息を吹くと丸まっていた紙がピロピロと伸び、そしてクルクルと元に戻っていく笛状のおもちゃ「吹き戻し」。ピーヒャラ笛などとも呼ばれ、縁日などで見かけた人も多いのではないだろうか?

今Twitterに投稿された「吹き戻し」がネーミングも相まって「すごい」と話題になっている。それが兵庫・淡路市にある株式会社吹き戻しの里で製造・販売されている「地獄のピーヒャラ」だ。

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通常伸びる先が1~3本程を思い浮かべる「吹き戻し」だが、「地獄のピーヒャラ」は一本の木から何本も伸びる枝のように四方八方へと、通常よりも多いことが確認できる。

少女の姿も楽しそうというよりは、息を吹くことに“必死”という言葉が合いそうなほど辛そうな「地獄のピーヒャラ」は、1セットで伸びる先を最大19個つなげることができる。19個でもだいぶ多いが、複数購入することでこれ以上の吹き戻しを繋ぐことも可能だという。

赤・青・黄の3色があり、吹き戻しの里ネットショップやAmazon・楽天などのECサイト、また大手量販店などで、1320円(税込み)で購入できる。

3色のカラーバリエーション(左から赤・青・黄)
3色のカラーバリエーション(左から赤・青・黄)

約30年前に誕生したという「地獄のピーヒャラ」だが、Twitterユーザーのディーン富士そばさん(@kintamario)が「バカ欲しいんだが」というコメントと共に、その商品の画像を投稿したことで話題に。

Twitterでは「ばかおもしれー」「ネーミングセンスが逸品」「肺活量鍛えられそうw」といった意見が多くコメントされ、18万以上のいいねが押される反響がある。(3月19日時点)

かわいらしい少女が一生懸命吹いている画像に反し、“地獄”といった恐ろしいワードが付くこの商品だが、どういった経緯でこんな数の多い吹き戻しが誕生したのだろうか? また、どこが“地獄”なのだろうか?

吹き戻しの里・広報担当の村田晋二さんに、「地獄のピーヒャラ」について詳しく聞いてみた。

最初は“地獄”とは全く違った商品名

ーー「地獄のピーヒャラ」はいつ頃、どういった経緯で誕生したの?

約30年前に、新しい面白い商品をつくりたいと考えた社長が考案しました。元々あった「三本付き吹き戻し」という商品の部品を流用して、枝葉のようにたくさんの吹き戻しを繋げた商品を考えました。

アイデアの元となった「三本付き吹き戻し」
アイデアの元となった「三本付き吹き戻し」

ーーどうして“地獄”というインパクトある商品名になった?

枝葉のつもりだったので、初めのうちは「吹き戻しの木」という名前で発売しましたが、売れ行きや問屋からの反応がイマイチだったので変更することに。

インパクトのある名前として、当時流行っていたちょっと怖いネーミングと、吹いた後はクラクラして地獄が見えるかもということで、「地獄のピーヒャラ」と社長が改名しました。インパクトのある名前だったのが良かったのかわかりませんが、いくつかの問屋さんで取引が始まりました。


ーー遊ぶ際の注意事項やポイントは?

・1セットで3個~19個まで数を変えて組み立てることが出来るので、初めは少ない数から徐々に数を増やして遊ぶことをオススメします。
・お子様や女性は19個を吹くのは難しいと思いますので、身体に無理せず遊んでください。
・納品時は吹き戻しの巻きが強い場合があるので、指を使って一度先端まで伸ばすなどすると、吹きやすくなります。

少ない数から挑戦するのが良い
少ない数から挑戦するのが良い

全ての吹き戻しを吹くのは難易度が高く、また、腹式呼吸を使って強く吹く運動は、普段の生活でもすることがあまりないため、準備運動のようなイメージで少しずつ数を増やしていくのが良いという。

吹き戻しを増やし過ぎるのは危険

ーーでは、全部の吹き戻し(19個)を吹くコツはある?

地獄のピーヒャラは、息の吹く量だけでなく、吹く圧も必要です。強い息を長く吹くイメージで挑戦してください。※過度な挑戦で、身体に無理はしないようにご注意ください。


ーー19個以上の吹き戻しを繋げることが可能とのことだが、最大で何個までできる?

2セット以上で、物理的にはいくつでも繋げて組み立てることが出来ます。ただし、あまり増やしすぎると肺活量だけでなく、耳(鼓膜)などへも負担がかかるので、身体に無理はしないようにご注意ください。


ーー作り方は、通常の吹き戻しと同じなの?

通常の吹き戻しは、筒状になった針金のついた紙(巻紙)に巻グセをつける→巻紙に、吹き口のついた紙筒を繋げる→巻グセが付くまで15分以上置いて完成します。「地獄のピーヒャラ」も基本的には作り方は変わりありません。

なお、弊社では通常の吹き戻しの先端はテープ留めしていない(空気が流れる、鯉のぼりの様)ですが、2本以上の複数の吹き戻しがある商品の先端はテープ留めをして空気が漏れないようになっています。

制作時の様子
制作時の様子

ちなみに吹き戻しの里では、YouTubeで吹き戻しの作り方を公開している。

30年前の商品が話題に「ちょっと不思議な感じ」

ーー現在の反響を教えて。

土曜日(13日)にツイッターで反響があった後は、公式ネットショップで「地獄のピーヒャラ」について多数のご注文をいただいております。週明けからは玩具問屋からも発注や問合せをいただいており、一般のお客様からは「どこで買えるか?」などのご質問や、業者からは「話題になっているらしいね」などお声頂いてます。


ーー反響に対してはどう思う?

約30年前に発売した商品が、今になってSNSで話題になったことは大変光栄です。ですが、正直ちょっと不思議な感じもしています。

袋に入って売られている
袋に入って売られている

ーー今後どういった吹き戻しを作っていきたい?

面白い吹き戻しを作っていきたいと考えています。また、これからは若い人にSNSで「このような吹き戻しがあったら面白い」などご意見をいただければ嬉しいです。

吹き戻しは玩具としてだけでなく、今ではさまざまなトレーニングができるグッズとして、医療・介護・美容の目的でも使用されています。そのような新しい分野で吹き戻しが活躍できるような商品開発や用途開発をしていきたいと考えています。


ーー最後に、吹き戻しの魅力を教えて。

子供から大人まで、さらに、さまざまな国籍の人でも、使い方を説明しなくても遊べる玩具であり、笑顔にできる玩具であることです。

吹くだけで楽しめるのが“吹き戻し”
吹くだけで楽しめるのが“吹き戻し”

インパクトある商品名は、吹いた後に頭がクラクラして地獄が見えるかもしれないという、実は商品そのものを、直接的に表現した名前だった。

Twitterへの1つの投稿から、約30年前に販売開始した商品に注目が集まることになった今回の一連の流れには、改めてSNSの拡散力の凄さを実感できる。

吹き戻しの里でもTwitterなどのSNSをやっているとのことだが、今回の一連の流れを体験したことに対して、「色々な方が興味を持っていただき大変に光栄なのですが、逆にあまりSNSを意識しすぎたものは冷めてしまうといったことも聞きますので、今まで通りがいいのかなと思っています」と話しており、今後もSNSへの更新はペースを変えずにいくという。

吹き戻しの里 会社外観
吹き戻しの里 会社外観

息を吹き込むだけで楽しめる「吹き戻し」。さまざまな種類が展開されているので「地獄のピーヒャラ」ではなくても、改めて手に取ってみるのはどうだろうか。

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プライムオンライン編集部
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