ブライダル業界の経済損失の推計8500億円
収束しない新型コロナウイルスは、ブライダル業界にも大きな影響を及ぼしている。
結婚式の式場やホテルなどが加盟する「日本ブライダル文化振興協会」は、各地の式場(婚礼施設)を対象に結婚式に関するアンケート調査を行い、2020年の1年間のブライダル業界への経済的影響を推計した。
それによると、2020年、新型コロナウイルスの感染拡大で延期や中止などを余儀なくされた結婚式は約24万組に上ったことが分かった。
さらに、ブライダル業界の経済損失(売上高の損失)は約8500億円と推計。前年に比べて売上高が60%減少したと推計されるという。

また、2度目の緊急事態宣言の影響も大きく、宣言が発令された後の10日間で、1月~3月に予定していた結婚式の売り上げの約30%(約440億円)が、日程延期などによって減少したと推計されるともしている。
結婚式や披露宴では、大勢の人が集まり、飲食をともなうことも多い。新型コロナウイルスの感染リスクを考えると、現状は自粛する人がいるのは仕方がないことだろう。
では、こうした経済損失をカバーするため、ブライダル業界はどのような取り組みをしているのか? 日本ブライダル文化振興協会の担当者に話を聞いた。
「損失をカバーするのは難しい状況」
――この約8500億円の経済損失をカバーするのは難しい?
損失をカバーするのは難しい状況で、国に支援を要請しています。
――ブライダル業界はコロナ禍でどのような取り組みをしている?
個々の企業が努力をされています。

オンラインの相談時間延長などで対応
ブライダル業界では、個々の企業で行っているコロナ禍における取り組み。具体的にはどのようなものなのか? 結婚式場の紹介や指輪の販売などを行っている「ブライダルナビ」の中西由美代表に話を聞いた。
――昨年1年間でブライダルナビも経済的な影響を受けている?
昨年は結婚式を延期にする方がほとんどだったため、大きな打撃を受けています。結婚式をされたとしても少人数だったり、とりあえずフォトウェディングのみで様子を見たり、というお客様が多く、今年の実施状況が気になっています。
――昨年と今年で売上に変化は?
昨年(2020年)と今年(2021年)は、まだ変化はありません。
昨年、結婚式を検討されていた方は、今年の春か秋に延期をされている方が多く、2回目の緊急事態宣言以降にご検討され始めたお客様は秋頃をご希望される方が多いので、実施状況についてはまだ不明です。
――コロナ禍の経済損失をどのようにカバーしている?
経済損失は「オンライン」でカバーしております。
ブライダルナビでは、お仕事が終わられた後でも、ご相談しやすいように、オンラインでのご相談の時間を午後10時までに延長しています。オンラインでご相談されるお客様が圧倒的に増えたため、成約件数も増加しました。
指輪もオンライン相談にて販売しておりますので、お客様からも来店の負担が減って助かるという、お声をいただいております。
――コロナ禍で結婚式場はどのような工夫をしている?
本来、延期の場合はキャンセル料がかかりますが、「半年間は延期を無料にする」などの対策を取り、時期がずれても結婚式を実施しやすくしています。
また、結婚式の時期が遅くなってしまうお客様に、前撮り撮影を少しお得にしている結婚式場などもあります。

コロナ禍で結婚式はどう変わっていくのか?
――コロナ禍で結婚式を挙げる方はどのような工夫をしている?
「招待ゲストの人数を減らす」、「アルコール消毒」、「検温の徹底」、「パネルの設置」、「オンラインの導入」などです。
――コロナ禍で結婚式を挙げる方の変化は?
結婚式を実施されるお客様は、結婚式が小規模になる分、衣裳を少し豪華にされたり、フォトウェディングで挙式と違う衣裳をご検討されたり、という方もいらっしゃいます。
結婚式を行わない代わりに、婚約指輪や結婚指輪を少し良い物にする、などの変化も見られます。
――コロナ禍で結婚式は今後どのように変わっていくと思う?
新型コロナウイルスの感染拡大前は、結婚式のゲストにどのように楽しんでもらえるかという工夫をする傾向にありました。
それが、感染拡大後は、来ていただいた方にどのように感謝をするか、また、参加するゲストも、あまり声を出さずにどのように祝福を伝えるか、できる範囲でどのように気持ちを込めるかを考えるようになったと思います。
規模や形式にこだわりすぎるのではなく、結婚式に込める感謝と祝福に向き合うという、まさに原点回帰の結婚式です。
「感染対策をしながら」という、時代に合わせた結婚式の形というのが大事なのかなと思います。
コロナ禍で厳しい状況にあるブライダル業界。感染が続いている間は、規模や形式にこだわらない“原点回帰”の結婚式も増えていくのかもしれない。
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