1週間でタンク1基が満杯に…

2011年3月11日、津波に襲われ電源を失い、メルトダウンが発生した東京電力福島第一原発。大量の放射性物質が放出される大惨事となり、汚染水は今でも増え続けている。

決め手を欠く政府の対策と、今も負担を強いられる福島の思いを取材した。

この記事の画像(11枚)

福島第一原発の敷地内に設置されている、1000基を超える処理水の入ったタンク。廃炉作業が始まって10年、なぜ汚染水は今も増え続けているのだろうか?

第一原発の事故では、原子炉内の核燃料が溶け、金属などと混ざり合った「燃料デブリ」と呼ばれるものが堆積。デブリは今も原子炉内で熱を発しているため、水をかけて冷却し続ける必要がある。このデブリに触れた水が、放射性物質を含んだ汚染水となっている。

さらに、事故で損傷した建家の屋根や壁などから雨水や地下水が流れ込み、汚染水の量は増加し続けているのだ。

汚染水の量は、現在1日約140トン。1週間で1000トンのタンク1基分がいっぱいになってしまう。

東京電力 福島第一廃炉推進カンパニー・松尾桂介さん:
かつてに比べますと(汚染水の)発生量は低減されていますけれども、まだまだ日々発生していますので、そういった対応というのは続いていくことになると思います。

汚染水処理めぐって苦悩する地元

東京電力は、汚染水からほとんどの放射性物質を取り除いているが、トリチウムだけは除去することができないという。

このトリチウムは自然界にも存在する水素の仲間で、人間の体内や魚・貝などの水産物に蓄積することはないとされており、国内外の原発では基準の範囲内であれば、トリチウムを含んだ水を海に放出することが認められている。

政府も福島第一原発で発生した汚染水を処理した後の水を基準値以下に薄め、海に放出する案を検討しているが、2020年10月に正式な決定を見送っている。

地元関係者からは「タンクを増設して対応すべき」との声が上がっているほか、漁業関係者の反発も強いのが現状だ。

仲買人:
いわきのブランド品の魚はいろいろありますけれど、(単価が)また下落する

漁師:
海洋放出されたら、今まで試験操業でやってきたわけなのに、マイナスからのスタートになっちゃうんでダメだと思うんだよね。自分たちは風評被害というのを、やっぱり一番懸念してるからね

廃炉が完了するまでは、汚染水の発生量をゼロにすることはできない。

しかし、敷地には限りがあり、タンクに貯められる総容量の9割以上がすでに埋まってしまっている。東京電力は、早ければ2022年の秋には処理水を入れるタンクがいっぱいになってしまうとしていて、政府は処理水の処分方法の早期の決定を迫られている。

梶山経産相:
タンク容量に猶予がなくなることは考慮しなければなりませんけれども、丁寧な議論とのバランスをはかりつつ、適切なタイミングで政府として責任を持って結論を出していきたいと思っております

いかに風評被害を防いで地元の理解を得ていくか?速やかな政治判断が求められる。

(「Live News days」3月4日放送分より)