司は高級で非常に特別な食事なんですけれども、そこに焦点を合わせるとうまくいかないんですね。

今回重要なのは、“日常の食事”として習慣化を狙って進出されている。その狙いに向かって、しっかりと考え抜かれた進出だと見ています。

三田友梨佳キャスター:
日本の食文化であるお寿司が、タイで日常の食事として習慣化するためには、どんなアプローチがあるんでしょうか?

Strategy Partners代表・西口一希氏:
3点あったかと思いますが、まず値段。毎日食べられる値段設定にされていると思います。まだ現地では少々高めだということですけれども、これまで海外の回転ずしというのは日本に比べると、3倍から5倍ぐらいの値段でした。

2点目は、家族や友人との会話よりもお寿司を楽しむ、そのエンタメ性に時間を使うように設計されているということです。どうしても会話に焦点を置いてしまうと、高級な飲食と比較されてしまうので、そこをよく考えられているなと思います。

3つ目ですが、これも明確なんですけれども、中途半端に現地のニーズや嗜好に合わせていないこと。この決断が非常に素晴らしいと見ています。

三田友梨佳キャスター:
現地の事情に合わせた方が成功への近道のように思うんですが、なぜ逆なのでしょうか?

Strategy Partners代表・西口一希氏:
日本企業の海外進出で成功しているのは、日本で培った強みを迷いなく押し出しているケースがほとんどです。それが現地で受け入れられなければ、長期的な成功はできないということです。

ありがちなミスというのは、あまりにも現地との違いが気になりすぎて、“現地化”とか“ローカル化”という言葉をつけてしまって、これまで日本で成功もしていないような提案を突然、海外進出でやってしまうことなんです。

ですので、日本で成功された企業の海外展開での成功というのは、実は現地に合わせるということは必ずしも正しくないと、このように言えるかなと思います。

三田友梨佳キャスター:
感染拡大で外食産業が大打撃を受ける中にあって、その強さが際立つスシローですが、この勢いはどこまで続くのか、今後の海外展開にも注目していきたいと思います。

(「Live News α」3月31日放送分)