規制改革・行政改革などを担当してきた河野太郎大臣に「ワクチン接種の総合調整」という新たなミッションが突如加えられた。なぜ、河野大臣の起用だったのか?そして自民党内で巻き起こっている賛否の声とは。

施政方針演説直後の官邸異変

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18日、菅首相が就任後初めての施政方針演説を終え、官邸に戻ってきたのは午後5時40分頃だった。その直後、官邸のエントランスに異変が起きた。河野規制改革相を皮切りに、田村厚労相、小泉環境相、赤羽国交相、梶山経産相、武田総務相、そして西村経済再生相が次々と官邸入りしたのだ。赤羽国交相や梶山経産相は「呼ばれたけど、よく分からない」と語り、総理番記者も「何か分からないが何かが動いている」といったムードに包まれた。

そして取材を進めると、河野大臣がワクチン接種を円滑に進めるために新たに設ける担当閣僚に起用されることが分かった。その後、菅首相が記者団の取材に応じ、ワクチンは感染対策の決め手だとして、2月下旬の接種開始に向け体制を強化するために河野大臣を担当に起用し、全体の総合調整を行うよう指示をしたことを明らかにした。

ワクチン接種は「プロジェクトX」起用はなぜ河野氏だった?

その後、河野大臣は記者団に「プロジェクトXみたいな結構大きな仕事になるんだろうな」と語り、「一人でも多くの方に1日でも早く打っていただけるような仕事をしっかりとやっていきたい」と決意を示した。

菅首相が施政方針演説で政府の大方針を示した直後のサプライズ発表となった今回の河野大臣の起用。政府関係者は、「少なくとも1ヶ月以上前から総理は、ワクチンは厚労省だけではできないという問題意識をもっていた」と語るが、なぜコロナ対策を担当する西村大臣や、ワクチン行政を担当する田村厚労相ではなく河野大臣だったのだろうか。

田村厚労相

各省庁を統括し尻を叩くには規制改革・行革相が適任?

政府関係者によると、田村厚労相はワクチンの承認審査や交渉、西村大臣は感染状況や特措法改正の対応で手一杯で、両大臣では仕事量がパンクしてしまうという理由からだという。総合調整なら官房長官が適任とも考えられるが、首相の女房役としての仕事や毎日の記者会見で忙しく無理だろうという。

西村経済再生相

接種の実行部隊となる自治体を所管する総務省の武田大臣という選択肢も考えられるが、ワクチンの接種に向けた調整は、総務省や厚労省のほかにも、保管する冷凍庫の確保は経産省、輸送は国交省と、複数の省庁にまたがるため、全体を統括して調整し動かす大臣が必要であるとの理由で今回、規制改革・行政改革担当である河野大臣の起用になったという。

武田総務相

菅首相が感染対策の決め手と位置づけるワクチンだが、実際にワクチン接種が始まっている欧米諸国の接種率はわずか数%と低く、接種率をいかに高めていくかが鍵となっている。それだけに縦割りの弊害打破を掲げてきた河野規制改革相の起用で、体制づくりの遅れが懸念される各省庁や市町村の尻を叩く意味合いもあるという。

河野大臣の発信力で政権の局面打開の狙いも

そして河野大臣起用のもう1つの大きな理由として、持ち前の強い発信力でワクチン接種の推進をアピールすることで、政権の「後手後手」感の払拭、コロナ対策の局面打開、さらに菅政権の浮揚を図りたいという思惑もみてとれる。

河野大臣のツイッターは政治家としては安倍前首相に次ぐ215万人以上のフォロワー数を持ち、若い世代を中心に圧倒的な人気を誇る。政府高官はワクチンに関して「対外的な発信に力を入れないといけない」と語っていて、河野大臣のツイッターで接種への理解を深めたり、河野大臣の明確な言葉で副反応への過剰な懸念を払拭することなどへの期待もあるようだ。

自民党内から漏れる冷ややかな声

ただ自民党内からは「適材適所だ」「総理は河野さんのことを買っているからだろう」と前向きに受け止める声の一方で、冷ややかな受け止めも広がっている。自民党関係者からは、「支持率のアップが目的ではないか」「ただの人気取りでしょ」という揶揄する声が噴出している。さらにある幹部は記者から河野大臣起用の理由を聞かれ「総理に聞いてくれ」と冷たく一言。別の自民党幹部も何度か首をかしげ、「厚労もコロナ担当もいるのになんで河野なのか?」と河野大臣を露骨に突き放している。

いずれにせよ、コロナ対応への批判で支持率も低下中の菅首相にとって、ワクチンは政権浮揚の切り札であり、GoToトラベルなど社会経済活動の促進や東京オリンピック開催を実現するための分水嶺と言える。

教訓はアベノマスク?円滑な接種なるか

そのための政府の大プロジェクトなのだが、コロナ禍を受けての大プロジェクトといえば、「アベノマスク」の配布や国民への一律10万円給付が思い起こされる。今回政府は、首相周辺が「アベノマスクや10万円給付の遅れが総理の頭に教訓としてある」と語るように、今度こそワクチンでの失敗は許されないとの強い危機感を抱いているという。

また河野大臣にとっても、このワクチン接種プロジェクトを成功させれば、国民の信頼を勝ち得て、自らの総理大臣への道に弾みをつけられる可能性も秘めている。安全で有効なワクチンを1人でも多くの人に1日も早く接種できるような体制作りができるのか、短期集中・空前絶後のプロジェクトに挑む河野大臣の手腕が問われる。

(フジテレビ政治部 阿部桃子)