悠仁さま 初の海外旅行先がブータンになった理由は

8月16日にブータンを私的に訪問するために日本を発った秋篠宮家の長男・悠仁さまが
母親の紀子さまと共に、25日早朝、日本に帰国されました。父親の秋篠宮さまは、お二人が到着された直後、別便で日本に到着されています。
いろいろな意味で、今回の私的なご訪問は多くの成果と教訓を残したものになりました。

8月25日 悠仁さまは紀子さまと同じ便で帰国された
8月25日 悠仁さまは紀子さまと同じ便で帰国された
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今回の私的なご訪問は、ブータン王国側から、正式な文書などによるご招待ではありませんでしたが、ぜひご家族で訪問してくださいという、お招きから実現しました。
こうした、言葉などによるお招きは、王室の方にお会いした際、皇室の方々は受けられたりすることはしばしばありますが、そうした国々の中から、秋篠宮さまがブータンを選ばれたことになります。

その決め手になったのが、ブータンという国が、とても日本と似た文化や精神性を持っている反面、全く違う風土や文化を持っていた点のようです。似ているところと違うところを比較し、改めて日本を見てほしいという思いでいらしたのでしょう。
秋篠宮さまは平成29年の記者会見で、悠仁さまが海外での見聞を広めてほしいという気持ちをこのように述べられています。
「機会があれば海外にも行って、そこからまた日本を見るということも大事だと思いますし、日本との違いであったり、また、非常に近い、似ているところであったり、そういう機会も持つことができればいいのではないかと思っております」

中学1年生の悠仁さまにとっては、初めての海外ということになりますが、姉の眞子さまと佳子さまは小学生時代にタイをご両親とご訪問。秋篠宮さまは中学3年生の時にニュージーランドをお一人で訪問されています。
やはり、お茶の水女子大学付属の小学校、中学校と進学されている悠仁さまにとっては、
節目の小学校6年生、中学3年生というタイミングでは、進学問題が絡み難しかったのでしょう。一番落ち着いた中学1年生の夏休みという時期になったのではないでしょうか。

秋篠宮さまとは別の飛行機で往復

初めての海外ということで、皇位継承権1位の方と皇位継承権2位の方が同じ飛行機を避けるという形になりました。つまり、皇位継承権1位の秋篠宮さまと2位の悠仁さまは行きも帰りも別便を使われたのです。
従って、16日の出発の際も、紀子さまと悠仁さまが羽田国際空港を出発された後、およそ10分後に秋篠宮さまが別便で経由地のタイへと向かわれています。これまでも皇位継承権1位と2位が同じ飛行機に搭乗したことはなく、万が一に備え、二手に別れてブータンへと向かわれたわけです。

8月17日 ブータンのパロ国際空港に到着された紀子さまと悠仁さま
8月17日 ブータンのパロ国際空港に到着された紀子さまと悠仁さま

17日の到着後には早速、国立博物館をご両親と共に視察された悠仁さま。
到着、視察と注目されたのは、秋篠宮さまと悠仁さまのご服装でした。その後も、報道陣の前に姿を見せられたときもそうだったのですが、親子でほぼ同じ、つまり、ペアルックのようなご服装だったのです。想像ですが、秋篠宮さまはあまり服装にこだわるようなご性格とは考えにくく、紀子さまがアレンジされたのでは?と思えて仕方ありませんでした。

取材公開されなかった“思い出に残る一日”

こうして私的旅行は始まりましたが、実はご到着2日目の18日、取材による公開はない一日でしたが、同行した人類学などを研究する教授が明かすには、重要な一日になったというのです。
この教授は国立民族学博物館に勤める池谷和信教授です。池谷教授によれば、標高2800mから2900mの村から3500mくらいまでジェラという山に登り、標高を体験してもらうプログラムが用意されていて、その際、ミューというラバの一種に乗って登山していただいたということです。そして、このミューに乗ることを悠仁さまは大変楽しみにされていたというのです。悠仁さまはこれまでも昆虫を含め生き物全般には大変興味を持っていて、大型の動物にも好奇心をもたれています。ですので、大型の珍しい動物を見るだけでなく、乗るということは日本にいるときから楽しみにされていたのです。
20日に別の場所を散策した時に記者から、ブータンでは特に何が楽しかったか、質問されると、「ミューに乗ってジェラの山に上がったことです」とはっきり答えられました。日本にはいない動物たちとの触れ合いを楽しんだこの一日は、悠仁さまにとっても一番の思い出として残られたことでしょう。

翌19日には、羽織袴姿で宗教と政治の中心「タンジョ・ゾン」を訪れ、ワンチュク国王夫妻や幼い王子ともお会いになった悠仁さま。国王が秋篠宮さまと同世代とすると、悠仁さまとこの王子は同世代ということになり、皇室とブータン王室が今後も深い親交が続くことの象徴的な出会いとなったわけです。

今回の旅行をアレンジした“キーマン”は

今回、この私的旅行をアレンジしたのは、先ほど紹介した国立民族学博物館の池谷和信教授です。この教授は、人類文明誌研究部の教授で、狩猟採集民の生業に関する歴史人類学的研究や、地球環境など幅広い研究をされている方で、秋篠宮さまが創立に関わられた「生き物文化誌学会」にも参加しています。
この「生き物文化誌学会」は、人間と関わる広い意味での「生き物」の知見を得て、その「生き物」が人間文化にどのように関わっているのか、その物語を調べることを目的にしている会です。「生き物」にはカッパや鬼のような伝承や神話の世界も含まれているといいます。私の理解では、様々な「生き物」がどのように人間に関わり、「生き物」の目からも人間を、外側からも見ていこうというものではないかと思っています。
こうした秋篠宮さまと長く研究を通して交流のある池谷教授が、秋篠宮さまの思いを
汲んだ上で、事前にブータンにも足を運び、視察箇所を調整してきたということです。動物たちとの触れ合い、昆虫の観察、高所の経験、文化や歴史からの知見、風土の日本との比較、そして王室との親交。つまり、今回の訪問場所には、一つ一つ意味を持っていたと考えていいのでしょう。

こうした私的旅行は、悠仁さまにとって見聞を広げる日本ではできない体験となりました。私的な旅行の場合は、専門家に場所を調べてもらい、場合によっては、事前にその場所に行って調査をしてもらうこともよくあることだそうで、秋篠宮家の皆様の考え方も反映され易い行程が組むことができます。それはいい反面、関係各所との情報共有には課題が残った面もあります。秋篠宮さまも皇嗣となられ、悠仁さまは皇位継承第2位という立場となられています。国王との面会もよりオフィシャルな面が強くなっています。
そうした立場の変化により、これまで以上に多くの関係者がご訪問に関わってきているのです。

ブータンご滞在4日目となった8月20日、ご両親と山道を散策中、記者の声かけに悠仁さまは、これまでの感想をこのように答えられています。

Q 悠仁さまブータンはいかがですか?
悠仁さま「 楽しいです」
Q 特にこれまでで何が
悠仁さま 「ミューに乗ってジェラの山に上がったことです」
Q 食べ物はいかがですか?
悠仁さま 「ホテルで出てきた干し肉が美味しいです」
Q 日本とは違いますか?
悠仁さま 「すごく似ている感じがします」
Q どういうところが?
悠仁さま 「木とか草とか、そういうところが」
秋篠宮さま 「どう違うか」
悠仁さま 「まだわかんない」


悠仁さまが今後成長されていく中で、今回のブータンへの私的旅行は歴史に残る意義深いご訪問となりました。

[執筆:フジテレビ解説委員 橋本寿史]

橋本寿史
橋本寿史

フジテレビ報道局解説委員。
1983年にフジテレビに入社。最初に担当した番組は「3時のあなた」。
1999年に宮内庁担当となり、上皇ご夫妻(当時の天皇皇后両陛下)のオランダご訪問、
香淳皇后崩御、敬宮愛子さまご誕生などを取材。