「育休を宣言するのはファッション」?
この記事の画像(6枚)先日の内閣改造で環境相に抜擢された小泉進次郎さんの育休宣言に、国民民主党の泉健太政調会長がかみついた。泉さんは日本記者クラブでの会見で「すべての労働者への育児休業給付金の原則100%給付を実現しないと自分は育休を取らない、と自民党や経団連に言ってもらいたい」と小泉さんに注文をつけたのだ。
「政治家より国民が先」という泉さんの主張はその通りだと思っていたら、Twitter上では「育休つぶし」「変化を阻害する」などの批判が集まっていて驚いた。
すると維新の会の足立康史さんが「個人事業主である国会議員は自分の立場で必要な休暇を取れるので、小泉さんのように育休を宣言することは単なるファッションに過ぎない」と反論。
育休制度があるのは公務員と会社員だけ
なんだか盛り上がって来たので還暦イクメンの僕としても書かせて頂くことにした。
結論から言うと、泉さんも足立さんも現行の育休制度を踏まえた正論を言っている。ただ進次郎さんも間違ったことを言っているわけではない。
まず育休を取れる、と言うか、「クビにならずに有給で休める」制度があるのは公務員や会社員だけで、自営業者やフリーランスにはない。公務員や会社員は法律で2年間は泉さんが言っていた育休給付金(半年は給料の2/3。その後半額)をもらって育休を取れる。公務員はその後1年無給で休める。民間企業はバラバラだがフジテレビの場合は4年間無給で休める。
育休給付金は雇用保険から払われるので、雇用保険に入っていないフリーランスはもらえない、という仕組みなのだ。
進次郎さんは衆院議員なので個人事業主。奥さんの滝川クリステルさんもフリーランスのキャスターなので育休給付金はもらえない、つまり育休は取れない。だから進次郎さんが「育休を取る」と言ってるのは、法律による「育休」ではなく、「育児のために休む」という意味で、衆院議員だろうがフリーランスだろうが休みを取るのは自由だ。ただしいつまでも休んでいると仕事はなくなる。
進次郎さんはいつ「育休」を取るのだろう。先月首相官邸に結婚報告に行った時、記者団に「ようやく安定期に入ったので発表した」と言っていた。安定期とは一般的に妊娠5ヶ月以降。ということは順調なら年明け1月頃にクリステルさんは出産する。
進次郎さんはたぶん出産への立ち合いも含め何日か休むつもりなのだろう。ちょうど通常国会が始まる前で休みやすい時期でもある。
パパが育休を取る雰囲気が醸成されていない
しかし最近のパパの育休の議論は産後の短い間ではなく、働くママが2年間の「有給育休」を取るとキャリアがとまってしまうし、パパだってもっと子供と触れ合う権利がある、ということで、たとえばパパとママと1年ずつとか、無理ならパパが半年とか、育休を夫婦でシェアすべきではないか、という話である。北欧ではパパの育休取得率が高い。従って女性の社会参加率も高い
実は日本の育休制度は北欧に比べてもそん色ないほど充実している。ただ問題点が2つあって、まだパパが長期育休を取る雰囲気が社会に醸成されていないということと、フリーランスは取れないことだ。
後者についてはフリーランスが加入する労働保険に育休給付金を組み込めないか、ということを自民党の育休議連で検討していると聞いた。これはいいアイデアだ。
しかし前者については時間がかかるのではないか。
進次郎さんが育児のために半年も1年も休んで、その間、滝クリが働くということはないだろう。だったら環境相を受けるはずがないからだ。ただ奥さんの出産などなかったことのように働き続けるパパがいまだに多い中で、たとえ数日でも休んで一緒に育児をする意味はある。
素晴らしい人生のイベントを逃すな
仕事は面白く、やり始めるときりがない。パパになっても毎晩同僚や仕事相手と飲みに行く、週末はゴルフ、という人は多いだろう。こういう「ワンオペ育児」はママと子どもが大変なだけでなく、実はパパにとって不幸なことである。育児という素晴らしい人生のイベントをみすみす逃してしまっているからだ。
ポイントはパパが家族と向き合うために仕事をセーブする勇気を持てるか、ということだろう。これは難しいが、進次郎さんならやりそうな気がする。まずそこを崩さないとパパの育休、ママの社会参加はいつまでも進まないだろう。
進次郎さん本人は入閣後、育休について「検討していると言っただけで、賛否両論含め騒ぎになるということが日本って固いね。古いね」と言っている。そうです、固くて古いんです、我が国は。だから、それをぶっ壊すためにあなたが入閣したのです。お父さんも古い自民党をぶっ壊しましたよ。
話は育休だけではない。
僕のママ友の中には休日出勤で会社に子供を連れていく人がいる。先日広尾の子供服屋で店員さんの娘らしき女の子が店内で勉強をしていた。そういえばウチの会社でもプロデューサー(男!)が小学生で春休み中の娘を連れてきていた。こういう風景は当たり前になりつつある。海外では議場でミルクをあげてる男性議員もいたではないか。
たとえば環境省に休日出勤して国会答弁の勉強しなけりゃいけない、でも妻も仕事だ、そういう時、進次郎さんにはぜひ大臣室にベビーカーを押して来ていただきたい。批判など気にするな。そうやって少しでも世の中を変えてほしいのだ。