特集「震災10年  未来につなぐ」
東日本大震災からの復興の歩みや被災地の課題、そして未来について伝える。
ヘリコプターで岩手・陸前高田市から大槌町までを取材し、被災地が10年の間にどのように変化したのか、空からの映像で確認する。

井上智晶アナウンサー:
震災からまもなく10年。復興事業が終盤を迎えるなか、空からは各市町村の復興の形がどのように映るのかリポートします

2021年2月9日。
最初に訪ねたのは陸前高田市。この日は一面雪に覆われていた。

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10年前の巨大津波では街全体が浸水し、ほとんどの建物が跡形もなくなった。
住宅の被害は全世帯の半分にあたる4,000棟以上にも上った。

市は2012年から山を削って出た土をベルトコンベヤーで運ぶ大規模なかさ上げに着手。1,657億円が費やされ、市街地の土地は平均8mほど高くなった。

井上智晶アナウンサー:
浸水区域に新たにつくられた街はすべてが新しい印象です。ですが、まだまだ空き地も目立っています

中心市街地には商業施設などさまざまな建物が建ってきたが、依然空き地が目立つ。
市内では2020年12月にようやく宅地造成が終わったが、かさ上げ地では全体の6割でいまだ活用方法が決まっていない。

2021年、再出発を迎える場所も

こうしたなか、7万本を失った高田松原だが、一歩一歩白砂青松の復活に向けて再生の道を歩んでいる。
砂浜も再生され、2021年4月に一般開放され、7月には海水浴場としてオープンする。

地上7階建ての新庁舎が高田小学校跡地に建設されており、3月に完成する予定の建物はほぼできあがっている。
これまでは仮設庁舎だったが、震災から10年経ってようやく行政の新たな拠点が完成する。

隣の大船渡市では、津波で約4,000棟の住宅が被災。
特に大船渡駅がある中心部で被害が大きく、壊滅状態となった。
その中心部では2017年に複合商業施設がオープンし、少しずつにぎわいが戻ってきている。

大船渡はまちづくりで津波対策

井上智晶アナウンサー:
商業地区と居住地区を分ける職住分離のまちづくりが行われてきました

JR大船渡線BRTのバス専用道路を境に山側を住宅用地、海側を商業用地に区分。
津波対策として住まいを山側に配置し、働く場所とわけるまちづくり。

井上智晶アナウンサー:
住宅も少しずつ増えてきました。そしてアパートも多く見られます

2019年、区画整理事業が完了したこともあり、住宅の整備が進んできている。

井上智晶アナウンサー:
釜石港に設置されたガントリークレーン。大型コンテナ船に対応するもので、釜石の物量は大幅に向上したということです

コンテナを積み下ろしするガントリークレーンが2017年に整備された釜石港。
上海などと結ぶ定期航路が開設され、取扱量は実に震災前の80倍にも達している。

井上智晶アナウンサー:
こちら旧釜石小学校跡地には仮設住宅が建っていました。今、その解体工事が行われています。そして、その後に釜石市の新庁舎がこの場所に建ちます

2020年、国から日本海溝沿いの地震による巨大津波の想定が示されたことを受けて、敷地がかさ上げされることになった釜石市役所の新庁舎。

2023年度完成予定。
最も被害が大きかった鵜住居地区では、住宅の7割近くが流されたが、この10年で風景は一変した。

井上智晶アナウンサー:
平均1.7mかさ上げされました。鵜住居復興スタジアムや市民体育館など公共施設のほかスーパーを核とした商業施設などが新たに立っています。しかし、まだまだ空き地も見られます

約4,100棟の住宅が津波で被災した大槌町。
中心部にあった旧役場庁舎では町の職員ら28人が犠牲になり、解体か保存かの議論が展開された。

井上智晶アナウンサー:
津波の爪痕を残した旧役場庁舎はおととし解体され、今は小さな慰霊施設が立つのみとなっています。周りに新しい建物が建つなか、何もない空間が逆に空からみると目を引きます

町では、今後住民の意見を聞きながら、跡地を伝承活動に活用したいとしている。

震災前、サーファーなどに人気だった浪板海岸。
地盤沈下や津波によって砂浜が消失し、海水浴ができない状態が続いていたが、現在は一部で砂浜が復活し、砂浜の再生工事は3月に完了する予定。

大槌町では予定通り砂浜が再生されれば、2021年夏の海開きを検討したいとしている。

(岩手めんこいテレビ)

岩手めんこいテレビ
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