ミャンマーでクーデター

1日未明、ミャンマー民主化の指導者で国家顧問のアウン・サン・スー・チー氏など与党幹部が首都ネピドーで国軍によって拘束された。

拘束されたアウン・サン・スー・チー氏
拘束されたアウン・サン・スー・チー氏
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その後、国軍は、選挙委員会が総選挙の不正に対処しなかったとして1年間の非常事態宣言を発令。元国軍幹部のミン・スエ副大統領が大統領代行に任命され、立法、行政、司法の全権が国軍のミン・アウン・フライン総司令官に与えられた。

スー・チー氏が推し進めてきたミャンマーの民主化は大幅に後退する恐れが高まっている。ミャンマー最大都市ヤンゴン在住の日本人に現地の様子を聞いた。

携帯電話が遮断…交通量は少なめ

ヤンゴン在住8年目となる日系投資会社役員、松下英樹さんは、「3日ぐらい前からクーデタ―の話があり、まさかと思いましたが、可能性はあると思っていました。(現地時間の)1日午前7時半ぐらいかと思いますが、携帯電話のすべての通話とデータ通信が遮断されました。(携帯電話には)緊急通話のみと表示されていて、主なキャリアは使えないという状況です。」と話す。

日系投資会社役員・松下英樹さん ヤンゴン在住8年
日系投資会社役員・松下英樹さん ヤンゴン在住8年

「交通量は少なめです。自宅から会社までの間ですが、先を急いでどこかに向かうという方が多いように見受けられました。銀行やスーパーはシャッターが閉まって営業していないようでした。」

「まさかというのが半分、やっぱりやってしまったかというのが半分。そのような感じで周りの方々は受け止めています。総選挙がおこなわれたばかりで、民意が踏みにじられたのが残念。(2020年11月の選挙で与党NLDが圧勝したことで)軍としても追い詰められたこともあって、政治的な妥協ができなかったのか、残念に思います。」

「今後、落ち着いてきたら軍に対するデモですとか、民主化を求める運動のようなことが起きると思います。それに対して軍がどういう対応するのか、国民の反発がどういう形で表現されるのかは危惧されるところです。」

ただことじゃない…従業員は自宅待機

日系企業ヤンゴン駐在員・武藤太一さん ヤンゴン在住7年
日系企業ヤンゴン駐在員・武藤太一さん ヤンゴン在住7年

ヤンゴン在住7年の日系企業ヤンゴン駐在員・武藤太一さんも取材に応じ、現在の様子を語ってくれた。
「速報を見てびっくりしました。記事を読んでこれはただごとじゃないと思いました。」

「緊急時であるということは認識できましたので、きょうの出勤体制を見直しまして、在宅待機するよう指示しました。日本人もミャンマー人も全員、自宅待機になっています。」

「現地時間の朝7時半くらいまでは普通につながっていたと思うのですが、気づいたら携帯電話の通話やデータ通信ができなくなっていました。滞在先のWi-Fiがつながっている状況ですが、これが強くなったり、弱くなったりしているので、これが切れてしまうと通信手段を失うので心配です。」

「No signal」と表示されたテレビ
「No signal」と表示されたテレビ

「テレビは画面がすべて止まってしまっていまね。(イギリスの公共放送)BBCは見られましたけど、ミャンマーのテレビ局は「No signal」と出て、最後の画面が止まって表示されているように思います。」

日本政府「邦人の安全確保に万全期す考え」

ミャンマーは今後の成長が期待され、日本企業も多く進出している。加藤官房長官は「わが国は民主的プロセスにのっとり、当事者が対話を通じて平和裏に問題を解決することが重要と考えている。現地邦人の安全確保には万全を期す考えだ」と述べた。

現地とのインタビューからは携帯電話が遮断され、国営テレビの放送も停止している状況が確認できた。今のところ大きな混乱は起きていない模様だが、今後は反国軍デモなどが発生し軍と衝突が生じる懸念も指摘されている。

外務省によると2020年12月現在、ミャンマー在留の日本人は3505人(登録ベース)。現地の日本大使館は不測の事態に備え、不要不急の外出を控えるよう呼びかけている。

【執筆:FNNバンコク支局 武田絢哉】