『実質的失業者』は全国で推計140万人超

新型コロナウイルスの影響で、パートやアルバイトとして働く人の半分近くが、シフトを5割以上、減らしていることが分かった。

野村総合研究所が2月8日~12日に、全国の20~59歳のパートやアルバイトとして働く男女6万4943人(女性:5万7131人、男性:7812人)を対象にインターネット上で調査を行ったところ、「コロナ以前と比べてシフトが減少している」と回答したのは、男性で33.9%、女性で29%に上った。

このうち、「5割以上減った」と回答したのは、男性で48.5%、女性で45.2%だった。

コロナ以前と比べてシフトが減少しているアルバイトは多い(画像はイメージ)
この記事の画像(5枚)

コロナでシフトが減少した人のうち、休業手当を受け取っている人は少なく、男性の79.0%、女性の74.7%が「休業手当を受け取っていない」と回答していた。

また、今回の調査で野村総合研究所は、パートやアルバイトで働く人のうち、「シフトが5割以上減少」かつ「休業手当を受け取っていない」人を『実質的失業者』と定義。

今回の調査結果および総務省「労働力調査」を用いて推計したところ、2021年2月時点で、全国の『実質的失業者』は、女性で103.1万人、男性で43.4万人に上ったという。


男女を合わせると、140万人を超える。

同社による昨年12月の調査に基づく推計では、パートやアルバイトで働く女性のうち『実質的失業者』は90万人であり、約2カ月の間に1割強、『実質的失業者』が増えたことになる。

この『実質的失業者』は、一般的に統計上の「失業者」にも「休業者」にも含まれないという。

『実質的失業者』の半数が休業手当を受け取れることを知らない

『実質的失業者』のうち、「1日単位の休業だけでなく、シフト時間を短縮するような短時間休業であっても、休業手当を受け取ることができること」を知らなかった(今回はじめて知った)人の割合は女性で53.1%、男性で51.8%だった。

また、『実質的失業者』のうち、勤め先から休業手当を受け取れない場合、労働者本人から申請できる「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」を知らなかった(今回はじめて知った)人の割合は女性で48.9%、男性で49.7%だったことも分かっている。

いずれも、約5割の人が知らない、という実態が浮かび上がったのだ。

そして、コロナでシフトが減ったパートやアルバイトで働く人のうち、「新しい仕事を探したい」と回答した人は、女性で49.6%、男性で61.4%に上った。

今後の就労についての意向(画像:野村総合研究所)

一般的な「失業者」とは異なりその存在が見えにくい『実質的失業者』が、全国に140万人超いるとされるのは驚くべき数字かもしれない。では、救済するためにはどのような支援策が必要なのか?

野村総合研究所の上級コンサルタント、武田佳奈さんに話を聞いた。
 

“約5割の人が知らない”理由

――『実質的失業者』はどのような業種が多い?

飲食業が多い傾向が見られます。


――『実質的失業者』、女性は男性の倍以上。女性が多い理由としてはどのようなことが考えられる?

『実質的失業者』の出現率は男女で大きくは異なりませんが、パート・アルバイト就労者自体が圧倒的に女性に多いため、『実質的失業者』の人数規模としては男性より女性が多くなっています。


――『実質的失業者』の約5割が「シフト減でも休業手当を受け取れること」や「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」のことをまだ知らない。この理由としてはどのようなことが考えられる?

昨年中は、シフト制で働く人も支援の対象になることについての周知が十分でなかった影響もありましたが、今年に入って、積極的な情報発信がなされています。

それでも『実質的失業者』の多くがまだ認識していないことから、以下の理由が考えられます。

・『実質的失業者』は失業や完全休業ではないことから、本人も雇用側も休業等に関する支援が受けられる対象であることを認識しにくい(つまり各種支援策が自分ごとに受け止められていない)

・『実質的失業者』に限りませんが、今もなお支援の情報が届いていない層は、自ら情報を取りに行くような行動をあまりしていない傾向が見られ、広範囲を対象とした情報発信では認知されにくい。

「休業支援金・給付金」についての周知徹底が大事

――『実質的失業者』の方々に「シフト減でも休業手当を受け取れること」や「休業支援金・給付金」について、広く知ってもらうためにはどうすればよい?

引き続き、非正規のシフト減も支援の対象になり得ることについて、周知徹底を図ることが大事です。

それに加えて、情報を自ら取る行動をあまりしない層であることを踏まえ、対象者のより身近なところで情報発信したり、スマホのプッシュ通知で情報提供したりする必要があると考えています。

具体的には、この層でも日頃目にしている民間の情報媒体(LINEなどメッセージアプリや民間求人サイト等)の積極的な活用が有効だと考えられます。

(画像はイメージ)

シフト減でも休業手当を受け取る方法

――「1日単位の休業だけでなく、シフト時間を短縮するような短時間休業であっても、休業手当を受け取ることができる」。これを受け取るためにはどのような申請をすればよい?

休業手当は事業者が払うものなので、手続きとしては、短時間休業に対してであっても事業者が休業手当を従業員に支給すれば、当該事業者は雇用調整助成金を活用し、助成を受けることができるということになります。

詳細は厚生労働省のリリース等をご確認ください。

【新型コロナウイルスの影響を受ける事業主の方へ】

――勤め先から休業手当を受け取れない場合、労働者本人から申請できる「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」。これを受け取るためにはどのような申請をすればよい?

厚生労働省のホームページで手続きをご確認いただくのが一番正確かと思います。

【新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金】

特に、シフト減の方も利用できることについては、追加の情報も提供されています。

【『新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金』は シフト制の方や短時間休業なども対象となります!】

新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金(画像:厚生労働省)

『実質的失業者』の救済策は?

――シフトが減ったパート・アルバイトの女性約5割、男性約6割が「新しい仕事を探したい」と回答。この結果はどのように受け止めればよい?

コロナ前までは就労していた人たちであることもあって、現在でも就労が可能で、就労意欲もある人が多いと考えられます。

直近の生活維持に向けた経済的支援も重要ですが、弊社の調査では、そうした支援がずっと続くわけでないことは当事者も理解しており、できれば就労して、就労収入を得たいと考えている人が少なくありませんでした。

経済支援を確実に届けることと並行して、希望者が就労を再開し、就労収入で生活を再建できるようにすることへの支援も早急に拡充すべきだと考えます。


――コロナ禍で新しい仕事を見つけるのは難しいのでは?

確かに全体としては、求人は減っています。しかし、一時期よりも求人数は戻ってきており、業種によってはコロナによる需要増で求人が活発の業種もあることを確認しています。

そうした求人は、民間の求人サイト等に多く見られる傾向があります。


――パート・アルバイトの「シフト減少」という厳しい雇用環境は今後もしばらく続きそう?

コロナによる雇用への影響はしばらく(今年中を想定)続くとみています。


――そうした状況の中、『実質的失業者』を救済するためにどのような支援が必要?

コロナの雇用への影響がしばらく継続することを踏まえ、希望者がジョブチェンジも含めて、就労が再開でき、就労収入で生計を再建できる支援が必要だと考えています。


全国で140万人超いると推計される『実質的失業者』。救済するためには、まず、「シフト減でも休業手当を受け取れること」や「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」の周知徹底。そして、新しい仕事を始めるための支援が必要不可欠なのだろう。

【関連記事】
コロナ禍のブライダル業界の“経済損失”は8500億円…現在の結婚式事情を聞いた
コロナ禍でオフィスの空室率上昇…都心の「住まい」価格に影響はある?専門家に聞いた