アニメの世界っぽい…閑静な住宅街に現れたユニークな木造の休憩所

愛知県春日井市の木工・家具製作会社の敷地に3月15日、ユニークな建物が設置された。まるでアニメに出てきそうなデザイン。長年使われてきた会社の休憩所をリニューアルするのにあたって、35歳の男性社員が中心となり、学生の意見も取り入れながらデザインし完成させた。

ハイブランドの企業から受注する技術の高さがありながらも、会社があまり知られていないと感じていた男性社員が、「もっと会社を知ってもらいたい」と社内を動かした。

(※動画の前半は新しい休憩所の全景。後半は5軸CNCを使ってスマホスタンドを製作する様子。約14分の動画を早回しで1分半ほどに加工。)

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愛知県豊山町の「県営名古屋空港」のすぐ南側、春日井市西本町。空港が近いため時折、旅客機やセスナ、自衛隊機が大迫力で通り過ぎる。3月15日、この街の住宅や工場が立ち並ぶ一角に、ひときわ目を引く物体が現れた。

春日井市の木工・家具製作会社「アーティストリー」の敷地に設置された、丸みを帯びた木造の建物。高さ2.4メートル、幅4.2メートル、奥行きが3.0メートルの建物は、「ドラゴンボール」に登場するナメック星にありそうなデザインだ。

これはアーティストリーの休憩所で、社員の大西功起さん(35)がリニューアルにあたって「会社の技術力の高さを知ってもらったり、認知度を高めたい」と提案。

これまではレトロで味のある休憩所だったが、近未来的なデザインに変貌した。

ハイブランドから様々な発注も…5軸CNCを使いこなす高い技術力

アーティストリーが創業したのは1994年。商業施設の特注の木製什器や家具を製作し、図面設計から完成までワンストップでできる。

誰でも知っているような高級時計店や人気コーヒーショップなど、様々なハイブランドの店舗も手がけてきた。

アーティストリーがハイブランドから注文が集まるのは、木材を使った自由で豊富な形状を表現できるからだ。

5軸CNCという大型の工作機械を使ってそのパーツを作り出す。5軸CNCとは3Dデータをもとに、ロボットアームが木材の塊を削って加工する機械で、複雑な曲面をデザインできることが特長だ。

業界で導入している会社は少なくないが、使いこなして様々なオーダメードに対応できる会社は珍しいという。

例えばアーティストリーが手がけた眼鏡販売「JINS」のなんばパークス店。5軸CNCを使って波打つような丸みのあるパーツを約800個製作し、それを積み上げて7つの什器を作った。

アーティストリーは職人の人数も豊富なため、約1か月の短い納期にも対応できたという。

他にも、東京・表参道の宝石店でも什器を製作した。

ただ、アーティストリーが前面に出る機会が少ないため、会社の知名度は高くない。そこでもっと知ってもらいたいと5軸CNCを使って作ったのが今回のユニークな休憩所だ。

「デザインは学生のアイデアも」…丸みのある362のパーツを積み上げて完成

プロジェクトの中心となった大西さんは、2016年に岐阜県高山市の家具メーカーから転職。木造で丸みが生かされた建物が日本には少ないと感じていたこともあり、5軸CNCの特長を最大限引き出すために、「曲面」が強調されるようなデザインで休憩所をリニューアルしようと提案した。

当時は新型コロナウイルスの影響で会社への発注も減っていたため、人手や時間には余裕があったが、「こんなことをしている場合なのか」と社内で疑問の声もあったと振り返る。

しかし、熱意を買った社長が承諾し、7月に構想、8月に動き始めた。費用の一部はクラウドファンディングで1月23日から250万円を目標に募り、3月17日の期限までに約286万円が集まった。

また、材料となる木材はプロジェクトに賛同してくれた愛知県をはじめ、神奈川県や三重県の企業から提供してもらったスギの木を使い、362の木材のパーツをレンガのように積み上げて作り上げた。

設計には、オンラインサロンで出会った建築学部や工学部の学生9人も加わり、学生ならではの遊び心もデザインに取り入れ、設計図も共同で描いた。

そして、社員にもオンラインミーティングに参加してもらったり、作品ができあがっていく中で、徐々に社内の理解も深まっていったという。

木材の豊かな表現や暮らしに繋げたい…次は北海道の大海を一望できる「サウナづくり」

3月15日、晴れ渡った空の下、完成した休憩所が運び出された。大西さんは設置された建物を写真に収めながら、「CGと同じアングルで写真を撮ったら瓜二つで、精巧にできた」と驚いていた。オンラインのみでデザインを組み上げてきたことを苦労したことのひとつにあげたが、「しっかりとコミュニケーションが取れればモノづくりは、場所は関係なく実現できる」と手応えをにじませていた。

大西さんの提案を受け止めた水戸勤夢社長も「これからどのようになるのか楽しみ。見に来てくれる人が驚いてくれると嬉しい。会社のイメージやできること、思いや心が伝わってほしい」と願いを込めた。

アーティストリーが今取り組んでいる事業のひとつに「サウナ」がある。

サウナブームの立役者、松尾大さんこと「ととのえ親方」と一緒になって、北海道・知床のホテル「北こぶしホテル&リゾート」に知床の広大な海を見ながら汗をかけるサウナを作る事業を進めている。

大西さんは 「ここからがスタート。また新しいコラボをしてアーティストリーの技術力の高さや認知度を上げて、それが豊かな木材の表現や豊かな暮らしに繋がっていけばいい」と笑顔で答えた。

※画像の一部はアーティストリー提供
※「北こぶしホテル&リゾート」の外観はホテル提供
※サウナの画像はイメージ図

(東海テレビ)

東海テレビ
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