つまようじや針などを使い、絵柄をくり抜く「カタヌキ(型抜き)」。
祭りの屋台などで経験した人も多いと思うが、楽しい思い出がある一方、上手にくり抜くことができずに途中で割ってしまい、悔しい思いもしたことだろう。

そんな「カタヌキ」だが、現在、苦境に立たされているようなのだ。

祭りでは屋台がずらりと並ぶ(画像はイメージ)
祭りでは屋台がずらりと並ぶ(画像はイメージ)
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新型コロナウイルスの影響で、昨年は多くの祭りやイベントなどが中止となった。たしかに、縁日やイベントでの需要が多い「カタヌキ」の出番は少なかったかもしれない。

カタヌキの現状を、“国内唯一”ともされるカタヌキ製造メーカー・株式会社ハシモト(大阪)の橋本健司社長に聞いた。

材料を混ぜる工程以外は手作業で製造

ーーそもそも「カタヌキ」とはどういったものなの?

35ミリ×25ミリで厚さ1ミリくらいの小さな長方形で、板状の菓子の表面に描かれた動物などの「型」の周囲を針などを使い、割らずに上手にくり抜くことができれば、景品などがもらえるというものです。

昔は紙芝居につきものだったらしいのですが、最近はお祭りの縁日や駄菓子屋さん等でよく見られると思います。

カタヌキ菓子
カタヌキ菓子

ーーどのようにして製造しているの?

でんぷん、砂糖、ゼラチン、寒梅粉(餅粉)、着色料、香料、クエン酸などの材料を混ぜ、薄く伸ばし、型を押します。そして乾燥させて箱詰めです。

図柄はクッキーの型のような24個つながっている型があり、それを約1ミリの厚さの生地に押しすぎず押さなすぎずに、ポンっと押す感じです。

材料を混ぜる工程以外は手作業で、家族4名、パートさん5名で製造しています。


ーー製造する際に苦労する部分は?

生地は温度が高いと柔らかく、冷めると硬くなってしまう。それが秒単位や分単位で硬さが変わるため、それに合わせて生地を伸ばして型押しするのが難しいです。強く押したら型にくっついて上がってしまうし、弱いと型が生地に入らないですし…

昨年、露店用はほぼ売れなかった

ーー例年はどれくらい製造していた?

コロナ禍以前の生産量は言えません。毎年微調整しながら製造しています。その年が売れなかったら翌年は減らしますし、よく売れたら増やして製造します。夏に出荷する量を予測して年中通して、毎日同じ量を作ります。

カタヌキ菓子
カタヌキ菓子

ーーではコロナ禍の現状を教えて。

新型コロナウイルスの影響で縁日やイベントがなく、昨年は“露店用のカタヌキ”はほぼ売れなかったのですが、お祭りで出来なかったし家で楽しめるものということで、駄菓子店やスーパーなどで売っている“お家で遊ぶ用のカタヌキ”が少し好調でした。ただ昨年の在庫があるため今年は2割ほど減らして製造しています。

現在は、今年の夏にお祭りやイベントがあることを前提に製造していますが、もし今年の夏もお祭りやイベントがなかったら、来年の製造はさらにもっと減らすことになると思います。

コロナの影響で縁日やイベントがなく、“露店用のカタヌキ”がほぼ売れず…それこそ“お家で遊ぶ用のカタヌキ”をもし売っていなかったら、会社として倒れそうになっていたかもしれないです。


ーーその現状に対しては、どのように思う?

縁日やイベント用の商品を作っている会社なので、この状況がいつまで続くのか予測できないのがつらいです。「縁日やイベントをするな!」ということが早く終わることを願います。

(画像はイメージ)
(画像はイメージ)

ーー対策・対応などは考えているの?

コロナ騒動が収まるまでは、お家で遊ぶカタヌキの販路を広げようと思っています。


ーー今後への思いを教えて。

お祭りの縁日という文化に支えられ、全国にカタヌキで遊ぶということが知られるようになりました。早くコロナが終わり、皆様が笑顔で縁日で遊べるように願っています。

イベント用カタヌキ菓子
イベント用カタヌキ菓子

橋本社長いわく、新型コロナウイルスの影響での何よりの不安は「カタヌキをやる露天商の人が辞めてしまうんじゃないかという心配」が大きいという。

家庭用を作っているためカタヌキ製造は続けていけるが、祭りやイベントができないことで、販売の主軸である“露天用のカタヌキ”のそもそもの売り先が消えてしまうことを懸念しているのだ。

なお同社では、専用の木製ピックや型の一覧表も付いた、いろいろなカタヌキを試すことができる「お家で遊べるお試しセット」(税込1200円)をオンラインでも販売している。

しかし家庭で楽しむのもいいが、やはり祭りでする方が醍醐味を感じられるはず。屋台で一心不乱にカタヌキへ挑む子供たちの姿をもう一度見られるように、いち早いコロナの収束を願うばかりである。

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プライムオンライン編集部
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