連日、新型コロナウイルスの報道が続いているが、今回は、鹿児島・垂水市の介護施設で発生したクラスターから見えた教訓などを伝える。

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垂水市で一番大きい介護老人保健施設「コスモス苑」。1月20日、ここでクラスターの発生が認定された。

コスモス苑・福本伸久施設長:
この度は誠に不本意ながら利用者の安全を損ない、職員の健康を危うくする非常に厳しい事態が生まれたことに対して、深く反省している

きっかけは、この会見の2日前だった。
入所者2人に発熱などの症状がみられ、検査で陽性と判明。すぐに、全ての施設利用者と職員を検査したところ、一気に37人の感染が判明した。
施設の入所者は78人、平均年齢は89歳。入所者と職員に感染が広まった背景には、介護現場ならではの事情があった。

介護現場の避けられない密

介護の現場では抱きかかえて車椅子に乗せたり、お風呂に入れたり、食事の手伝いをしたりと、どうしても密にならざるを得ない状況が生まれる。
さらに認知症がある高齢者はマスクをなかなか付けてくれず、職員とのイタチごっこが続いていたという。

コスモス苑・福本伸久施設長:
職員と利用者が密着する場面が非常に多い。どこかひとつ感染が起こると、それが雪崩式につながっていく

一度に30人近い高齢者が感染したこのクラスターでは、患者の受け入れ先探しも難航した。
大半は救急車や施設の車両で、離島を除く県内全域に搬送。その際、予期せぬ事態も発生したという。

垂水市保健課・草野浩一課長:
感染者の中には環境が大きく変わって、搬送中に暴れる方もいると聞いている。防護服をひっぱったり、破いたりしてしまう。救急隊の場合は、保健所と相談したら一応、接触者の扱いになり、数日、自宅待機と聞いている

クラスターに揺れるコスモス苑。職員たちは家族と離れるなど、万全の体制を取って仕事を続けているが、心ない苦情に傷つけられる職員もいるという。

看護師長が涙…「思いは同じ」

コスモス苑に隣接する垂水中央病院。
窓には「キバレ!皆がついている」とメッセージが貼られていた。看護師らが窓越しに送ったエール。

垂水中央病院・長野裕子看護師長:
私たちはコスモス苑と交流もあって、コスモス苑の中がどんなに大変かというところも分かるので、「頑張れ」という思いがコスモス苑のスタッフに届けばと思っている

数日後、コスモス苑の窓にも「ありがとう、キバる」とメッセージが。
実はここ、垂水中央病院でもコスモス苑の入所者を受け入れている。市内に1つしかない総合病院だが、人手が足りず、一時 新たな入院患者や救急患者の受け入れを休止していた。

垂水中央病院・長野裕子看護師長:
私たち職員も向いている方向は、コスモス苑と同じなので、一生懸命がんばって…

心をすり減らしながら、今、この時間も多くの介護士や医療従事者が新型コロナと戦っている。

(鹿児島テレビ)

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