人気の東京都が一転“転出超過”に

2021年1月特集は「コロナで変わる家選び」。

これから春にかけて引っ越しシーズンが近づいてくるが、実はコロナ禍で、東京都では人口流出が進み、近隣の埼玉県や神奈川県などに移住する動きもあるというのだ。

コロナ禍の裏で東京都の人口が流出(画像はイメージ)
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人口の変動は、社会的な理由の「転入・転出」と自然的な理由の「出生・死亡」の大きく2つに分類できる。このうち転入・転出は、どれだけの人が住むようになったか(転入)、出ていったか(転出)を反映しているため、今回はここに注目したい。

総務省の「住民基本台帳人口移動報告」を基に、2020年4月~11月の転入・転出の実態を調べたところ、東京都では転出超過(転出が転入を上回ること)が5月に発生。7月以降は毎月2000人~4000人程度の転出超過となり、この期間で1万2290人の人口が社会的な理由で​減少していた。

総務省の「住民基本台帳人口移動報告」※最新データである2020年11月分の報告

総務省に聞いたところ、東京都が転出超過となったのは、現状の方法で統計を取り始めた2013年7月以降では初めてのことだという。それでは、流出した人口はどこに行ったのか。

埼玉県や神奈川県は逆の現象

同じ条件で、他の都道府県の状況を調べたところ、東京都の近隣県では逆に転入超過(転入が転出を上回ること)の地域が多かった。特に埼玉・神奈川・千葉の3県には人が集まり、埼玉県で1万1160人、神奈川県で1万473人、千葉県で8244人が転入超過となっていた。

そして、実際に東京都から転出した人の移動先としては、神奈川県が最も多く、平均して毎月7000人ほどが移り住んでいた。その次は埼玉県で、こちらは平均して毎月6000人ほど。2020年後半は、住む場所として東京都内は避けられ、近隣の県が好まれる傾向にあるようだ。

東京都と近隣県の状況(総務省の「住民基本台帳人口移動報告」を基に編集部が制作)

総務省に要因を聞いたところ、「東京都から出ていくような動きが目立った。明確な理由は分からないが、コロナ禍の影響もあるのでは」というが、実情はどうなのだろう。

特に転入超過が多かった、埼玉県と神奈川県に近況や地域の魅力を聞いてみた。

埼玉県の魅力は利便性と豊かな自然

まずは、埼玉県の担当者に聞いてみた。

ーー転入超過の理由を教えて。コロナ禍は関係している?

傾向として、テレワークの普及で東京都内に在住する必要が薄れ、自然が豊かで都心にも近い埼玉県へ転入されるケースがあると聞いていますので、その点では影響はあると考えています。

埼玉県の秩父ミューズパーク(提供:埼玉県)

ーー実際にはどんな人が移住している?

移住者を実際に受け入れている市町村によると、田舎に住みたいと考えていた人がテレワークをきっかけに移住したり、都内の飲食業に携わっていた人が地元に戻ったり、有機野菜などの特産に魅力を感じて移住するケースがあるそうです。


ーー生活環境の面で埼玉県にはどんな魅力がある?

東京都に近く、テレワークの環境が充実していることでしょうか。同じ費用であれば、都内よりも広い家に住むことができますし、たまに都内に出勤することになっても、列車の始発駅や座席指定列車が多いので、快適に通勤できる環境にあります。

通勤時間帯の始発駅の情報なども提供している(提供:埼玉県)

自然が豊かで晴れの日が多いのも魅力です。国の資料を基にした統計では、2009年から2018年までの10年間の快晴日数は567日で日本一で、土砂災害発生件数も全国で2番目の少なさです。

10秒動画で「移住」のイメージを発信

ーー移住促進に向けた取り組みを教えて。

移住のイメージの発信
に力を入れています。市町村などに移住相談窓口を開設したり、移住生活を体験できる「移住お試し住宅」(現在は感染予防のため一時中止)の整備も支援しています。

2020年度は「#埼玉物語」と称したPR動画を作成し、県のウェブサイトで公開もしています。この動画は1話10秒、全12話(1月15日現在、8話まで公開)で、東京都内に暮らしていた家族がテレワークをきっかけに埼玉県に移住するという設定で、魅力を伝えています。

「#埼玉物語」のウェブページより

ーー移住するとしたら、お勧めの地域は?

埼玉県は大きく分類すると、(1)浦和・大宮などの人気の都市部、(2)北本・飯能・宮代などの便利な田園地区、(3)比企地域、秩父地域などの山と川に恵まれた地域があるので、ニーズに合わせてご紹介できると思います。

それぞれの魅力を説明すると、(1)の浦和・大宮は人口も多く、お店も集まっています。(2)の北本・飯能・宮代などは、人口が適度で自然もありますので、新規就農もできます。(3)の比企地域、秩父地域は、秩父や長瀞などの恵まれた自然があり、その割に交通の便もよいです。


ーー移住を検討している人に伝えたい魅力は?

埼玉県では移住者の受入れに熱心な市町村が増え、サポート体制が充実してきました。仕事を続けたままでの移住から夢を叶える起業まで、さまざまな選択肢があります。埼玉の特徴は都心に通え、始発駅なら座れ、自然が豊かなところです。たまに出社が必要なテレワーカーに最適なので「テレワークするなら埼玉」とお伝えしたいですね。

神奈川県では新幹線通勤を選ぶ移住者も

続いて、神奈川県の担当者に聞いてみた。

ーー転入超過の理由を教えて。コロナ禍は関係している?

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う、働き方の変化などが背景になっていると考えています。テレワークなどの普及により、都心に住む利便性より3密回避などを優先して居住地を選択する人々が増えるなど、意識や行動の変化に影響を及ぼしていると考えています。


ーー実際にはどんな人が移住している?

神奈川県が実施している移住相談だと、2020年夏からコロナをきっかけとした相談もあり、「在宅勤務となったので家を購入して海の近くに住みたい」といった相談があります。小田原市には「テレワークが増えたが週に何度か出勤する必要がある中で、都内へのアクセスがよく、新幹線通勤もできる小田原市に魅力を感じた」という理由での転入事例もあります。

移住して新幹線通勤を選ぶ人もいるという(画像はイメージ)

ーー生活環境の面で神奈川県にはどんな魅力がある?

都心へのアクセスの良さ・利便性の高い交通網があるほか、丹沢・大山のやまなみや湘南の海などの豊かな自然環境、比較的温暖な気候などが挙げられます。

魅力は「ちょこっと田舎でオシャレ」

ーー移住促進に向けた取り組みを教えて。

まずは地域に足を運んでもらおうという視点で、「ちょこっと田舎でオシャレな神奈川で暮らそう」という移住・定住PR動画を作成・配信しています。この動画では、地域ごとのライフスタイルなどを紹介し、東京都内在住の子育て世代をターゲットに魅力をアピールしています。

移住・定住PR動画では地域ごとのライフスタイルなどを紹介(提供:神奈川県)

また、東京・有楽町にある移住相談センター「ふるさと回帰支援センター」に、県の移住相談窓口を設置して移住相談員を配置し、暮らしと仕事に関する情報提供や移住に関する総合相談をワンストップで実施しています。

地域の魅力や移住促進策などのアピールするとともに、移住希望者の疑問や悩みについて相談を受ける場として、移住セミナーも開催しています。


ーー移住するとしたら、お勧めの地域は?

神奈川県では、人口減少が進む三浦半島地域や県西地域を中心に人を呼び込むプロジェクトを推進しています。

三浦半島地域は都心にも行き来できる通勤圏ですし、「三浦だいこん」や「三崎のまぐろ」などの豊かな農畜水産業もあります。マリンスポーツ・マリンレジャーも盛んで、古都・鎌倉や、横須賀の軍港などの近代化遺産をはじめとした歴史と文化も魅力です。

三浦半島地域には古都・鎌倉がある(画像はイメージ)

県西地域とは箱根、小田原、湯河原などのことで、豊かな自然を背景に、歴史や文化などの地域資源に恵まれ、一体的な生活圏を形成してきた地域です。温泉地もありますし歴史的な建築物もあります。東海道新幹線や東海道線、東名高速道路など、都心へのアクセスもあります。


ーー移住を考えている人に伝えたい魅力はある?

神奈川の魅力は、都心へのアクセスの良さと豊かな自然を併せもっているところ
です。テレワークをしながら必要なときは都心に出て、オフタイムは海・山・川でアウトドアを楽しむというライフスタイルを楽しめます。ぜひ、移住や2地域での居住をご検討ください。


埼玉県や神奈川県への転入が増えているのは、働き方の多様化も影響しているようだ。コロナが終息しても、現在の働き方を続けていくとしている企業もある。東京都から近隣県に移住する流れは、今後も進んでいくのかもしれない。

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