総務省は泉佐野市に完敗
ふるさと納税の返礼品について総務省と大阪の泉佐野市が争っていた問題で、第3者機関の係争処理委員会は、泉佐野市に軍配を上げた。
委員長の元東京高裁長官は法律家らしく実に身もふたもない言い方だった。
「ふるさと納税制度の存続が危ぶまれる状況を招いた」と泉佐野市を非難しながらも、「世間にやりすぎと見られるかもしれないが強制力がない通知に従わなくても違法ではない」と言っているのだ。
ふるさと納税は税金横取り合戦
ふるさと納税は菅官房長官が第1次安倍内閣の総務相時代に始めたもので、「都会で働く人が自分のふるさとなど応援したい地方に寄付をすると、お礼の品が届く」というのが本来のコンセプトだが、実際には地方自治体が返礼品をうまく使って本来都会に払われるべき税金を「横取り」する制度になってしまっている。一方納税者にとっては単なるカタログショッピングだ。
返礼品合戦が過熱したため、総務省が「返礼品は地場のもので寄付金の3割以下」という通知を出したのだが、強制力がないので泉佐野市は従わなくてもよかった、ということらしい。ふるさと納税制度の存続を危うくさせたのにも関わらず。
これは裁判になった時に国が負ける可能性があるので、あらかじめ法的な問題点を整理しておくためのもの、と見られている。それにしてももう少し言い方があるのではなかろうか。これではモラルが崩れてしまうと思うのだ。
性善説を前提に
最低限のモラルを守らないとこの制度は破綻する。モラルに欠けていたのが泉佐野市など4自治体である。このような「不良自治体」は直ちにふるさと納税制度から退出させるべきだ。でないと正直者がバカを見ることになる。
公的医療保険や介護保険、福祉など、社会保障制度の多くは性善説を前提に作られている。例えば病気でもないのに毎日病院に行って治療を受けたり薬をたくさんもらっていると医療保険は財政破綻してしまう。患者にも医師にもモラルが必要なのだ。モラルに欠けている人には厳しくNOを突き付けなければならない。それが抑止力になる。
しかるにこの第三者機関は妙に泉佐野市に優しい。
これでは「なんだモラルいらないんだ」と勘違いする人が増えてしまうではないか。
もう一つ、個人や民間企業ならともかく、地方自治体という「政府」にモラルが欠けているというのは救いようがない。
裁判に備えた法的な整理も結構だが、してはいけないことをした地方自治体を許してはいけないと思うのだ。