1月19日、宮城県大崎市の東北自動車道下りで発生した多重事故。車130台以上、約200人が巻き込まれたこの事故では、ホワイトアウトという現象が注目を集めた。

2021年1月の東北自動車道で発生したホワイトアウト
2021年1月の東北自動車道で発生したホワイトアウト
この記事の画像(8枚)

激しい風と雪で視界が一面真っ白になり、見えなくなってしまうことで、警察によると、事故現場は当時、吹雪いていて、ホワイトアウトが発生していたとみられるという。

2020年12月に関越自動車道で発生した立ち往生など、冬季の運転はトラブルに見舞われることも多いが、見通しの悪さは今回のような事故の要因ともなりかねない。

2020年12月の関越自動車道での立ち往生の様子
2020年12月の関越自動車道での立ち往生の様子

ホワイトアウトとの遭遇は避けたいところだが、発生しやすい環境はあるのだろうか。また、運転時に発生したら、ドライバーはどう対処すべきなのだろう。

冬季道路の交通事故対策などを研究している、国立研究開発法人土木研究所・寒地土木研究所に聞いた。

風通りが良い場所は注意が必要

ーーホワイトアウトはどんな状態をいうの?

雪の粒子などで視界が見えなくなることです。明確な定義はないのですが、前方の視程(肉眼で物体が確認できる最大距離)が約100メートルを下回る状態を指すことが多いです。

視程100メートル以下の車内から見える光景(提供:寒地土木研究所)
視程100メートル以下の車内から見える光景(提供:寒地土木研究所)

ーー発生しやすい環境はある?

周囲が開けた平坦な地形、峠区間(山の上り下りの境目)、急峻地形(傾斜が急な場所)、切土と盛土の境目は発生しやすい
ですね。ホワイトアウトで視界が見えなくなるのは、雪の粒子が風で運ばれるためですが、開けた地形は風をさえぎるものがないので雪が舞いやすいです。

また、峠区間と急峻地形は気象の変化が激しく、視程が短時間で急激に変わることもあるので、注意が必要です。切土と盛土の境目は急に開けた場所になり、風の通り道になりやすいです。

(提供:寒地土木研究所)
(提供:寒地土木研究所)

ーー天候面で発生しやすい条件は?

研究所の調査だと、気温が1℃以上では吹雪状態になりにくいことがわかっています。風の強さも発生しやすさに影響するので、一概には言えませんが、気温が1℃よりも低く強風の時は注意したほうがいいでしょう。湿った雪よりも、さらさらした雪のほうが飛びやすいですね。

遭遇したら自分の存在を知らせつつ減速

ーーホワイトアウトが運転中に発生したらどうなる?

吹雪に慣れている人が多い地域は車がゆっくり進むことも考えられますが、そうでない地域は車の流れが完全にストップしてしまうのではないでしょうか。他の車両にぶつける・ぶつけられる可能性がありますし、視界が見えなくなると止まらざるを得ないですね。


ーー発生した場合の対処法を教えて。

ハザードランプやヘッドライトを点けて速度を落としてください。目安は徐行(直ちに停止できるような速度)程度
でしょうか。ここで大切なのは、周囲の車両の速度も考えることです。急ブレーキは追突の要因となるので、自分の存在を知らせつつ、速度を落としてください。近場に駐車場などがあるなら、移動して天候の回復を待ってもいいでしょう。

(提供:寒地土木研究所)
(提供:寒地土木研究所)

ーー急ぎの用事があるときは?

あきらめたほうがいいですね。ホワイトアウトは本当に前が見えなくなり、車両が真っすぐ走っているかも分からなくなります。無理をして進むと、路肩などに落下する可能性もあります。


ーー遭遇しないためにできることはある?

基本的なことですが、天気予報などで荒天の予想なら移動を避けることです。荒天の時はどこでもホワイトアウトが発生する可能性はあるので、地域全体の通行を避けるべきだと思います。

一酸化炭素中毒の危険性も…空気の循環に注意

ーーでは、事故の影響などで待機するときの注意点は?

大雪などで車内の空気が循環ができなくなると、一酸化炭素中毒が発生する危険性
があります。ワイパー付近にはメッシュ状の導入口があり、車両はそこから外気を吸い込んでいるので、雪などでふさがっていないかには注意してください。また、車両後部にある排気口(マフラー)がふさがっていないかにも、注意してください。

外気の導入口がふさがっていないかに注意(画像はイメージ)
外気の導入口がふさがっていないかに注意(画像はイメージ)

ーーホワイトアウトの備えとしてできることは?

身動きが取れなくなることも考えられますので、まずは連絡手段を持っておくこと。除雪用のスコップなどを備えておくことも大切でしょう。バックフォグランプなど、非常時に自分の車両の存在を知らせる手段を搭載している人もいますね。

バックフォグランプなどを搭載している車もあるという(画像はイメージ)
バックフォグランプなどを搭載している車もあるという(画像はイメージ)

ーー最後に、冬季のドライバーに呼びかけたいことは?

ホワイトアウトを回避するのは、外出を控えるのが第一です。悪天候が予想されたときは、移動の日時やルートを変えることを心がけてください。実際の道路だと、車両が整備不良で停止してしまうケースもあるので、日頃の点検も大切にしていただければと思います。


ホワイトアウトに遭遇したら、ドライバーは車を減速して過ぎ去るのを待つしかないようだ。仕事などで外出を避けられない人もいるだろうが、冬季は天気予報などを確認して、天候が荒れそうな地域はできる限り通行を避けるべきかもしれない。

【関連記事】
ホワイトアウトが影響か?東北自動車道で多重事故 車100台以上が立ち往生…
「早く出たい」関越道で車1000台超が立ち往生で災害派遣要請…最強寒波と大雪で集落孤立や停電も
車のフロントガラスを“プチプチ”で覆うと霜がつかない? 話題の投稿の効果を大学教授に聞いた

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。