”焼け跡”で見たもの…「飛び火」が発生しやすい状況

栃木県・足利市で山林火災が発生して、2月28日で1週間が過ぎた。
連日の消火活動にも関わらず、なぜ延焼が続いているのか?

Mr.サンデーは山火事を研究する森林総合研究所の玉井幸治氏と天狗山の焼け跡へ行き検証した。まず、玉井氏から指摘があったのは…

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玉井幸治氏:
冬に葉を落とす落葉樹が多くて、その木も葉っぱが芽生える前の状況だということが分かります。今回の場合は樹冠(茂った葉)がないことによって風が地表にまで吹き込んでしまって、飛び火が発生しやすかったのかなと思います。
 

【現場検証1 落葉樹】
天狗山あたりは落葉樹が多くみられ、今の時期は木々が茂っていない状態。
そのため、風が吹き込みやすく、「飛び火」が発生しやすかったという。

番組では飛び火の危険性を実験した映像を入手。藁に火をともし、風を吹き付けると燃えた藁がめくれ上がる。そして別の場所に火の粉が降り、燃え上がる。さらに空気が乾燥すれば、危険度は増す。
別の映像では、乾燥し、風が強い春の気候と夏の湿った気候を再現し比較。枯れ草に火のついたタバコを置くと乾燥した春はわずか3分ほどで炎があがり、そこから一気に燃え盛った。
夏はおよそ10分と、その差は歴然だった。

足利市では火災が発生した2月21日以降、乾燥や強風の注意報が出されていた。その上、風が吹き込みやすい条件が重なり、飛び火が拡大したと考えられる。
 

消火難航の要因は「地表火」?

さらに、大量に降り積もった落ち葉が消火活動を難航させる大きな要因になったと、玉井氏は言う。

玉井幸治氏:
落ち葉・枯れ枝が燃える事を地表火って言うんですけど。
本当に確実に火を収めること消すことができたかどうかって、確認にやっぱり時間がかかると思いますね。
 

これまで現場各地で捉えられてきたのは地を這うように燃える炎…「地表火」
その怖さを知る、ある証言を得た。

近隣住民:
煙が全然なくなってましたから。今日あたりから大丈夫かなって思って帰ってきたんですけど。また出てますから、用意だけはしてて下さいって。

消火したはずの箇所から再び火が出たという。
実際に消火を終えた山林を歩いてみると、確かに火は消えているようだが、白煙が上がっている箇所がいくつも見られた。
その現場を、温度を検知するサーモカメラで撮影すると赤く浮かび上がる。

【現場検証2 消火後も白煙】
25℃以上が赤く示されるこのカメラで3つの地点が赤に。
そのうち2つは肉眼でも白煙が見えたが、1つは煙すら確認できない。

玉井幸治氏:
(火が)消えたと思っても、実は落ち葉の層の下の方でわずかながらでも火種がくすぶってて、それが条件が整うとまた煙を上げるようになってもっと勢いがよくなると、炎をあげて燃え出すってことはあります。
 

下に火種があっても水が届きづらい

【現場検証3 焼け跡は水が染み込みにくい】
地表の落ち葉などが燃えると、消火後も、火種がくすぶり続け、再び火が出る恐れがあるという。しかも、焼け跡に水をかけると…

玉井幸治氏:
あまり水が染み込んでいく感じがしない。表面に水がすぐには染み込んでいかないんです。
 

焼けた地表は水が染み込みにくく、下に火種があっても、届きづらいという。
その上、山の斜面では水が地表を滑り落ちるため、しぶとく火種が残りやすいという。

焼け跡にいた消防隊員は、背中に消火用の水を背負い、白煙に噴射したが、なかなか収まらない。足で掘ると、こもっていた煙だろうか。一気に吹き上がってきた。
さらに、焦げた太い枝にもたっぷりの水をかけ、中へ浸透させる。再燃を防ぐため、山中を回って白煙を1つ1つ潰していく地道な消火活動。

足利市によれば、3月1日には鎮圧宣言を出す見通し。一刻も早い終息が待たれる。

(「Mr.サンデー」2月28日放送分より)